予想の楽しみが増えた有馬枠順公開ドラフト/トレセン発秘話
◆枠の明暗がハッキリと出る有馬だからこそ面白い
今年の有馬記念(28日=中山芝内2500メートル)の枠順(馬番)抽選が公開ドラフト制となることが8日に発表された。年末のビッグイベントのショーアップ化――これはすべてのファンがもろ手を挙げる画期的チャレンジでもある。
抽選を行うのはヤンキースの田中将大投手と松山康久元調教師。このようなビッグネームの人選や、その模様をテレビでライブ中継するという企画も文句なしに素晴らしい。だが、何より意味があるのは、JRA初の希望制採用がこの有馬記念という舞台であることに尽きる。
以前に記したこともあるが、当方にとって忘れられないのが2000年の有馬記念。GIの枠順確定後は関係者のコメント取りに追われるのが常だが、この年取材をさえぎるほどに落胆を示したのが8枠15番に決まったアメリカンボスの田子冬樹元調教師だった。
「この枠かよ。参ったね。今年は目がねぇや。しゃべることは何もないよ」
生来がぶっきらぼうな気質だったが、この時ばかりは本音であったろう。スタートしてすぐに最初のコーナーを迎える中山2500メートル。位置取りにこだわる馬にとって、外枠は無駄に脚を使わされる致命的なエリアとなるからだ。朝日杯FSが中山から阪神に舞台を移した今、おそらく枠の明暗を最も分けるGIがこの有馬。だからこそドラフトにも大いに味が出てくる。
テレビで見守るファンにとっても、おそらく興味の先は指定する枠番以上に抽選の過程だろう。フルゲート16頭中、応援したい馬は果たして何番目に名前を呼ばれるか。マー君、もしくは松山元調教師の指先が運命のカギを握るスリリングさも一興だ。
付け加えれば、これまで抽選会場を訪れることがまれだったジョッキーもこの方式なら調教師と同行せざるを得ず、枠順確定後の彼らの表情も予想検討の材料のひとつとして注目を集めるに違いない。
いずれにせよ、前半に指定権を得た関係者の歓喜と、後半まで名前を呼ばれない関係者の苦渋。そのコントラストは、すでにその場で勝負が始まっていることをいや応なく意識させてくれるはず。個人的には大歓迎の枠番ドラフト。このシステムが続くように、今年のグランプリが過去最高の盛り上がりを見せることをまずは願いたい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)