話題にも上がらなかった馬の台頭というのも面白い(吉田竜作)
◆20日の栗東の坂路でそれこそ目の覚めるような動きを見せたドリームタイド
POGに限らず、競馬で面白いのは予想通りに事が運ぶことであり、またいい意味で裏切られることでもある。春の公開ドラフトで美野さんが「今年はピンとこない」と語っていたが、今年の2歳戦線はある意味美野さんの予想どおりに来ている気がする。これはある意味予想通りに事が進んでいることか。ただ、逆にいい意味で裏切ってくれた馬もいた。それが先日の京都で鮮烈なデビューVを決めたレガッタ。「距離を詰めたくないし、外回りのレースにこだわっていきたい」と昆調教師は早くもクラシックを意識しているが、この馬こそ春先は散々な評価だった。これも昆厩舎の“厩舎力”と馬そのものが持っているポテンシャルの高さが成せる業。このまま順調に成長していってもらいたい。
そして、POGでは話題にも上がらなかった馬の台頭というのも面白いもの。20日の栗東の坂路で、それこそ目の覚めるような動きを見せたのがドリームタイドだ。すでにデビューしているシルバーソードという馬を相手に追われたのだが、ラスト1ハロン地点のいちばんキツイところから急加速。瞬く間にパートナーをぶっちぎってしまったのだ。いわゆる「1番」で追われたために走りやすいこともあっただろうが、それを差し引きしても51.8-12.1秒のインパクトはかなりのものだった。そして、この動きを見た中村調教師の機嫌が悪くなるはずもない。「初めての馬なりの追い切りでもしまいに『おっ』と思わせる動きをしていたし、片鱗は見せていたんだ。しまいに動かしたらすごいだろうなと思っていたが、最後の1ハロンだけであそこまで離すとは思わなかったよ。走りやすい時間帯だったから時計は鵜呑みにしていないけど、ラスト1ハロンの12秒1というのは評価していいと思う」と上機嫌。更には「乗った人間はみんな『ゆったり』と乗っているつもりらしいけど、それでもすごい時計になっちゃうんだ。馬が大きいのもあるけど、跳びが大きいからそうなるんだろうね」と大物感あふれるコメントも飛び出した。今後は「様子を見て考える」とのことだが、この追い切りでまだ2本目。まだまだよくなるはずで、そのうち良血馬たちをなぎ倒していくかもしれない。
松田博厩舎には待望の良血馬レーヴミストラルが入厩。ゲート試験をパスして阪神初日芝2000メートルでのデビューに向けて調教が積まれている。「腰が甘かった馬だけど、こっちに来てからは順調にきている。まだビシッとやってないのでどんなものか」と松田博調教師は微妙に濁すような言い回しをするが、もちろんこれは自らの高ぶる気持ちをはぐらかすもの。「勝己社長も楽しみにしている1頭だから。走ってもらわんと」。この馬で来春を戦い抜くつもりでいるのだろう。また、同時期に入厩したトウシンハンターも2日目の芝1600メートル戦でのデビューが決まった。こちらは「まだ線の細さを感じる。基本的に大人しいんだが、ゲートの裏に行くと入れ込むらしいんだ。ちょっとメンコでもして練習に行ってみる」とのこと。母は桜花賞3着後に骨折→引退となったトレンドハンター。母の無念を晴らしてほしいところだ。このマイル戦には池江厩舎の良血馬パラダイスリッジもスタンバイ。「切れ味を感じるし、軽い芝もよさそう」と池江調教師。このあたりが強力なライバルとなるか。