馬産地の視点で見たハービンジャー産駒の特徴(村本浩平)
◆2012年セレクトセールの時に思った感想は「自分の馬体を強く出す種牡馬だなあ」
ハービンジャーファンクラブの皆さん(詳しくは2014年9月16日更新のコラムを参照)! ついにやりました! 母が重賞2勝馬(ローズS、クイーンS)のレクレドールという良血馬ベルーフが、GIII京成杯を優勝。勿論、これはハービンジャー産駒にとっても初めての重賞制覇であり、一躍、同条件(中山芝2000m)で行われる皐月賞の有力馬として名乗りをあげることにもなりました。
ハービンジャー産駒に関してはこの赤本コラムでも、須田鷹雄さんがデータを用いた原稿を書かれていたり、その他、予想系のコラムでも様々な観点で産駒の特徴が取り上げられています。まずはそちらに目を通していただいて(笑)、自分は馬産地の視点で見たハービンジャー産駒の特徴を、改めて振り返ってみようと思います。
ハービンジャーの初年度産駒は2012年に誕生。その年のセレクトセールの当歳セクションにも続々と上場されていきますが、その時に思った感想は、「自分の馬体を強く出す種牡馬だなあ」という感想でした。
ハービンジャーの産駒は、母系にサンデーサイレンスを持つ配合馬が圧倒的に多いことは、既に勝ち上がっている馬の血統を見れば一目瞭然。サンデーサイレンスは母系に入ってからも卓越した能力だけでなく、「軽くて、薄い」馬体も遺伝させる傾向にある中で、この時に上場されたハービンジャーの産駒たちのほとんどが、父譲りの安定感を全面に押し出していました。実際、ベルーフの生産牧場である白老ファームの関係者からも、「産まれた頃からがっしりとした印象があった」との言葉が聞かれています。
騎乗育成へと移ったハービンジャーの産駒たちですが、調教が進む中で、育成スタッフから聞かれていたのが、「どれだけのトップスピードを持っているかは未知数」という言葉でした。調教の動きには柔らかさがあり、ゆっくりめではあるものの、順調に調教メニューをクリアしていく。その一方でサンデーサイレンス系種牡馬の産駒に共通する「切れ」はそれほど感じられず、速い時計の調教をやった時にスピード不足が露呈してしまうのでは? との感想も聞かれたのも事実でした。
しかし、デビューを迎えた産駒たちはそんな不安を払拭するかのように、芝の中距離戦を席巻する勢いで続々と勝ち上がっていきます。懸念された切れ(スピード)不足も、スタートセンス良くゲートを飛び出すと、そのまま押し切ってしまうので無問題。流れが落ち着く傾向にある芝の中距離では、特に安定したレースを見せ始めます。
さすがに東京や京都など終いの切れを生かすコースでは、ディープインパクトを始めとするサンデーサイレンス系種牡馬の産駒たちが台頭し始めたことで、2勝目をあげる産駒はなかなか出てこなくなったのも事実。それでもこのベルーフの勝利にも証明されるかのように、明け3歳を迎えて心身共により成長を遂げた産駒たちは、2勝目の壁を乗り越えるだけでなく、続々とクラシック戦線に名乗りを上げてくれるに違いありません(希望的観測込みで)。
ベルーフが中山のゴール前にある急坂をものともせずに、颯爽と乗り越えていったあの末脚は、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスで、後続をみるみるうちに突き放していった、ハービンジャー自身の豪脚を彷彿とさせます。まあ、ベルーフの場合は、叔父となるステイゴールドの産駒成績にも証明される中山適性の高さが、母系からその後押しをしてくれた、とも言えるかもしれませんが(笑)。それでも得意としている洋芝といったパワーが必要とされる芝コースで、今後、ハービンジャー産駒がどのような成績を残してくれるかは要注目でしょう。
ちなみにこの産駒の活躍を受けて、今シーズンのハービンジャーは既に種付け申し込みは満口。しかもニックスが証明された感もある、母系にサンデーサイレンスの血を引く牝馬に加え、競走成績、繁殖成績ともに、これまで以上に良質な繁殖牝馬が集まってくるのではとの見解も聞かれています。今後はPOGの指名馬においてもハービンジャー産駒は欠かせない存在となっていくことは、希望的観測抜きで間違い無さそうです。