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ともにレース内容に要注目/AR共和国杯・みやこS

  • 2014年11月10日(月) 18時00分


フェイムゲームはこれからの上昇に大きく期待

 芝2500mのハンデ戦「アルゼンチン共和国杯」は、18頭のうち4頭しか出走していなかった4歳フェイムゲーム(父ハーツクライ)の快勝だった。ラブリーデイ(父キングカメハメハ)も5着にがんばっている。ともに57キロを背負っていた。

 ハンデ戦ではあっても、この東京2500mのG2で快走すると、10年のトーセンジョーダン、09年2着馬アーネストリー、08年スクリーンヒーロー、ジャガーメイル、07年アドマイヤジュピタなどを筆頭に、たちまちG1レースの主役級に躍り出ることが珍しくない。

 フェイムゲームは、勢いに乗るハーツクライ産駒であると同時に、祖母ベルベットサッシュ(父ディクタス)は、ステイゴールドの母ゴールデンサッシュと全姉妹という血統背景がある。このあとのジャパンC出走は、今年、ダイヤモンドS、AR共和国杯を勝っていても、もっと高額賞金を持っているジェンティルドンナ以下の出走希望馬が多いから出走大丈夫ともいえないが、これからの上昇に大きく期待していい。北村宏司騎手は今年も100勝に達し、頼りになるトップジョッキーとなった。

インカンテーションは本番の展望が開けた

 レース内容への注目は、ダート1800mの「みやこS」も重要である。今年が重賞に昇格してまだ5回目。ここまで4年は、1分48-49秒台の決着が連続してきたから、1分50秒2「前半1000m通過61秒3、レース上がり48秒9-36秒7」はちょっと平凡に映る。

 この日、8Rの1000万平場が1分51秒3「前半1000m通過62秒7のスローで、レース上がり48秒6-36秒1」である。レース全体の流れを考慮すると、同じような上がりで1000万平場と1秒1差の決着ではたしかに物足りないが、1-2着したのが「4歳-3歳馬」というところに価値はありそうだ。

 4歳インカンテーション(父シニスターミニスター)は、3歳の昨年の「みやこS」が好位追走から上がり36秒2で伸びて1分49秒2の2着だった。今年は、前半1000m通過61秒3の落ち着いてしまった流れを、珍しく後方追走になって自身の上がりは36秒0。これまでとはイメージを変える直線の強襲を決めている。ダート左回り1800mでは、レパードS、BSN賞など【5-0-1-0】。一方、今回と同じ右回りダート1700-1800mは、この1勝を加えても【2-1-1-4】にとどまる。

 チャンピオンズCの行われる中京ダート1800mでは、3歳時の昨年夏、出遅れてほぼ最後方から上がり「35秒1」で突っ込んでいる。今回の数字は物足りなかったが、人気のクリノスターオーニホンピロアワーズナムラビクターなどを差し切っているから、コースが変わっての本番に展望が開けた。

 チャンピオンズCには、11月3日の盛岡で行われた「JBCクラシック」の上位組も出走してくるが、2000m・2分00秒8の快レコード決着であり、快勝したコパノリッキー(父ゴールドアリュール。春のフェブラリーS勝ち馬)も、2着したクリソライト(父ゴールドアリュール。母はジャパンCダート勝ち馬アロンダイトの全姉)も、4歳馬だった。

 ダートの交流重賞を中心とするビッグレースは、ベテランのダート巧者が上位にがんばり続けるイメージが強いが、どんどんレベルの高いダート巧者が誕生する近年は、ジャパンCダートやフェブラリーSでも、若いグループの活躍が珍しくない。とくに昨年から今年にかけては、世代交代の波が芝と同じように早く押し寄せ、4歳馬の台頭が目立っている。

 すでに結果を出しているコパノリッキーはもちろんだが、インカンテーションは4歳馬の層を一段と厚くしただろう。世界中のダートのビッグレースで名前の登場する種牡馬マキャベリアンを母の父に持ち、父はA.P.インディの孫にあたる世代のシニスターミニスター。北村宏司騎手がスピルバーグの北村なら、こちらはスノードラゴンの大野拓弥騎手である。

 2着に突っ込んだのは3歳馬ランウェイワルツ。なんとこの馬もゴールドアリュール産駒であり、もう少しスムーズに前にスペースがあったら、2着にとどまらなかったかもしれない。チャンピオンズCも出走を予定している馬が多いから、今回の2着賞金加算で出走可能かはちょっと不明だが、古馬と対戦するようになってから、2,2,2着。春シーズンとは見違えるようにたくましく成長しつつある。やがてはチャンピオン級に育つだろう。

 一方、人気の4歳馬クリノスターオー(父アドマイヤボス)は、2番手追走の積極策(正攻法)で楽な流れに乗りながら、直線の追い比べで5着に沈んでしまった。ここ3走の内容、とくに3頭が並んだシリウスSの勝ち方から、もう外から並ばれても平気と思えたが、今回のように複数の馬に外から並ばれてしまうと、もまれ弱さと、勝負どころで自分から気を抜いてしまうもろい一面が出てしまうのだろう。もちろん、巻き返すが、すんなりした流れが条件になるのはそう簡単には治らない危険がある。チャンピオンズCの左回りの経験が1戦だけ(中京で凡走)なのも気になる。

 7歳ニホンピロアワーズ(父ホワイトマズル)は、ポン駆けの利くタイプだが、今回は体が立派に映りすぎた。使って変わるだろうが、世代交代の波も押し返さないといけない。

 5歳ナムラビクター(父ゼンノロブロイ)は、のびのび見せる好気配だったが、追い比べでがんばり切れず小差3着。失速したわけではないが、これでダート通算【7-2-3-4】。勝つときは強いが、期待が高まると3-4着にとどまってしまう成績から抜け出せない。スパートのタイミングが難しい馬であり、本番ではコンビの小牧太騎手の仕掛けどころがカギになる。

 休み明けでは行きたがる危険が大きかったブライトライン(父フジキセキ)は、なだめて追走するには絶好の内枠だったが、あれだけ行きたがっては苦しかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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