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師走の明暗

  • 2003年12月15日(月) 15時43分
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 12月10日、船橋「京成盃グランドマイラーズ」。エスプリシーズが豪快な差し切りで重賞3勝目をあげた。好枠から予想通りナイキアディライトの逃げ。しかしこれをトーシンブリザード、ノムラリューオーがつつく形になり、1000m通過60秒3、意外なほど流れが厳しい。エスプリシーズは、3頭をおよそ2馬身前にみて絶好のポジション。4コーナー、森下騎手は一瞬のためらいもなく外に出した。「前がやり合っていたし、とにかく手応えが抜群。先頭に立つのが早かったね。最後は馬が遊んだくらい」。エスプリは東京湾C、船橋記念、重賞をすべてこのコースで勝っている。どこかスムーズさを欠く大井などの走りとは別馬のような鋭い反応。競走馬ははやはり血の通う生き物ということだろう。能力、距離適性、そのこと以上に、自身が安心して走れる、メンタルとフィーリングが優先する。いずれにせよ今日の勝ちっぷり、最後の余裕からは、マイラーというより中距離型としてもいい。異世代のビッグネーム2頭を圧倒し、今後にさまざま可能性が広がった。

 京成盃グランドマイラーズ(サラ3歳上 別定 南関東G3 1600m良)

 ◎(1)エスプリシーズ   56森下  1分39秒6
 △(2)ジーナフォンテン  55張田     4
 ▲(3)トーシンブリザード 57内田博    3
 △(4)ノムラリューオー  56的場文    2
  (5)ナイキアフリート  54鈴木啓   3/4
…………………………
 △(6)バンケーティング  56石井
 ○(7)ナイキアディライト 57石崎隆

  単350円  馬複1490円  馬単2420円  3連複1690円  3連単7930円

 「かなりハードな稽古を消化してプラス9キロ。本物になったということでしょう。ゲートも今日はすんなり出た」と、先週ビービーバーニングに続き重賞連覇の武井栄一調教師。エスプリは期待馬ながら、気性面の危うさでここまで少なからず回り道した。プリンシパルリバー、キングセイバーに完敗したクラシック。その2頭が以後パッとせず、世代レベル自体にも正直疑問が生じていた。ひとまずここで一挙に逆転。馬の成長力とは難しい。血統だけではとうてい語れず、どこでどう変わるか、逆にどこでどう萎んでしまうかも五里霧中だ。暮れの東京大賞典は使わず、1月2日川崎「報知オールスターカップ」から「川崎記念=統一G1」が暫定のローテーション。JRA「フェブラリーS」もむろん視界に入りそうで、何より今回、馬と人、同時に得た自信そのものが大きいだろう。

 トーシンブリザード。結果3着にせよ7馬身差では手放しで喜べないが、14キロ増、ひと回り逞しさを加えた馬体、気迫の感じられるレースぶりなど、全体の感触は悪くなかった。未踏の4冠制覇、フェブラリーS2着、とにかく並みの馬ではない。脚部不安解消、私的にはここから「ブリザード物語・第2章」が始まると考えたい。2着ジーナフォンテンの根性には惚れ惚れする。道中中団で折り合い、直線あと1F、馬群を割って鋭く伸びた。今回半年休ませてリフレッシュ。タフなイメージはあるもののそこは牝馬、息を入れながら使ってぺターだろう。来季ネームヴァリュー引退なら改めて牝馬頂点も望めそうだ。ナイキアディライトの敗因は判然としないが、道中予想外に競られたこと、馬体が気持ち立派にみえたこと。ユートピア、ビッグウルフに接戦したJDダートダービーからは力不足とも思えない。「2走ボケかもしれない。また次に頑張ってもらいます」。出川龍一調教師の表情は、ことのほか穏やかだった。

       ☆       ☆       ☆

 翌11日「東京湾カップ」。予想も馬券も外れ、少々八つ当たりの回想になってしまうが、どうもレース自体、不完全燃焼に感じられた。3~4コーナーで落馬4頭。記者◎サンデーバニヤンもその渦中にあった。サンデーだけをうんぬんすれば、大井から遠征するケースによくある、人馬とも経験不足というやつだろう。絶好の1番枠を得たもののスタートでひと呼吸遅れ、終始思い切りの悪いレースぶり。仕掛けるタイミングを逸したまま、結局モエギノマズル落馬のアオリを受けた。まあしかし、競馬だから仕方ない。パドックなど少しイレ込んでいたが、10キロ増で全体の気配は良好。さまざま若い馬ということか。来季に楽しみを残したと納得する。

