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「馬に乗っているときが一番幸せです」中内田調教師にインタビュー

  • 2014年09月02日(火) 18時00分
競馬の職人

中内田調教師



中内田調教師「ロゴマークのように厩舎はいろんな方の支えで成り立っています。そんな思いが通じてもらえるように頑張ります」

 サマーシリーズも終盤になり、盛り上がってきました。各シリーズのチャンピオンもまだまだわかりませんね。期待が高まってきます。

 先週の某競馬週刊誌のトップページに、豊さんとペリエ騎手の特集が載っていました。療養中でも無駄にしないのが豊さん!

 世界選抜チームのキャプテンとして英国のシャーガーCに参戦の予定だったそうです。その後夏恒例のドーヴィル競馬場で騎乗予定だったが…騎手としての楽しみは無くなったが、予定どおりにフランスへ。出会ってからもう20年だそうです。

 ペリエ騎手は日本語が上手ですよね。僕が取材を始めたころ

常石 グッドモーニング

と声をかけると

ペリエ おはようございます

と返答されびっくりしました。

常石 日本語上手ですね

ペリエ 日本のこと大好きだから

との答え。さすがです…!

 日本に来られたのは1994年3月というからちょうど20年前。僕がデビューする前だからやっぱりすごい人です。豊さんとペリエ騎手との出会いは、アメリカ製の鞭を持っていた豊さんがフランスでは長過ぎたのでロッカーが隣りだったペリエ騎手が貸してくれたのがきっかけ。それ以来の交友関係だそうです。競馬の深さを感じる特集でしたよ。

 さて今週は、新人調教師の続きです。外国で乗馬や馬のノウハウを学んでこられた中内田充正調教師です。
※取材は1か月くらい前に行いましたが、先週は小倉競馬場にて8月30日4Rカオールで、翌31日4Rスリーマーゴーンで2勝を挙げました。おめでとうございます。

常石 今日は、よろしくお願いします。先生とお話しするのは初めてかなと思います。ちょっと緊張していますがよろしくおねがいします。

中内田 そうですね。こうしてゆっくり話すのは初めてだけど、つねちゃんの活躍は知っていましたよ。

常石 わぁー、そう言われると照れますね(笑)。先生はヨーロッパやアメリカで馬の生育や乗馬の勉強されたんですよね。開業され、ヨーロッパとの違いはどんなところに感じますか?

中内田 生活環境が違うね。日本では、犬が人と共に暮らし毎朝犬を散歩に連れて行きますよね。ヨーロッパでは馬が人とともに暮らし、いつもそばにいて馬と散歩に行きます。犬と馬の違いかな(爆笑)。極端だけどそれぐらいそばにいるイメージですね。小さいころから馬に乗って遊んでいるから生活の一部になっています。

 僕の実家が牧場をしている(信楽牧場)ので気が付けば馬と一緒に遊び、馬と一緒に寝たり、といつもそばにいましたが、またちょっと違うんですよ。

 英国のウエストオックスフォード大学に行かせてもらい、日本にはない馬学を学びたいと思っていました。この大学には、生産から馴到、調教など、馬のすべてを学ぶことができました。学校へ行く前に、厩舎の仕事を手伝わせてもらったり、英国の友達の家でもいろいろ経験させてもらいました。まずは英語が話せないと何もできないから現地の高校に転入しました。

 大学卒業と同時に、アメリカにわたりロバート・フランケル厩舎で働きました。厩舎が一番活躍しているときで、1年間でGIを25勝とすごい厩舎でした。エンパイアメーカーをはじめ厩舎にはすごい馬がたくさんいました。おかげでそんな馬の背中に乗る機会もいただきました。世界の名馬の背中を知ることは僕の財産です。

常石 どうして英国からアメリカに行かれたんですか?

中内田 日本の競馬は、英国に見習うこともありますが、アメリカの競馬の仕組みを多く取り入れているからどっちも勉強をしたかったんです。

常石 具体的にどんなところが違いますか?

