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とりとめもない話

  • 2004年01月14日(水) 11時32分
 暮れから年明け、東京大賞典を頂点に重賞ラッシュだった南関東も、松の内がすぎてほんのひとときながら一段落した。で、今週は雑感めいたものを書かせていただく。それにしても競馬とは、つくづく終わりのない、間断のないエンドレスゲームだと痛感する。デビューした2歳馬が、またたく間に3歳、4歳と成長してスターに昇り、代わりに今日の主役が、短ければ1年、長くとも2〜3年のうちには、大した前ぶれもなく競馬場を去っていく。諸行無常とはそういうことか。毎日めまぐるしく繰り返されるさまざまな戦い。たとえそれがG1であろうと風化は早い。記者の予想などはもちろん、ファンの期待と夢、さらに感傷さえも、結果が猛スピードで追いつき、そしてこともなげに追い超していく。

 そのG1東京大賞典。ある意味、地方競馬が育てたともいえるスターキングマンの勝利は嬉しかったし、高齢にして本格化したコアレスハンターの健闘も誇らしかった。が、一つ解せないというか、喜べなかったこと。12月29日、大井競馬場は入場人員、売り上げともはかばかしくなかった。前年対比で、ともに70%がやっと。役者不足だったとは思えない。なるほどゴールドアリュール引退、アドマイヤドン欠場ではあったが、例えばビワシンセイキ(2着→3着)という結果から推してもレースのレベルは悪くない。良血サイレントディール、帝王賞馬カネツフルーヴも参戦した。何よりきわめて集客力の高い武豊J、さらにO.ペリエまでも暮れの大井に現われたのである。それで前年対比70%。正直記者サイドからは納得がいかない。

 12月28日「有馬記念」、翌29日「東京大賞典」。いかにも矢継ぎ早で、ファンがひと呼吸置けなかった、盛り上がる時間がなかった、あるいはそんな理由があるかもしれない。が、記者は当初このカレンダーはむしろ絶好と思っていた。生来気の短い(早い)競馬ファンには、これが大きくウケるはず…と。異例の3日前(26日)枠順確定、JRAウィンズを含む場外発売も抜かりはなかった。しかし現実はアテが外れた。思いたくない、考えたくないことをあえて書く。ダート競馬とは、その本質とは別に、日本人(現競馬ファン)の心情に合わないのではないか、そういう懸念。ふり返ってアドマイヤドン快勝の「JBCクラシック」も、入場、売り上げはけっして満足なものではなかった。不景気の影響?なら、シンボリクリスエス・有馬記念が前年対比100%を超えたのは腑に落ちない。個人的には、それは絵画的なもの、日本人の“色彩感覚”とも思い浮かぶ。ダークブラウンのダートは、エバーグリーンの芝に、どうあっても印象点でかなわない。ではどうするか。ごく直接的にいえば、スターキングマンが、コアレスハンターが、芝の天皇賞、ジャパンカップで勝つこと。それなら本当の意味で誰もが地方競馬(ダート)を認める他なくなってくる。

 ただし明けて15年、1月1〜4日と開催された川崎競馬は意外なほど好調だった。4日間の総売上げ48億円強。主催者の目標50億円には届かなかったが、ごく単純に数字を追えば、これは3年前の01年川崎正月開催を3億円あまり上回る。当時以上に冷え切った経済状況を考えると、まさしく大健闘。その理由、因果関係はわからない。単なる偶然、人心の移ろい、巡りあわせという方が実情に近いだろう。ご存じの方には説明も要るまいが、川崎競馬場はJR川崎駅から京浜急行に乗り換え、「港町」が最寄り駅。その2つ先が「川崎大師」。新年の開運を思うとき、人はどこへ出掛けるのか。神頼みの「川崎大師」、自ら運を開こうという「川崎競馬」。両方やってみる手ももちろんある。ともあれ今回わかったのは、地方競馬が現在まるで見放されている状況でもないということ。暮れの28〜31日は、毎年大井開催がすでに約束ごとらしい。それなら川崎は正月開催にこだわって“地の利”を生かすべきだろう。これは場外発売など南関4場を通してのメリットでもある。

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 04年、記者の抱負。唐突で申し訳ない。「日刊競馬」紙上、◎○▲の予想歴は早や十数年になり、正直自分の非才、無力と限界も十分承知している。が、ここは気持ちを引き締める意味で書かせていただく。競馬の予想をする、馬券を買う、その真髄に迫る(近づく)には、いったい何がベストだろうか。難しい。こんなことを書こうとする自分の方が正直恥ずかしくなったりする。ただ、競馬場への無料バスなどでファンの方にばしば聞かれること。「ヨシカワは何を基準に予想をするのか…?」。そのあたり、本人流にはけっこう明解なつもりでいる。本物(の能力)を見抜くこと。それぞれの旬(好走時季)を捕えること。

 例えばエスプリシーズという馬がいる。記者はこの馬に02年クラシックでずっとイチ押しを貫き、しかし結果が出なかった。いま同馬がスターダムに昇ったからといって、それをプライドに思う気持ちは一切ない。なぜなら競馬の予想とはやはり、「瞬間を切り取る」ものだから。仮に素質と潜在能力は見抜けても、いざその馬がブレイクするときに◎がつけられなければ意味がない。エスプリシーズの場合、ゲート難、気性難、かなり深刻な弱点を抱えながら、一進一退を続けてきた。好走と凡走、波が大きい。当たり前の話だが、予想者としてはその波が捕えられないと、少なくとも読者のニーズには応えていない、そういうことになると思う。

 レースをよく見ること。つぶさに見ること。ありきたりの結論だが、04年は改めてそこに徹することとした。まあしかし、競馬を始めたころはたぶん誰もがそうなのである。自分が狙った馬、買った馬が謎の大敗を喫し、いったいこれはなぜなのか、そしてはたして次はどうか、そういうイメージの探索ーー。記者は南関東4場、あらかたのレースを肉眼で見ている。信頼とはいわないまでも、参考にしてください。本年もよろしく…。ひとまずそんなご挨拶で駄文を締める。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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