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03フィナーレの顛末

  • 2004年01月04日(日) 14時03分
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 12月29日「東京大賞典」。スターキングマンが予測をはるかに超える強さで勝った。好枠からダッシュをきかせてカネツフルーヴ。しかし玉砕覚悟というカイジンクンがまず競りかけ、向正面からカカリ気味にサイレントディール。1000m通過59秒6、大賞典史上最も厳しいペースになった。スターキングマンは3コーナー手前から外めをスパート。「少し早いと思いましたが、馬の気分にまかせて…」(武豊騎手)。強烈な行き脚としかいいようがない。バテたカネツフルーヴはもちろん、サイレントディール、ビワシンセイキまでも一瞬のうちに呑みこんでしまう。直線中ほどからは独走。武豊Jの右ステッキは、馬にではなく、空中でしなった。余裕があるからこその完璧なガッツポーズ。2000m2分03秒7、過去6年にさかのぼって?1。タラレバは意味がないが、これだけ走れば仮にアドマイヤドン、ゴールドアリュールが相手でも、おそらく好勝負になっていた。

 東京大賞典(サラ3歳以上 定量 統一G1 2000m良)

◎(1)スターキングマン  (57・武豊)  2分03秒7
△(2)コアレスハンター  (57・内田博) 3
△(3)ビワシンセイキ   (57・横山典) 3/4
△(4)デンゲキヒーロー  (57・佐々忍) 4
 (5)アオバコリン    (55・左海)  1.1/2
……………………………………………………
 (6)ビッグウルフ    (55・蛯名)
 (7)サイレントディール (55・ペリエ)
○(9)ネームヴァリュー  (55・佐藤隆)
▲(12)トーシンブリザード (57・石崎隆)
 (16)カネツフルーヴ   (57・松永幹)

単380円 馬複1620円 馬単2650円
3連複1990円 3連単7140円

 スターキングマンの特長。ひとことでいうならそれは“基礎体力”になるだろう。デビューからの天才、怪物ではけっしてなかった。例えば3歳秋の時点、盛岡「ダービーGP」は2着ながらGアリュールに大差をつけられている。しかし以後、森秀行厩舎独特のハードなチャレンジに耐え、黙々と走り込んだ。03年、結局14戦を消化。1200mを使い、2000mを使い、7競馬場を踏破。一種強引、無定見なローテーションながら、結果それで地力を蓄えた。どの馬にもできることではない。並みの馬ならつぶれている。心身両面で恐ろしく芯が強い。

 今秋、日本テレビ盃、JBCクラシック、JCダート、さらにこの日大賞典の結果からは、息の長い末脚が身上。1800m~2000m、いわゆる選手権距離ベストとしていいだろう。はたして今後アドマイヤドンに追いつき追い越せるかどうか。選択肢は川崎記念、フェブラリーS、そしてドバイまで視界が広がる。最近多い天才型名馬とはひと味違う、何とも頼もしいタフガイが現われた。

 コアレスハンターはJBCクラシック同様、末脚勝負に賭けて思惑通りの結果を出した。自身2分04秒3だから例年の勝ち馬レベル。こちらもキャリアを積み、着々と力をつけた晩成型ということだろう。「相手(スターキングマン)より一歩早めに動きたかったが、瞬発力の差でしょう」と内田博騎手。それでも南関東馬としては5年ぶりの連対確保。大きく胸が張れる内容だった。ビワシンセイキは、これで大井3戦すべて2着。気ムラな面はあるものの、超ハイペースを積極策だから十分に中身が濃い。デンゲキヒーローは直線パワフルに伸びて4着。かつて全国区に初めて臨んだトーホウエンペラー(平成13年・帝王賞5着)とイメージがダブる。幅のある好馬体、今後の期待はきわめて大きい。サイレントディールはカカって失速。いずれにせよJRAの高速馬場に向いたタイプか。ネームヴァリューは結果論ながらラストランで勤続疲労が出てしまった。順調なら来春は母となる。お疲れさまというべきだろう。トーシンブリザードはスタートで大きくつまずき万事休す。休養前より馬体に凄みは出てきたが、反面レースでの集中力が物足りない。しばらく手探りとなりそうだ。

       ☆       ☆       ☆

 東京2歳優駿牝馬(12月30日大井 サラ2歳牝馬 定量 南関東G1 1600m良)

