「自分には何かが足りない」
秋初戦のローズSは、1番人気こそレッドリヴェールに譲ったものの、完全なる2強の構図。3枠6番から好スタートを決めると、道中は手応え十分に好位の内を進む。直線に向き、逃げるリラヴァティを悠々ととらえると、徐々に差を詰めてくる追い込み勢を後目に余裕を持ってゴールに飛び込んだ。
「2400mから一気に1800mになってどうかなぁと思うところもあったんですが、次につながるレースができましたね。先行しても強い競馬ができるということを見せられたと思います。そうですねぇ、ジェンティルのときのような感じかな」
と、ジェンティルドンナで制した2012年のローズSを引き合いに出した岩田。道中2番手といういつにない積極策でヴィルシーナ以下を完封した一戦だったが、岩田はレース後、「本番に向けて、どんな競馬でもできるということを周りに見せつけるのがテーマだった」と語った。よほど馬の能力を信頼していなければ描けないテーマだ。
▲負けられなかったローズS、その勝利をジェンティルドンナの一戦に重ねた
その“ジェンティルのときのような感じ”とは、今年も相当な手応えをつかんだに違いない。なにしろ、強敵ハープスターは不在。ここは負けられない一戦だろう。
「いや、そんなに甘くはないと思ってますよ。紫苑S2着のショウナンパンドラとか、自分が乗っていただけに能力が高いのはわかっていますし、そのきに勝ったレーヴデトワールも、もちろんライバルだと思っています。とはいえ、ヌーヴォレコルトもローズSでああいう競馬ができたので…」
と、他陣営を警戒しつつ、ヌーヴォレコルトにはたくさんの強味があることも十分わかっている。
「イレ込まないし、左回りが得意とはいっても右回りもまったく問題ない。京都の2000mは確かに難しいコースですが、ペースに合わせた競馬ができるのでそのあたりも心配していません。課題らしい課題はありませんが、もともと華奢なタイプですから、これ以上体が減ってほしくないっていうくらいかな。その点も、ローズSのあとは栗東で調整していますからね。クリアしてくれると思っています」
ローズSのあとは、たびたび馬房に顔を出しているという岩田。「競馬にいけばおとなしいのに、馬房のなかでは怖いんですよ。ジッと見られるのが嫌なのか、怒るんです(笑)」と、意外な素顔も発見した様子だ。
10月5日の新潟3R(3歳未勝利・キネオイーグル)では、関西所属ジョッキーで一番乗りとなるJRA年間100勝を達成。岩田自身、秋競馬に入って明らかに勝ち星のペースが上がっている。とはいえ、全国リーディングを考えたとき、やはり戸崎との差はいかんともしがたいようで…。