◆ささやかれる「イスラボニータ怪物説」
今年の天皇賞で1番人気と目されるのが、史上3頭目の3歳馬Vを狙うイスラボニータ。96年バブルガムフェローは朝日杯優勝馬ながらクラシック未出走、02年シンボリクリスエスはダービー2着も当時GI未勝利。優勝馬2頭を物差しにすれば、クラシック“準2冠馬”の挑戦は至極妥当なのかもしれない。それでも生粋のヘソ曲がりたる宴会野郎。盛り上がる周囲に、何かきな臭いムードを感じてもいる。何しろ快挙を達成した上記2頭とは、かなり役回りが違うからである。
当時のバブル、クリスエスはいずれも3番人気。古馬相手に懐疑的な視線を送られており、他馬からのマークも負担になるほどではなかった。もし1番人気を背負っての出走であったら、果たして彼らも同じ結果を得られたかどうか。言い換えれば、1番人気に支持されながらも2着と涙をのんだ一昨年のフェノーメノの姿が、同じダービー2着馬としてかぶったのだ。
しかし週明けの美浦で、その思考を根底から覆す声にブチ当たった。題して「イスラボニータ怪物説」――。それは同じく天皇賞にディサイファを送り出す小島太厩舎=矢崎高志厩務員との何げない会話が発端だった。
「先週のダービーフィズ(26日=東京1000万下2着)は、まさかあの形で負けると思わなかった。勝ったラングレー、普通はあんな早く動いたら絶対に止まるでしょ? ちょっとオープン級の競馬だったね。あのクラスは条件戦じゃなく、菊花賞でも出とけって話。反則だよ(笑)」
そこで当方も「残念ながらセントライト記念は5着でしたからねぇ」と切り返すと、ふと真顔になって矢崎厩務員が言葉を続けた。
「ひょっとして今年の3歳世代はものすごく強いのかも。だって、あの馬がクラシックに出られないレベルだからね。いや、そうなるとだよ。その頂点に立つイスラボニータ、一体どこまで強いんだってことだよなぁ」
この強烈な突っ込みに当方も思わず無言に…。どうやらこのへそ曲がりもイスラボニータに白旗を掲げざるを得ない雲行きである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)