ヨーロッパ・パターン・コミッティーが欧州スプリンター路線のテコ入れに着手
今後はジュライC、サセックスS、キングジョージが「真夏の3大決戦」的な色彩になることも
2015年のヨーロッパにおける短距離路線の体系が変わることになった。ヨーロッパ・パターン・コミッティー(EPC)から13日に発表になったものだ。
EPCは、近年の傾向として、ヨーロッパにおける短距離路線の水準が低下していると分析。スプリンター路線を如何にして盛り上げていくかを念頭に関係各所と連携し、新たなプログラム作りに取り組んで来た結果、構想を現実化する時が来たとのことだ。
EPCは、2004年に「牝馬路線の充実」を目的に、牝馬限定重賞の整備を実施。その後ヨーロッパには、牝馬のスターホースが複数出現し「牝馬の時代」と言われるほどの成果を導くことに成功している。あれから10年と少しが経過し、今度はスプリンター路線のテコ入れに着手したというわけだ。
改革の目玉の1つは、ロイヤルアスコットを舞台とする3歳馬限定短距離G1の創設だ。具体的には、ロイヤル開催4日目の金曜日に、レース名は現段階で未定ながら、3歳馬に限定した距離6FのG1を施行することが決まったのである。
これにともない、ロイヤル開催最終日に行なわれているG1ダイヤモンドジュビリーS(芝6F)の出走条件が、現行の「3歳以上」から「4歳以上」に変更されることになった。
新G1は、ロイヤルアスコットにおける8つ目のG1重賞となる。2001年までロイヤル開催を舞台としたG1は4競走のみだったことを考えると、王室主催の名物開催が、今世紀に入って存在感を益々高めていることがよくわかる。
そして、ロイヤル開催に3歳限定短距離G1が創設されることで、位置付けがこれまで以上に重要になってくるのが、7月半ばにニューマーケットで行われるG1ジュライC(芝6F)であろう。すなわち、ロイヤルアスコットの新設G1で、3歳世代の最強スプリンターを決定。翌日のG1ダイヤモンドジュビリーSで古馬の最強スプリンターを決め、3歳と古馬の最強スプリンターが雌雄を決する機会となるのが、ニューマーケットのジュライCとなるのである。
すなわち、8F路線におけるG1サセックスS、12F路線におけるG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSと同じような性格をジュライCが帯びるわけで、今後はジュライC、サセックスS、キングジョージが「真夏の3大決戦」、あるいは「世代間対決3番勝負」的な色彩で括られる可能性がおおいにありそうだ。
そしてEPCは、10月のブリティッシュチャンピオンデイにおける短距離戦ブリティッシュチャンピオンズ・スプリント(芝6F)の、2015年からのG1昇格もあわせて発表した。
もともとは、1946年にダイアデムSとして創設された競走を前身とするのがブリティッシュチャンピオンズ・スプリントである。パターン競走のシステムが導入された当時はG3の格付けだったダイアデムSは、1996年にG2に昇格。2011年、英国におけるシーズン末の新たな集中開催として「ブリティッシュチャンピオンズデイ」が創設された際に、ダイアデムSはそこに組みこまれて「ブリティッシュチャンピオンズ・スプリント」と改称。2015年からG1のステータスを得ることで同競走は、G1チャンピオンS(芝10F)、G1クイーンエリザベス2世S(芝8F)、G1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ(芝12F)に次ぐ、ブリティッシュチャンピオンズデイにおける4つ目のG1競走となる。
これにより、ブリティッシュチャンピオンズデイは、2週間前にフランスで行われる「アークウィークエンド」、2週間後にアメリカで行われる「ブリーダーズC」と肩を並べるビッグイベントに成長。トップホースの奪い合いが、益々激化することが予想される。
EPCはまた、9月のアイリッシュチャンピンズ・ウィークエンドを舞台としたフライングファイヴS(芝5F)の、G3からG2への昇格をはじめ、年間を通じて欧州各国の複数の短距離戦の格上げも決めている。
90年代前半に出現したデイジュールやロックソング以来となる、短距離路線を拠点とするスターがヨーロッパに現れ、スプリント戦線が盛り上がりを見せるかどうか、改革の行方を見守りたいと思う。