「1番人気連敗」ならば東スポ杯2歳Sはこの馬/トレセン秘話
◆1番人気受難の秋
先週土曜(15日)の早朝、ヌーヴォレコルトの美浦出発を取材するため斎藤厩舎に足を運ぶと、調教の出番を待つ鈴木助手に問いかけられた。
「やっぱり今回も1番人気なんですかね?」
それは愚問とばかり即座に肯定すると、同助手は表情を引き締めて秘めた思いを明かした。
「前回(秋華賞2着)がファンの期待を裏切る結果になってしまったので…。できれば借りを返したい。厩舎としてもその気持ちでずっとやってきたんです。何とか雪辱を果たせないかな」
その言葉から主役としての責務がヒシヒシ伝わってきたのだが…。結果はまたもやクビ差の2着。テレビ観戦から感じたのは、1番人気を背負って勝つことの難しさ。並み居る強豪が揃うGIで、その包囲網を打ち破るのはやはり簡単ではないということだった。
実際、1番人気に受難の秋競馬が続いている。スノードラゴンのスプリンターズS制覇から始まったGI戦は5連敗。さらに平地のGII、GIIIでも今秋は4勝17敗という分の悪さ。屋台骨たる3強(ジャスタウェイ、ゴールドシップ、ハープスター)が凱旋門賞出走により不在だったせいもあろうが、いかに競馬が紙一重の厳しい勝負であるかが理解できよう。今週マイルCSの1番人気馬も、当然気になるところだが…。
実は主役の連敗がGI以上に深刻なのが、今年の2歳戦でもある。夏の函館からスタートし、新設重賞いちょうSを含めて計9戦。ハナ差2着は3頭いるが、1番人気に応える勝利を挙げた馬はいまだ一頭もいない。
「それなら色気も出てくるねぇ」
こう話すのは今週のGIII東京スポーツ杯2歳S(24日=東京芝1800メートル)にソールインパクトを送り出す戸田博文調教師。デビュー3戦目の前走でようやく初勝利を挙げたばかりだが、トレーナーの言葉を聞くと無視できない気分になってくる。
「現状は良くも悪くも相手なり。ただ、初陣のミュゼスルタン(新潟2歳S優勝)との接戦が示す通りに、高いレベルの組み合わせでも崩れない力はある。前走は八分の仕上げで勝ってくれたし、叩いた上積みは確か。ある意味底は見せていないし、クラスが上がっても恥ずかしくない競馬をしてくれそう」
波乱続きの2歳戦、果たして今週は?
(美浦の宴会野郎・山村隆司)