▲自然体でクラレントと共に大舞台へ挑む鞍上の田辺騎手
デビュー以来23戦のうち重賞レースを20戦消化し、これまで積み重ねた重賞勝ちが6回を数えるクラレント(牡5・栗東・橋口弘次郎厩舎)だが、GIレースは5回挑戦してNHKマイルC3着が最高着順と、ビッグタイトルにこれまで縁がなかった。しかし関屋記念(GIII)、京成杯AH(GIII)と連勝してサマーマイルチャンピオンに輝くなど、その充実ぶりは目を引くものがある。夏の勢いのままに、この秋、ビッグタイトルをグッと間近に引き寄せたと言っても過言ではないだろう。関屋記念から手綱を取り、サマーマイルチャンピオンに導いた鞍上が、秋の大一番でも引き続き手綱を取る。1週前追い切りで初めてクラレントの調教にも跨ったという田辺裕信騎手に、マイルCSへの手応えや意気込みを語ってもらった。(取材・文:佐々木祥恵)
この自然体こそが馬の力を引き出す秘訣
関屋記念は、全くのテン乗りだった。パドックで跨った時に「頭が高い馬」と田辺は感じたという。
「それまでのレースを見ていて、引っ掛かる馬なのかなというイメージがありましたから、折り合い重視で乗りました。うまく運べても最後はタレるかもしれないとも思いましたが、ダノンシャークという強い馬を負かすことができましたし、力がある馬だなと思いました」
田辺が感じた通り、やや頭の高い走法ではあるが、道中5、6番手の好位から直線で仕掛けられると力強く伸び、先に抜け出していたダノンシャークを見事に差し切った。田辺はクラレントの長所をうまく引き出し、テン乗りできっちり結果を出した。
続く京成杯AHでは、先頭に並びかけるような位置でレースを運んだ。スムーズに道中を進んだクラレントは、直線ではあっさりと後続を振り切って、トップでゴールに飛び込んだ。クラレントの持つ能力とセンスの良さを関屋記念で十分に掴み取った鞍上の、完璧に近い騎乗のように見えた。
「変わった点は関屋記念の57キロから1キロ斤量が増えたところだけで、乗った感じは前走とは変わりないように感じました。内枠でしたから、朝降っていた雨で馬場が悪くなるのが心配でしたが、途中から雨も上がって、レースまでに(馬場も)だいぶ回復してくれました。スタートが上手な馬ですから、あまり悪いところを通らないコースを選べましたし、あとは