こういう経緯の馬は「走る」タイプのマラニーノ(吉田竜作)
◆短距離王国と言われる西園厩舎に、というのもあるだろうがやはり…
このコラムが公開されるころには、恐らく私は日本にはいません。島流しになるわけでも会社を首になるでもなく、凱旋門賞の取材に行ってきます。さすがにフランスの2歳馬については書きようもないので、今栗東にいるアメリカ産馬の話を少ししてみます。
西園厩舎にマラニーノというOBSスプリングセールで落札された外国産馬がついに入厩してきた。ついに、というのもこの馬の存在を西園調教師に教えてもらったのは6月のこと。栗東トレセンからの帰りに「マジェスティックパーフェクションっていう種馬について調べてくれない?」と連絡をうけたのが最初だった。そして、続けて言うには「吉田勝己さんから受けてくれという話があってね。引き受けることになったんだ」とのこと。価格も25万ドルのなかなかのもの。セールの映像を見てもスピード感たっぷり。こんなことがあって待ち遠しく思わないPOG記者はいないですよねえ。
そして、もう一つピンとくることがあった。この出来事のちょっと前にあったのが安田記念。ジャスタウェイに騎乗予定だった福永が騎乗停止となり、鞍上が空白になっていた。そこで須貝調教師が希望したのが「騎乗したことがある」騎手。そこで白羽の矢が立ったのがサダムパテックに騎乗予定だった柴田善。西園調教師は多くを語らなかったが、「向こうがどうしてもというので」、柴田善の要望を受け入れる形で決着を見た。結果はご存知のとおりだ。ジャスタもサダムも個人オーナーの馬とはいえ、ともに白老F出身。その裏側を想像すると…まあ、いろいろあったのだろうなあと思うのが当然だろう。吉田勝己氏は直接関係しない白老Fだが、まったく無関係というわけでもない。そして、そのタイミングでマラニーノの預託の話。短距離血統、セール出身だけに短距離王国と言われる西園厩舎に、というのもあるだろうが、やはり「ありがとう」の意味が込められていると考えるのが自然な流れだろう。そして、長年の勘だと、こういう経緯の馬は「走る」のである。
そこで西園調教師にマラニーノの話をきいてみた。「ゲート試験も楽勝。追い切りの動きを見ても軽いね。まだハミを受けないで走るようなところはあるけど、それだけよくなる余地があるということ。京都の2週目の岩田で使う予定」とのこと。田中助手も「口向きは不安だけどさすがにスピードがある。こういう馬をうまく育てて行きたい」とかなりの素質を感じ取っているようだ。短距離王国の層を更に厚くする馬となれるかどうか。次の京都開催を待っていてほしい。
安田厩舎には期待の良血馬レッドベルダが入厩してきた。「かなり小さいのでそこが心配」とPOG期間での取材で語っていた安田調教師だったが、その後に馬がすくすくと成長。だいたい1か月に1度はこの馬のことを確認していたが、「大きくなっているんですよ」とうれしそうに教えてくれていた。そして、注目の現在の馬体重は…「競馬で430キロくらいでいけそうです」。これなら何の不足もないだろう。安田翔助手も「まだ緩い面はあるのですが、全体的なバランスがいいのですごく乗り味がいい」と素質の高さを感じている。ハズレの少ない血統、「おとなしくて、カイバ食いもいい」(安田師)となれば走らない要素を見つけるのが難しい。サトノフラムらとクラシックを目指すことになるはずだ。