素質の片鱗見せた!レトロロック/吉田竜作マル秘週報
◆順調なら日曜(31日)の小倉芝1800メートルでデビューを迎えるレトロロック
昨年6月、角居調教師が「現2歳世代の預託を見送る」とキュウ舎のオフィシャルブログで表明した時には、オーナーサイドはもちろん、POGを楽しむ読者にも衝撃が走ったことだろう。JRAの預託頭数制限強化への“抗議”とも言われたが、真意はそれだけではない。
現実問題として、当時の角居キュウ舎が抱える預託馬があり、そこに例年通りに新たな2歳馬が加わる。ここで預託頭数の上限がさらに下げられてしまうと、どうしても“何かを削って減らす”しか手がなくなってしまう。POGの取材にも「どれか特定の馬を取り上げられると“他の馬はどうでもいいのか?”となってしまうので、個別の馬についてのコメントは差し控えたい」というスタンスを貫く角居調教師。管理馬に対して等しく愛情を注いできたトレーナーにとって、人間の都合で愛すべき管理馬をどうかしなくてはならない、というのが我慢ならなかったのではないだろうか?
稼働している現役馬を最後まで預かるとなれば、新たに加わる2歳馬で調整するしかなくなる。しかし、オーナーは角居調教師の手腕を評価して預託契約を結ぶのであり、その気持ちに大小はないのだ。「どれかを選んで、どれかを選ばない」という選択は、角居調教師にはできなかったのだろう。そうなると、その世代ごと預からないという選択しか…。
我々は仕事柄、「ホースマン」という言葉を口にする。しかし、角居調教師の一連の行動を見るにつけ、軽々しく使う言葉ではないと感じた次第。キュウ舎の内外でも人柄が評価されるのも当然だ。
それだけに、昨年11月のブログで“前言撤回”の形で「現2歳世代を少数預かる」と表明したのは、角居師にとって苦渋の決断だったに違いない。やはりキュウ舎スタッフの生活のこともあるし、オーナーサイドが「どうしても」と頼み込んできた可能性もあるだろう。もっとも、仮にそうしたことがあっても角居師なら「お願いして預けていただいた」と口にするのだろうが…。とはいえ、前年の11月となれば、1歳馬の預託先はほとんど決まってしまっている。いわゆる良血馬だけでなく、キュウ舎ゆかりの馬たちまでも。そんな“苦境”でも良血馬を提供してもらえるというのが、角居キュウ舎の信用であり、角居師の人柄なのだろう。
名オーナー・金子真人氏が託したのが、レトロロック(牡=父ディープインパクト、母サムワントゥラブ)だ。先週のウッドでは古馬オープンのエックスマークと互角の動きを披露。素質の片鱗を見せつけた。
「母もウチのキュウ舎にいて気が悪いところがあったんですが、この馬は入キュウしたその日はうるさかったけど、2日目には順応してくれたんです。今は何ともない。センスがいいし、いかにも走りそうな感じ。大きな馬ではないけど、バネがある」と高田助手。このまま順調なら日曜(31日)の小倉芝1800メートルでデビューを迎える。
「2015年のクラシックに送り出す馬は一頭もいません」。昨年6月のブログで語っていた言葉だが、それではあまりに寂し過ぎる。やはりクラシックの舞台には角居キュウ舎の馬がいてほしいもの。このレトロロックがそうなってくれることを願っている。