◎(1)ビービーバーニング (53・甲斐)  1分41秒7
▲(2)ブルーロバリー   (53・今野)  6
△(3)テラノパスポート  (53・酒井)  1/2
△(4)コンサートスター  (53・山田信) 首
 (5)キャニオンドリーム (53・川本)  2
……………………………………………………
○(9)アイチャンルック  (53・内田博)

単120円 馬複930円 馬単980円
3連複2920円 3連単6800円

 ビービーバーニングがケタ違いのスピードで断然の1番人気に応えてみせた。好枠から抜群のダッシュ力。一瞬のうちにトップギアに入り、向正面では後続を10馬身ほども離して一人旅。「スタートだけ気をつけて、あとは馬の行く気にまかせた。本当に強い馬。直線も後ろの足音が聞こえなかった」(甲斐騎手)。デビューから4戦4勝、鎌倉記念に次ぎ重賞2勝目。1600m1分41秒7も水準以上で、今日の内容からはすでに昨年パレガルニエを追い越している。スピード型ながら、パドックでのゆったり落ち着いた気配など、かなり大人びたムードを持つ。04年、現時点の南関東ではただ一頭、無条件で胸が張れるスター候補。出張戦、右回り、ひとまず課題をクリアし、今後もさまざまステップが選択できる。手堅くいけば浦和桜花賞→関東オークス。思い切った狙いなら羽田盃→東京ダービーの牡馬路線。父バブルガムフェロー。折り合いしだいで距離は保つ。

 ブルーロバリーが前々をしぶとく粘り、結局川崎生え抜きのワンツーだった。カコイーシーズ×ジェイドロバリー、良質のダート血統で、こちらもかなりの素質がある。テラノパスポート3着、クラメガミ10着。デビューが早く使い込まれているホッカイドウ組は、このあたりから成長力が問われてくるか。2連勝の勝ちっぷりで注目されたアイチャンルックは中団のまま伸びを欠いた。善戦したコンサートスター、キャニオンドリームも含め、このあたりはまだまだ評価が定まらない。

       ☆       ☆       ☆

 報知オールスターC(1月2日川崎 サラ4歳上 別定 南関東G3 2000m良)

◎(1)エスプリシーズ  (57・森下)  2分08秒6
△(2)シュイベモア   (55・金子)  7
 (3)オーバルオフィス (56・的場文) 1/2
△(4)ジェネスアリダー (56・桑島)  1
▲(5)ナイキアディライト(56・石崎隆) 1
…………………………………………………
△(9)キングセイバー  (56・酒井)
○(10)パレガルニエ   (52・今野)

単160円 馬複3540円 馬単3810円
3連複7740円 3連単27890円

 明けて04年、エスプリシーズはかなり鮮烈な勝ちっぷりだった。道中4番手で前を見据え、直線鞍上のGOサインとともに弾けるように伸びている。あまりに楽に先頭に立ったせいか最後遊ぶように外に切れたが、それで2000m2分08秒6。後続に7馬身差は決定的というしかない。同世代の順位をつければ、プリンシパルリバー、キングセイバー、ノムラリュウオー、すでに別格の位置まで成長した。当日543キロ、パドック、返し馬の気配も、まさに威風堂々という言葉が似合う。2月4日、統一G1「川崎記念」。ホームの利を生かせば、スターキングマン以下JRA強豪にも、互角の競馬ができるだろう。

 シュイベモアは、デビュー時川崎2連勝、クラシック候補の評価があり、それが脚部不安で長期休養、ホッカイドウ競馬を経由し、今回試金石の挑戦だった。別定55キロ、直線だけで連対は立派のひとこと。今後順調なら、大井「金盃」など、絶好のターゲットになる。オーバルオフィスの健闘も認めたいが、時計も含めやはり4着以下が走っていない。ナイキアディライトはスタートで一完歩出遅れ、以後折り合いに専念した。直線伸びかかって5着は評価微妙。ただしこういう競馬を経験させるあたりが石崎隆Jの真骨頂で、今後モデルチェンジの可能性も出てきた。ジェネスアリダーはレース巧者ながら決め手不足。キングセイバーも道中2番手をすんなり進んでこの失速では正直展望が暗いだろう。むしろひいき目を承知で書けばパレガルニエ。好スタートもあるだろうが、ハナを切って牡馬にマークされたレースは、結果的に今野Jの思惑違いだった気がする。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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