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デビュー当初は胴長だったが筋骨隆々に、ジャストドゥイング/吉田竜作マル秘週報

  • 2014年12月17日(水) 18時00分


◆ハクサンムーン担当の桜井助手「走る馬っていうのはやっぱり(体が)変わっていくものなんですね」

 暮れの阪神C(27日=阪神芝内1400メートル)に出走予定のハクサンムーンが先日、放牧先から帰キュウした。馬房をのぞかせてもらうと隆起したその筋肉は馬服では隠し切れないほどの迫力。担当の桜井助手がビルドアップされた愛馬を見ながらこんなことを言った。

「この前、(ハクサン)ムーンの新馬戦の時の写真を見たんですよ。もうガリッガリのヒョロッヒョロ。今回もいい体で戻ってきて500キロくらいはあると思いますが、デビュー時と比べると60キロ近く増えていることになるんですよ。走る馬っていうのはやっぱり変わっていくものなんですね」

 ディープインパクトのような規格外の存在もいるにはいるが、“走る馬”は桜井助手の弁通り、成長するにつれて馬体も変化していく。その成長過程は千差万別。早熟、晩成といった成長速度に違いがあるのはもちろん、ハクサンムーンのように短距離馬らしく馬体に厚みが出る馬もいれば、胴が伸びる、背が高くなるほか、ジョーカプチーノ(09年NHKマイルCの覇者)のように「頭が大きくなる」(坪田助手)なんて声もあったりで…。

 朝日杯FSに出走する馬たちも短い間に様々な変化を見せている。まずは未勝利(福島)→芙蓉S(新潟)と芝1800メートルを連勝し、同距離の東京スポーツ杯2歳Sへと臨んだジャストドゥイング。あらの目立ったそれまでの走りとは一変、折り合いもついて実にスムーズな追走から直線で満を持して追い出したのだが…。坂の上りの途中でバッタリと勢いが止まってしまった。

「レース運び自体は完璧だった。あと1ハロンで止まってしまったところを見ると敗因は距離なのかな。お母さん方の血統は短距離色が強いから…」(中竹調教師)

 確かにデビュー当初、やや胴長に映った馬体が、1週前追い切りをチェックした時はもう見るからにマッチョに変貌。増え続けている馬体重は決して太いわけではなく、筋骨隆々な体に日に日に成長している証しなのだろう。「体つきがいかにも短いところって感じになってきたのは確か。ただマイルまでならこなせるはず。具合はホントいいからね」と白倉助手。スピード型の馬体に変貌したところに今回は距離短縮。前走の10着惨敗で見限るのはまだ早いか。

 一方でクラリティスカイも面白い成長を見せている。新馬戦は中京芝1400メートルを選択して4着に敗れたが、「実は乗った人間はみんな『ダートの方がいい』って言ってたんだよね。まあ2歳のうちは我慢して芝を使おうってことになったんだけど」と当初は友道調教師も適性をつかみかねていたようなのだ。しかし夏場に放牧を挟んだことで馬体が変化。「胴が伸びてスラッとしてきたんだ。これなら距離はあった方がいいかな、と」

 1800メートルに距離を延ばした復帰戦(阪神)を勝ち上がると、続くいちょうSで堂々レコードVを飾って有力馬の一頭に躍り出た。

「ここを目標に調整してきたし、レコード駆けの反動も感じない。いい状態で送り出せそうだよ。来年のクラシックにつながる競馬を」と友道調教師のトーンも日に日に上がっている。

 今年から新たに決戦の舞台となる阪神芝外回りのマイルは、大物を量産している06年以降の阪神JFが物語るように、クラシックでも必要とされるスピードとスタミナが要求されるコース。クラリティスカイの来年を占うにはもってこいの舞台といえようか。

 さらにもう1頭、触れなくてはならない馬がいる。恐らく競馬ファンが今、最も「馬体の変化」に注目しているであろうオルフェーヴルの全弟アッシュゴールドだ。馬体が小ぶりに出るのがこの血統の特徴ではあるが、地道にサイズが大きくなっていくことも見逃せない。実際、オルフェーヴルも引退の時にはデビュー時に比べて20キロ近く馬体が増えていたのだ。では、アッシュゴールドは?

「どこがどう変わったという感じはないけど、休ませて少しずつではありますが、芯は入ってきた。トモもしっかりしつつある。ただ担当の森澤キュウ務員は『兄姉の中では一番成長がゆっくり』と言っていた」

 兼武助手はその成長力を測りかねているようだが、「この血統は急に良くなる。それが今回になるか、先になるかはわからない」。

 見栄えは前出2頭には及ばないかもしれないが、恐らく爆発力は現状でもメンバー中ナンバーワンだろう。今週の追い切り、そしてパドックに前回以上の馬体で出てくるようなら…。新たな伝説が始まるかもしれない。

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