いよいよ総決算の時季を迎えた。「有馬がダメなら大賞典で…」とは、古くから首都圏競馬ファンのお約束だが、今年はカレンダーがめまぐるしくなっている。28日=有馬記念、29日=東京大賞典。1年の夢、思い出、そして感傷を、わずか2日間で消化しなければならない。
東京大賞典(12月29日大井 サラ3歳以上 定量 統一G1 2000m)
◎スターキングマン 57武豊
○ネームヴァリュー 55佐藤隆
▲トーシンブリザード 57石崎隆
△デンゲキヒーロー 57佐々忍
△カネツフルーヴ 57松永幹
△サイレントディール 57ペリエ
△コアレスハンター 57内田博
ビッグウルフ 55蛯名
ビワシンセイキ 57横山典
今年は的中にこだわってみた(つもり)。ちなみに記者、前3年の◎は、イナリコンコルド、トーホウエンペラー、カネツフルーヴ。的中1、空振り2。結果はともかく予想の時点では迷いがなかった。が、今年はどうもしっくりこない。心が動く地方所属馬、あるいはゆかりの馬。例えばトーシンブリザード、例えばネームヴァリュー、デンゲキヒーロー…。どれもすっきり推せない頼りなさが先行する。
4歳スターキングマンは、今季素晴らしい充実をとげた。昨シーズン同世代ゴールドアリュールとは完全に水が開いたと思えたが、森秀行厩舎独特の貪欲なフロンティア精神に応え、厳しい経験、キャリアをすべて自身の血肉としている。とりわけ目を見張ったのは直線だけでアグネスデジタルを4馬身切って捨てた日本テレビ杯、アドマイヤドンに食い下がったJBCクラシック。いい脚が長続きする中距離型ということだろう。右左、回りはすでに関係ない。鞍上・武豊も、今季は“大井嫌い”を返上している。
ネームヴァリューは前走JCダート、結果10着ながらアドマイヤドンより一歩前を果敢に進みほぼ完全燃焼の競馬をした。確かに帝王賞含み7戦5勝の大井コースだが、対スターキングマン逆転となると勢い、決定打の点で難しい。トーシンブリザードも前走京成盃GMをどうみるか微妙な情勢。差して届かずならともかく、終いバテて3着は、正直この馬のフォームではない。コアレスハンターはやはりマイルがベストだろう。JBCクラシックと同じ待機策ではそれ以上の結果がイメージしづらい。むしろ地方勢で単の期待は岩手デンゲキヒーローか。父サクラローレル、25戦14勝、本格派の追い込み馬。地元の戦歴だけとれば一昨年トーホウエンペラーと互角に近い。ただそのエンペラーでさえ、全国区初戦の帝王賞は一瞬いい脚をみせて終了の5着だった。ダートグレードの水準が飛躍的に上がった昨今、シンデレラボーイが出にくくなったのは事実である。
サイレントディールは、姉トゥザヴィクトリーより薄手の馬体で、良くも悪くも垢抜けすぎた感じがある。O.ペリエ騎乗(NAR短期免許)が予定されるが、はたしてそれだけで飛びつけるかどうか。カネツフルーヴは叩き3戦目、昨年とまったく同じステップでここに臨む。3番手から差して勝った帝王賞はやはり出来すぎの面があった。母ロジータの域には、勝負への集中力など、正直とうてい届かない馬と思う。徹底先行に固めた近況からは再び目標にされる不利もある。昨年2着ビワシンセイキはどうやら短~マイル向きがはっきりしてきた。ビッグウルフは秋後半から古馬相手でトーンダウン。ナイキアディライト(回避)とともに、今年の3歳馬は今のところレベルが怪しい。
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全日本2歳優駿(12月17日 川崎サラ2歳 定量 統一G1 1600m梢重)
○(1)アドマイヤホープ 54武豊 1分42秒8
(2)オーゴンコウテイ 54五十嵐冬 2
(3)ヨシノイチバンボシ 54吉田稔 3/4
(4)トミケンウイナー 54桑島 首
(5)ケージーアジュデ 54熊沢 3/4
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△(7)エーピーライデン 54石崎隆
◎(9)フィールドルーキー54幸
▲(10)トキノコジロー 54山田信
△(11)タイセイブレーヴ 54川島
単180円 馬複5340円 馬単6920円 3連複133310円 3連単388320円
アドマイヤホープが断然の瞬発力で1番人気に応えてみせた。道中4番手をスムーズに進み、直線あと1ハロン、GOサインとともに一気の伸び。着差2馬身という以上の圧勝で、何より折り合いのよさ、反応の鋭さが高い完成度を示している。父フォーティナイナーながら母が中~長距離の活躍馬で、昨年ユートピアとは少しムードが違う実戦タイプ。必ずしもマイラーではないだろう。来春ドバイも含めステップは未定だが、距離が保つ以上選択肢は大きく広がる。ただ1600m1分42秒8、同日古馬B1が42秒7(ビッグビクトリー)の比較からは、けっして手放しでほめられない。今後の成長力が問題。マイナス7キロで444キロ。はたしてアグネスデジタルのような道が歩めるかどうか。
2着は大接戦の中、五十嵐・オーゴンコウテイが馬群を割った。いわゆる人気の盲点で、2走前「北海道2歳優駿」と同じワンツー。もまれてきた強みと、追える鞍上が結果中波乱を演出している。驚いたのはむしろヨシノイチバンボシ。逃げるフィールドルーキーを4コーナー馬なりで捕え、一瞬あわやの場面があった。東海ダート3勝、しかし全国レベルは初挑戦のトーヨーリファール産駒。見た目以上に芯が強い。対してフィールドルーキーは注文通りハナを切りながらあっけなく失速。初距離、ハイペースを考慮しても、これは記者の買いかぶりだったと反省する。ケージーアジュデは好馬体ながらまだ馬が若く、コーナーごとに置かれてしまった。タイセイブレーヴはスタート不利でまったくの無抵抗。結果論ながら本質的に逃げ馬ということか。鞍上の経験不足も今日は出た。
南関東馬。エーピーライデン7着、トキノコジロー10着。ひとまずスピードの限界をみせた格好だが、今日のレベルを考えるともう少し走っていい。とりわけトキノコジローはデビュー以来最高の474キロでかなり馬体に余裕があった。「ローテーションがズレた(当初大井・ハイセイコー記念を予定)せいか、追って反応が鈍かった」(山田信騎手)。すべては年明けからと思いたい。今後オープンに乗ってくる上昇馬も含め、2歳ダートの勢力図はまだまだ混沌としている。