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粘り強い総合力による勝利/チャンピオンズC

  • 2014年12月08日(月) 18時00分


ハイレベルなダートチャンピオンの座を目指して

 5歳牡馬ホッコータルマエ(父キングカメハメハ)が先行策から力強く抜け出し、事実上の第1回となった「チャンピオンズC」を制した。2013年の「かしわ記念」「帝王賞」「JBCクラシック」「東京大賞典」、今年2014年の「川崎記念」につづき、GI6勝目である。

 また、ホッコータルマエのGI勝利により獲得賞金を加算した種牡馬キングカメハメハ(父キングマンボ)は、首位争いのつづくゴールドアリュール(父サンデーサイレンス)との全日本「ダート競走サイアーランキング」で首位に立ち、2011年以降、4年連続のダートチャンピオンサイアーの座がみえてきた。

 ホッコータルマエは、このあと12月29日の「東京大賞典」で2連覇を目ざすことになる。昨年はダート7勝のうちGIを4つも制しながら、JRAの競馬場で行われたGI競走を勝っていなかったのが響き、JRA賞の「最優秀ダートホース」の座につけなかったが、もし、このあと東京大賞典を勝つとすると、ホッコータルマエの14年のダート成績はドバイWカップ挑戦を含みGI競走3勝となり、4歳コパノリッキーのGI競走3勝と並ぶことになる。陣営は「再びドバイWカップを目標にする」という。レベルの高いダートチャンピオンの座を目ざしてもらおう。

 たまたまコパノリッキーのGI3勝も、JRAの競馬場で行われたGIはフェブラリーSだけであるところがいい。もうさすがに、パートIの日本で行われた同じ格付けGIのレースを、中京で行われたレースだからとか、盛岡で行われたJBCだからとか、グレードIの格付け(世界共通)を軽視しがちなJRA賞の投票では考え直し、投票する多くの人びとにちょっと悩んでもらおう。統一GIという表記は良くない。日本の競走として価値が認められたからGIなのである。統一制がなければ、グレード外である。JRA賞の対象馬には、香港の成績も、ロンシャンの成績もドバイの成績も関係する。きわめて当然であり、限られたJRAの競馬場が対象ではない。

 2番人気のホッコータルマエがすんなり2番手追走になったのに対し、1番人気に支持されたコパノリッキー(父ゴールドアリュール)は残念なことにスタートに失敗。2完歩目だろう、右前がつまずくように出なかった。スタートの瞬間を内ラチの下から見上げるような角度になったJRAの映像は、残念なことに今回は空振り。斬新な別角度からのレース映像はみんな歓迎だが、あれはレース再生向きか。間の悪いことに、今回はもっとも重要なシーンを外してしまった。

 外枠14番からダッシュつかずとなったコパノリッキーは、途中からは外に回りスパートのタイミングを探したが、自身が出負けしたことによって前半1000m通過は「62秒3」。この週は古馬500万条件のダート1800mがいくつも組まれていたが、500万下と同じレベルの緩いペースになったから、後半4ハロンは「12秒2-12秒4-11秒7-12秒4」=48秒7-36秒5。上がりの速い決着となった。3コーナー過ぎからスパートしたものの、それはレース全体がペースアップしたのと同じタイミングであり、結局、12着に沈んだ。

 つまずいての出負けなどめったにないことであり、さすがに仕方がないだろう。責められない。これで秋のGIは、1番人気馬は8連敗【0-1-0-7】。どうも魅入られている。全体に世代交代ムードを感じさせていたが、上位は「5歳馬、5歳馬、6歳馬…」。7頭出走していた3-4歳馬は【0-0-0-7】に終わった。芝のような切れ味の勝負ではないダートGIでは、負けた後で、ペースが…、展開が…はあまりいうことではなく、緩い流れなら自分でスパートを早めるだけだが、さすがに今回は人気の中心コパノリッキーが先行すると思われ、それをライバルがどう競り落とすかの展開が予想されていたから、突然、そうではない流れや位置取りになったときに対応できなかったのが、経験の乏しい3-4歳馬だったとすることはできる。

 好スタートから、好位追走となった5歳ナムラビクター(父ゼンノロブロイ)は、春に仁川S、アンタレスSを連勝した能力をフルに発揮することができた。脚の使いどころが難しい馬だから、前が引っぱってくれる流れならもっと追っての味が生きただろうが、射程内にいたホッコータルマエを交わせなかったから、勝ち馬の粘り強い総合力を称えるしかない。力感あふれる素晴らしい馬であり、5歳馬ながら通算ダート成績【7-3-3-4】。本物になるのはまだこれからかもしれない。母ナムラシゲコは、JRAと公営高知で休み休みながら12歳までに通算27勝もした不屈のナムラコクオーの半妹である。

 ベテラン6歳のローマンレジェンド(父スペシャルウィーク)は4カ月の休み明けだったが、巧みにレースの流れに乗り、抜け出しそうなシーンもあった。ムリはできないところがあり、休み明けを1戦したから次は確実に良化とはいえないが、陰りや衰えなどまったくなかった。

 15番人気だった5歳サンビスタ(父スズカマンボ)の小差4着は、決して恵まれての好走ではなく、今回の相手を考えれば快走にも近い。幅広い距離をこなせる強みがあり、同じ上がり馬のトロワボヌール(父バゴ)とともに牝馬ダート重賞の文句なしのエース格である。

 8歳ワンダーアキュート(父カリズマティック)は、このレース4年連続2着はならなかったが、チャンピオンズC(ジャパンカップダート)は、3歳時から「6着、―、2着、2着、2着、5着」であり、今回とて凡走したわけではない。どんなレースもできるが、1800mだから追い込む作戦は当然。読みが外れたわけではなく、1800mでこの流れは対応できない。

 4歳インカンテーションベストウォーリアは、まだレースの流れに注文のつく力関係だから、行けなかったコパノリッキーとともに「10着、11着、12着」。そろって凡走を受け入れることになった。もっとたくましく、したたかに成長する来年こそ、だろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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