中内田 調教はヨーロッパスタイルですが、競馬はアメリカスタイルなんですね。外国に比べ日本の競馬の歴史はまだ浅いから外国のいいところをどんどん取り入れているんですよね。それはとってもいいことだと思います。だからその国に行き学びたいと思いました。日本は、真似をするのではなくヨーロッパの競馬と日本の競馬をうまくかみ合わせて日本独自の競馬スタイルを確立させてきています。そこが日本のいいところで、世界レベルになってきていますよね。

常石 すごいスピードで調教師になられ、尊敬します。

中内田 いやいやいろんな先生のおかげです。競馬学校卒業後、橋田厩舎で働かせてもらいましたが、日本の競馬を知らなかったので皆さんにいろいろ教えてもらいながらも戸惑うことばかりでしたが、橋田先生は、1から10まできちんと教えてくれました。僕の意見も聞いてくれましたし、いい指導者に巡り会うことができました。11年に調教師試験を合格した後は技術調教師として藤原英昭先生にお世話になりました。

常石 藤原先生は、乗馬はすごいうまいでしょう。国際ライセンスを持っているんですよね。。スタッフも乗馬のできる方が多いですよね。僕もいつも乗馬のことを教えていただきます。厩舎へお邪魔すると競馬の取材と違うんか?乗馬の取材か?とひやかされています(苦笑)。でも丁寧に教えていただきうれしいです。

中内田 僕も藤原先生には「調教師として大切なことは、馬に基本を教えること。それには、馬術を取り入れた調教をする。競走馬として育てるには、基本が大切」と教えられ、馬術の基礎もみっちり教えてもらいました。

 基本ができれば応用も聞く。基本ができなければ何もできないということでしょう。藤原先生に学んだことは、自分の中で噛み砕いて外国で学んだことと合わせて中内田流を作っていきたいと思います。

常石 すごい馬主さんの馬が入厩してくるんですね

中内田 カタールのファハド殿下の預託を任せていただきました。ですがファハド殿下だけでなく、うちに預けてくださる馬主はみなさん大切な方ばかりです。

競馬の職人

中内田厩舎で管理しているカナロアのゼッケン



常石 いつも馬に乗って調教をしていますよね。

中内田 馬には乗りたいですね。乗っているときが一番幸せです。そして全馬にまたがり癖や特徴を知り少しずついい馬を作っていきたいと思います。そして、いつかは海外でも活躍できる馬を作っていきたいです。その時僕の語学も発揮できたらいいですね(爆笑)。

常石 豊かな経験が役に立つんですね。楽しみにしています。最後にファンの方へのメッセージお願いします。

中内田 厩舎のロゴマークはエンジに中内田の「N」を鬣にみたてその周りに8頭の馬がいます。このマークのように厩舎はいろんな方の支えで成り立っています。まずは、厩舎スタッフが不安や疑問などないかミーティングをして意見交流をし、「あっやっぱりそうなのか」と納得して馬づくりをしていきたい。ファンの方には、そんな思いが通じてもらえるように頑張ります。是非競馬場に来ていただきレースに出られるようになった立派な馬たちをみてほしいですね。生き物に触れ合うことは、心和みます。これからも応援、よろしくお願いします。

競馬の職人

「N」を鬣にみたてその周りに8頭の馬が描かれている中内田厩舎のロゴマーク



常石 ホンマ和みますよね。僕が落馬してから意識がなかった時でも無意識に馬にふれていたそうです。お箸が持てないのに鞭をもって回していたそうです。おかげでちょっと元気になりました。長い時間貴重なお話ありがとうございました。

***

 中内田先生は、穏やかに目を細めて馬の話をしているときがとても楽しそうでした。豊かな経験をどんどん発揮してください。楽しみにしています。ずっと追っかけていたい厩舎ですね。

 つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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