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エーシンモアオバーが接戦を制し2年ぶり2度目のV!/名古屋グランプリ・名古屋

  • 2014年12月24日(水) 18時00分


過去3年の勝ち馬がクビ、1/2馬身という接戦となっての決着だった

 有力馬の馬体重の増減が大きく、中でも本命にしたトウショウフリークは+23kg。しかも過去最高馬体重だった昨年のこのレースより16kgも重いとあっては、馬券的にはレース前から戦意喪失。昨年はエーシンモアオバーを制して大逃げの手に出て2着に粘ったが、今回は最内枠で武豊騎手が押しても行けず、対照的にダッシュがよかったエーシンモアオバーにハナを奪われたばかりか、すぐ外にはニホンピロアワーズがぴたりとついて外に持ち出すこともできず。トウショウフリークは口を割って掛かってしまい、おそらく武騎手はこれではどうにもならないと判断したのだろう。うしろにいる馬を見ながら一旦下げて、ようやく外に持ち出せたのは2コーナーあたり。先頭に立ってからもしばらくは馬が怒っていたような感じで、さすがにこれではレースにならず、2周目の向正面あたりで終了となってしまった。

 トウショウフリークが先頭に立ったあともスムーズに競馬を運べたエーシンモアオバーが2周目の向正面で先頭に立つと、終始1馬身と離れずぴたりと追走してきたニホンピロアワーズと、3コーナーからは一騎打ちの様相。3〜4コーナー中間、すでにムチが入っていたエーシンモアオバーに対して、手ごたえ十分なままのニホンピロアワーズがクビほど前に出た。この場面では、多くの人がニホンピロアワーズの勝利を確信したのではないか。実際にエーシンモアオバーの岡部誠騎手も、相手の手ごたえを見て、ダメかと思ったそうだ。ところが4コーナーを回るところのコーナーワークで再び前に出ると、直線ではニホンピロアワーズが迫ってくるぶん差し返してというしぶといところを見せ、そのまま押し切った。そしてシビルウォーが昨年勝ったときと同様、向正面から追いどおしで徐々に差を詰め、前2頭に迫ったところがゴール。結果、過去3年の勝ち馬がクビ、1/2馬身という接戦となっての決着だった。

 駆け引きの多い長距離戦では、より騎手の技量が勝敗を左右すると言われるが、今回はまさに地元名古屋の不動のリーディング(今年は南関東での期間限定騎乗など不在となる期間があったためここまで2位)、岡部騎手であればこそという勝利だった。もちろんニホンピロアワーズの酒井学騎手が劣っていたというわけではない。早めにエーシンモアオバーを相手と定め、これ以上ない騎乗をしたと思う。しかし岡部騎手が地元のこのレースでエーシンモアオバーに騎乗するのは今回で4年連続。しかも2年前には勝ってもいる。1周1100mの小回りコースを2周以上するという特異な競馬だけに、経験の差は大きい。が、そんな理屈よりも、最後の直線で何が何でも抜かせないという鞍上鞍下の迫力こそがまさっていたようにも見えた。

 それにしても“人気薄の逃げ馬”とはよく言ったもので、今回のエーシンモアオバーは中央5頭の中で最低人気どころか、全体の中でも6番人気で単勝は13.3倍。前走浦和記念では3コーナー過ぎで勢いをなくして9着に惨敗しているレースぶりからはその人気もしかたないが、ただこの馬が走るか走らないかは“気分”によるところも大きいようだ。ハナに行こうとしたときに、それ以上の勢いで来る馬がいるとダメなときもあるし、また勝負どころで他馬に早めにまくりきられてしまうとレースをやめてしまうようなときもある。あとは輸送か。地方のダートグレード4勝は、これで金沢と名古屋で2勝ずつ。栗東からもっとも近い地方競馬は園田競馬場だが、園田では古馬の交流重賞は1400mの兵庫ゴールドトロフィーしかなく、この馬は蚊帳の外。となると近いのは金沢、名古屋ということになる。中央でも全8勝のうち7勝が札幌・函館の滞在競馬。小回りコースが得意ともいえそうだ。来年も現役続行となるようで、たとえ惨敗があって人気を落としても、金沢と名古屋では見直しが必要、ということは覚えておきたい。とはいえ明けて9歳でも同じように力を発揮できるものかどうか。

 浦和記念ではほとんど勝ったような内容での2着だった大井のグランディオーソは3番人気に支持されたものの、残念ながら4着。2周目の3コーナーあたりでは、シビルウォーよりも明らかにグランディオーソのほうが手ごたえはよく、それでいて直線伸び切れなかったのは、2500mという初めて経験する距離に戸惑ってということもあっただろう。

 ソリタリーキングは4番手を追走したが、勝負にはからめずの5着。今回出走した中央勢はすべて7歳以上というベテランだったが、全盛時とのギャップはこの馬が一番大きいかもしれない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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