欧州におけるガリレオ同様、独走態勢でリーディングサイヤーとなったタピット
先週の欧州編に続き、今週は北米における2014年のサイヤーランキングを御紹介したい。
欧州におけるガリレオ同様、1頭だけ抜けた独走態勢でリーディングサイヤーとなったのは、ゲインズウェイファームで供用されているタピット(14歳、父プルピット)だった。
G1BCディスタフを含む4つのG1を制し、280万ドルを収得したアンタパブルを稼ぎ頭として、G1ベルモントSなどG1・2勝のトナリスト、G1フロリダダービー勝ち馬コンスティテューションらを輩出。前出のアンタパブルがBCディスタフを制した10月31日の段階で早くも、2007年にスマートストライクが作った1419万1187ドルという種牡馬による年間収得賞金最多記録を越え、最終的には1649万2151ドルという、空前の大記録を樹立することになった。
1勝馬タップユアヒールスの初仔として生まれたタピットは、父プルピットにとって3世代目の産駒の1頭となる。
叔父に、G1カーターH、G1NYRAマイル(=現在のシガーマイル)、G1ヴォスバーグSと3つのG1を制したルビアーノがいて、リローンチ、グリッターマンといった種牡馬の名も見える牝系を背景に持つタピットは、1歳秋にキーンランドセプテンバーセールに上場され、62万5千ドルで購買されている。この年のセプテンバーセール・セレクトセッションではミリオンホースが14頭誕生しているから、驚くほどの高値ではなかったが、しかし一方で平均価格は26万6780ドルだったから、タピットは若駒の頃から相当に評価の高い馬だったようだ。
ちなみに、タピットと同じプルピット産駒で、同じ年のセプテンバーセールにて140万ドルで購買されて日本にやってきたのが、1億円近い賞金を収得したステンカラージンであった。
元調教師というよりも、現在ではオールウェザー素材「タペタ」の開発者として有名になった、マイケル・ディッキンソンの管理馬となったタピットは、2歳10月にデラウェアパークのメイドン(d8F)でデビュー。このレースを7.3/4馬身差で圧勝して初勝利を挙げると、次走はG3ローレルフューチュリティ(d8.5F)に挑み、ここも4.3/4馬身差で制して重賞初制覇を果し、2戦2勝の成績で2歳シーズンを終えた。すなわち、仕上がり早という特性を発揮していたのである。
3歳緒戦のG1フロリダダービー(d9F)で6着に敗れ初黒星を喫したが、続くアケダクトのG1ウッドメモリアルS(d9F)を、道中最後方から差し切るという豪快な競馬で制し、ケンタッキーダービーの有力候補となった。
だが、3番人気に推されたケンタッキーダービーでは、16番という外枠と、スロッピーという極悪馬場に持ち味を殺され9着に大敗。次走はG1ベルモントSを予定していたが、肺疾患で回避。秋初戦となったG2ペンシルヴェニアダービーで再び大敗を喫すると、これを最後に現役を退き2005年の春に種牡馬入りしている。初年度の種付け料は1万5千ドルであった。
2008年にデビューした初年度産駒から、この年の全米2歳牝馬チャンピオンで、現在は日本で繁殖生活を送るスターダムバウンド、G1ハリウッドスターレットS勝ち馬で、これも現在は日本で繁殖生活を送るララア、G1アラバマS勝ち馬ケアレスジュエルらが出現。タピットは、フレッシュマンサイヤーチャンピオンにして、2歳リーディングサイヤーの座に就く快挙を成し遂げた。仕上がり早という特性は、産駒たちにも継承されたのである。
ちなみに、タピットの初年度産駒の1頭が日本に渡ったテスタマッタで、G1フェブラリーSなどを制して4億1647万円の賞金を収得した同馬が、現在もタピット産駒の最多収得賞金馬となっている。
2年目以降もコンスタントに活躍馬を出して来たタピットは、ハンセンが全米2歳チャンピオンとなり、現在は日本で繁殖生活を送るザズーがG1ラスヴァージネスSやG1レディースシークレットSなどを制した2011年に、リーディング3位に台頭。翌2012年の4位、2013年の7位を経て、2014年についに自身初となるリーディングの座に昇りつめたのであった。
2014年は日本でも、古馬のオープンクラスで活躍したタールタン、G1全日本2歳優駿2着馬タップザット、未勝利戦で大差のぶっちぎりを見せたゴールデンバローズらを輩出。大いなる存在感を示している。
