来年から増額されるJRAからの生産者賞(写真と本文とは関係ありません)
全体としては減少し続けてきた生産頭数だが、逆に増えている牧場もある
このほど届いたJBBA(日本軽種馬協会)発行による「2014年産全国馬名簿」を繰っていると、大きく変わりつつある生産地の全体像が改めて見えてくる。この名簿に記載されている2014年産のサラブレッドは、全部で6424頭。他にアングロアラブが3頭いるので毛種馬としての総数は6247頭ということになる。何らかの理由で名簿に載っていない馬も一定数いると思われるが、ほぼ九分九厘は拾っているはずだ。
日高では5022頭。胆振933頭。十勝13頭。東北89頭。関東320頭。九州14頭という内訳になっている。因みに10年前の2004年生産馬名簿と比較すると、その変化の度合いが良く分かる。2004年版には、全国で7975頭のサラブレッドと90頭のアングロアラブが
記載されており、内訳は、日高が6431頭、胆振785頭、十勝63頭、東北236頭、岩手県4頭、宮城県33頭、福島県13頭、栃木県16頭、群馬県3頭、千葉県285頭、九州(熊本、宮崎、鹿児島)83頭、支部外23頭となっている。
この10年間で生産頭数が大きく減少したのは、日高が-1409頭、東北もかなり減っているし。九州の減少幅も大きい。むしろ増えているところを探した方が早いほどで、相対的に生産頭数がどんどん減ってきたことが見て取れる。
しかし、全体としては減少し続けてきた生産頭数が、牧場別に見て行くと、逆に増えているところもある。中小の生産牧場がこの10年間で大きく生産頭数を減らしてきたのを尻目に、大手はむしろ増加に転じている。わずか10年の間にこの両者の落差は確実に拡大してきている。
その最たる例が、他ならぬ「社台グループ」の各牧場である。
2004年の時点で、社台ファームは248頭、ノーザンファームは241頭、社台コーポレーション白老ファームは94頭、追分ファームは31頭の生産頭数であった。これらグループ4牧場の総数は、計614頭である。2004年と言えばキングカメハメハがダービーを勝ち、ダイワメジャーが皐月賞を勝った年である。またコスモバルクがホッカイドウ競馬所属のまま中央クラシックに遠征し話題となった年でもある。
すでにサンデーサイレンス旋風が吹き荒れて久しく、GIレースの多くが社台グループ生産馬によって席巻されていた。しかし、今思えば、この生産頭数(614頭)は、まだそれほど多いとは感じない。
それが10年後の今年になると、次のような生産頭数に激増している。社台ファーム380頭、ノーザンファーム455頭、社台コーポレーション白老ファーム115頭、追分ファーム65頭。実にグループ4牧場合わせて1015頭もの生産頭数になる。10年間で二倍とは言わぬまでも1.7〜1.8倍くらいに増えている計算だ。しかも、母系は太ゴシックの実績ある名牝が少なくないので、レベルもまたひじょうに高い。粒揃いの産駒が1000頭規模で誕生し、その大半が当然のことながら中央競馬に入ってくるわけで、昨今のGIレースにおける出馬表に占めるグループ生産馬の割合が高くなるのも頷ける。
一方、日高でも、大手と呼ばれるところは、この10年間で生産頭数を大きく増やしている牧場が少なからずある。例えば、ビッグレッドファーム。2004年には42頭しかいなかった生産頭数が今年は83頭になった。また下河辺牧場は10年前に71頭だったのが今年は93頭、千代田牧場は63頭から97頭、岡田スタッドは29頭から74頭などというように、育成部門を併せ持つ大手生産牧場はむしろ生産頭数が増加している。
さらに新興勢力とも言うべき、エスティファーム(59頭)やコスモビューファーム(39頭)、新冠タガノ牧場(36頭)なども、着実に生産部門を拡充させてきている。
10年ひと昔などというが、生産地は日々変化を遂げており、また今後10年間ではさらにこれまで以上に大きく変わって行きそうな予感が漂う。より力をつけている大手牧場と、その狭間で何とか生き抜こうと喘ぐ中小牧場。来年はさてどんな年になるだろうか。