 東京湾C(サラ3歳 別定 南関東G3 1800m良)

 △(1)イシノファミリー  56山田信 1分53秒8
 △(2)ティーケーツヨシ  56石崎隆 1.1/2
 ▲(3)シャコーオープン  56早田  3
 ○(4)チョウサンタイガー 55酒井  2
  (5)スギノワンダー   53今野  8 
……………………………………………
 △(9)マルダイメグ    55的場文
 ◎落サンデーバニヤン   55鷹見

  単880円  馬複1660円  馬単4480円  3連複1790円  3連単13360円

 とはいえ、イシノファミリーはけっしてケチのつかない強さだった。道中中団で我慢がき、3~4コーナー外から絶妙のタイミングで一気のまくり。おそらく今日の場合、少し早くても遅くても不発だったと推測する。馬の持つ瞬発力はもちろん、山田信騎手の判断、勝負勘が素晴らしかった。「折り合いだけがテーマ。このくらいは走れる馬です」。若潮盃に続き船橋で重賞2勝目。エスプリシーズ同様、馬自身がこの馬場にいい感触を持っているということだろう。1分53秒8の時計も悪くない。父イシノサンデー、当日プラス4キロ。来季は統一Gに胸を張って臨めるレベルだ。

 ティーケーツヨシは1コーナー13番手、それでいて3~4コーナーいつの間にかイシノファミリーを視界に捕える位置まで上がっている。リーディングJの魔術とはそういうことか。馬自身は渾身のステッキで競り負け、現状少し力不足にもみえないではない。シャコーオープンは向正面から早めに仕掛け、結果先着2頭の目標になった。ただし早田Jはその思い切りが持ち味。馬自身は今後へ向けいい経験になっただろう。チョウサンタイガーは重賞となるとまだ少しインパクトが足りなかった。牝馬マルダイメグは、ひとまずハナを切ったものの展開がいかにも厳しい。的場文騎手が続けて乗るとすれば、また新たな戦略を考えてくるだろう。

       ☆       ☆       ☆

 全日本2歳優駿(12月17日 川崎 サラ2歳 別定 統一G1 1600m)

 ◎フィールドルーキー 54幸
 ○アドマイヤホープ  54武豊
 ▲トキノコジロー   54山田信
 △タイセイブレーヴ  54川島
 △ランノホシ     54斉藤正
 △ミーティアレイン  54今野
 △エーピーライデン  54石崎隆
  ケージーアジュデ  54熊沢

 人気のJRA勢にも、昨年ユートピアのような傑出馬不在。ごく私的なイメージの世界では、南関東馬も好勝負可能とみえる。ただしかし、ここで一つ厳しい事実。統一G門別「北海道2歳優駿」、アドマイヤホープの7着(1.4秒差)に敗れたランノホシが、前走船橋遠征、「平和賞」を豪快なひとまくりを決めてしまった。直接対決こそないものの、冷静にはやはり一枚レベルが違う。川崎生え抜きトキノコジローはデビュー3連勝、素晴らしい個性がのぞく切れ者だが、正直▲まで評価して精いっぱいか。

 JRA馬の比較。フィールドルーキーは前走園田「兵庫ジュニアGP」3着ながら、道中インで包み込まれ不完全燃焼にみえた。小倉のデビュー戦をダート1000mレコード勝ち。以後、芝でコスモサンビーム、メイショウボーラー相手に善戦している。前々走東京特別勝ちで左回も克服済み。父ロイヤルタッチは、どうやらパワー優先のダート向きか。馬体にもメンバー中No.1の凄みがある。アドマイヤホープはレース巧者で常に力通り走れるイメージ。現実にジュニアGPを勝ったタイセイブレーヴももちろん差がない。穴はミーティアレイン。道営2勝でトレードされ、以後川崎3戦2勝。軽い相手にせよ前走は後続を10馬身ちぎる圧勝だった。父ジェネラス。力の競馬になって一発。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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