既に御承知の読者も多いと思うが、2015年のタピットの公示種付け料は30万ドルまで高騰。種付け料の分野でも、1頭だけ抜きん出た独走態勢となっている。
2位は、BCジュヴェナイルフィリーズなど2つのG1を制し162万ドルを獲得したテイクチャージブランディを稼ぎ頭とするジャイアンツコーズウェイ(18歳、父ストームキャット)、3位はBCフィリー&メアターフなど2つのG1を制し145万ドルを収得したデイアットザスパを稼ぎ頭とするシティジップ(17歳、父カースンシティ)、4位はBCターフスプリントなどを制し100万ドルを収得したボビーズキトゥンを稼ぎ頭とするキトゥンズジョイ(14歳、父エルプラド)、5位はG1パシフィッククラシックなど3つのG1を制し158万ドルを収得したシェアドビリーフを稼ぎ頭とするキャンディライド(16歳、父ライドザレイル)となっている。
北米2歳リーディングに輝いたのは、総合は2位だったジャイアンツコーズウェイで、同馬にとっては2005年以来9年振り2度目となる、2歳部門のタイトル獲得であった。
前述したように、稼ぎ頭はBCジュヴェナイルフィリーズなど2つのG1を制し162万ドルを獲得したテイクチャージブランディで、更に、G1ブリーダーズフューチュリティの勝ち馬で、ケンタッキーダービーの有力候補となっているカーペディエムもジャイアンツコーズウェイ産駒である。
2歳2位が、ティズワンダフル(11歳、父ティズナウ)だ。
G1スピナウェイS勝ち馬で、ケンタッキーオークスの有力候補となっているコンドコマンドという大物を出している一方で、2014年は34頭の2歳馬がデビューし、このうち6割を越える21頭が勝ち馬になるという、極めて高い勝ち上がり率を誇っている。
そのティズワンダフルは昨年10月にディールがまとまり、今季は韓国が繋養地となっている。
以下、2歳3位が、BCジュヴェナイルを制し119万ドルを収得したテキサスレッドを稼ぎ頭とするアフリートアレックス(13歳、父ノーザンアフリート)、2歳4位がBCジュヴェナイルフィリーズ2着などで48万ドルを収得したトップデサイルを稼ぎ頭とするコングラッツ(15歳、父エーピーインディ)、2歳5位がG1フリゼットSなどに勝ち41万ドルを収得したバイザムーンを稼ぎ頭とするインディアンチャーリー(11年12月に死亡、父インエクセス)となっている。
そして、2歳6位にランクされたのが、2014年の北米フレッシュマンサイヤーチャンピオンとなったクオリティロード(9歳、父イルーシヴクオリティ)だった。
3歳時のG1フロリダダービー(d9F)、同じく3歳時のG2アムステルダムS(d6.5F),4歳時のG1ドンH(d9F)と、現役生活に3度もトラックレコードを樹立した実績を持つのがクオリティロードだ。自分の競馬をした際には、手のつけられない強さを発揮した馬であった。
稼ぎ頭のフーテナニーは、北米調教馬でありながら夏に欧州遠征を敢行し、ロイヤルアスコットのLRウィンザキャッスルSを制し、ドーヴィルのG1モルニー賞でも2着となった後に帰国して、G1BCジュヴェナイルターフを制している。父の現役時代からは、芝の活躍馬を出す姿は想像しづらかったが、その父イルーシヴクオリティは、現役時代に芝1マイルのワールドレコードを叩き出し、父として欧州でも活躍馬を出している馬だ。更にクオリティロードの母の父は、ニジンスキーの孫にあたるストロベリーロードだから、血統背景は芝適性も持ち合わせていることを示している。
クオリティロードは、2つの重賞を含めてここまでダートで3戦3勝の成績を残している、ブロフェルドという大物候補も出していることも付記しておきたい。
フレッシュマンサイヤーの2位に入ったのが、2010年のケンタッキーダービー馬スーパーセイヴァー(8歳、父マリアズモン)だ。昨年春に各地で開催された2歳トレーニングセールで、売れ行きが良かったのがスーパーセイヴァー産駒で、市場における評価がそのまま競馬場で発揮された形となった。
フレッシャマンサイヤー3位が、2009年の2歳チャンピオンで、3歳時にもG1プリークネスSなど2つのG1を制したルッキンアットラッキー(8歳、父スマートストライク)だ。本馬の産駒は昨年43頭がデビューし、3分の2を上回る29頭が勝ち馬になるという、高い勝ち上がり率をマークしている。