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新女王に脱帽

  • 2004年03月01日(月) 20時00分
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 2月26日川崎「エンプレス杯」は、レマーズガールの完勝だった。好枠からマルダイメグが先手を取り、1000m通過63.6秒、川崎2100m特有のスロー。レマーズは中団の外め、予測よりやや後ろのポジションで、しかしそこでスムーズに折り合いがついている。3コーナー手前、先に動いたグラッブユアハート、ジーナフォンテンが抜け出す中、武豊はひと呼吸待ってGOサインを送った。内グラッブ、中ジーナ、外レマーズ、しかし叩き合いは案外あっけなく決着がついてしまった。「理想的な競馬ができた。着差は開かなかったけど(1馬身)、ほぼイメージ通り勝てました」。自信があるからこそ、終始外々を回っての直線勝負。川崎コース3戦3勝、その相性もさることながら、心身両面で芯が強く、何より完成度がきわめて高い。乾燥した馬場、強風を考慮すると、2分16秒7の時計も合格点(昨年ジーナフォンテン=16秒3)。ホクトベガ級の女傑、男まさりというインパクトは正直ないが、安定性とレースの巧さ…ファストフレンド、プリエミネンスの域にはおそらくここで到達だろう。次走は4月14日、船橋「マリーンC」。さらにパワーを磨けば牡馬路線での台頭も夢ではない。ただ陣営は今後、芝への再挑戦も一つプランがあるようだ。もちろん興味深いが、こうなると話はまた白紙でもある。

 エンプレス杯(サラ4歳上牝馬 別定 統一G2 2100m良)

○(1)レマーズガール   (53・武豊)  2分16秒7
△(2)グラッブユアハート (53・安藤勝) 1
▲(3)ジーナフォンテン  (55・張田)  2.1/2
△(4)ブルーマドンナ   (54・石崎駿) 3/4
△(5)アオバコリン    (54・石崎隆) 2.1/2
………………………………………………………
◎(6)メイプルスプリング (54・左海)
△(9) ホウザングラマー (54・的場文)

 単190円 馬複290円 馬単480円
 3連複360円 3連単1210円

 グラッブユアハートは前走大井TCK女王盃よりパドックから落ち着きがあり、加えて安藤勝己騎手の手綱で終始反応のいい走りだった。現時点ではどう乗ってもレマーズに力負けだが、相手が怪物でない以上、今後の成長しだいで肉薄、逆転の可能性を残している。ジーナフォンテンは、復帰戦の前走(京成盃GM2着)から再びひと息入れ、やはり本調子ではなかっただろう。道中終始カカリ気味。一瞬あわやの3着は、むしろ底力とみていい。期待したメイプルスプリングは、ブルーマドンナ、アオバコリンにも遅れて6着だった。クイーン賞の強烈なパフォーマンス、ここ照準を思わせる叩き2戦目。が、レマーズを徹底マークで進み、勝負どころで置かれた内容からは当時のデキにかなり遠い。改めてデータを見ると、JRA時を含め12~2月[0-0-0-7]。牝馬ながら510キロ台と大柄で、本来冬場はよくないタイプか。自身順調なら季節が変わってもう一度狙ってみたい。ところで不注意なミス。当欄の前号、メイプルスプリングの父を「アフリート」と書いてしまった。「ソヴィエトスター」の誤り。こんな勘違いが記者の場合しばしばある。申しわけありません。

     ☆     ☆     ☆

 3月3日「京浜盃」。個人的にはある意味、1年のうちで最も楽しみなレースだ。明け3歳馬、その時点のオールキャストが、大井外コース1700mに激突する。昭和53年第1回ハツシバオーを皮切りに、ホスピタリティ、サンオーイ、ロジータ、近くはオリオンザサンクス、トーシンブリザード、ナイキアディライト…。26年の歴史で、9頭の羽田盃→東京ダービー、二冠馬(内4頭、東京王冠賞を含む三冠馬)を生んできた。とりわけ京浜盃→羽田盃の連覇は何と17頭、勝率とするとほぼ8割。彼らが古馬になり、全国区でダート界を凌駕するかどうかはむろん個々の成長力だが、少なくともここの勝者は南関東の“春”を制する。生え抜きの連勝馬がそろった04年、かなり古びたファンである記者なども、改めてワクワク、ドキドキ。何やら胸騒ぎを禁じえない。

 京浜盃(サラ3歳 別定 南関東G2 1700m)

◎ビービーバーニング  (53・森下)
○ベルモントストーム  (55・石崎隆)
▲タッチザゴール    (55・的場文)
△トミケンウイナー   (55・左海)
△ドリームデューク   (55・沖野)
△ワタリワンダフル   (55・酒井)
△カネマサデューク   (55・佐藤隆)

 ビービーバーニングは4戦4勝、ことごとく馬まかせのスピードで後続を圧倒した。前走「優駿牝馬」の勝ちっぷり、時計、さらに余裕…印象点はこの時点のロジータをむしろ凌ぐ。前走「2歳優駿牝馬」も、パドックから堂々たる落ち着きで、終わってみれば初コースなどどこ吹く風の強さだった。そして今回、大一番で経験が乏しい甲斐年光騎手から、ベテラン森下騎手へ乗り替わり。厳しい選択だが、ごく普通に考えて万全を期したということだろう。過去京浜盃の勝ち馬には牝馬3頭。コーナンルビー(羽田盃・帝王賞)、ロジータ(三冠馬)、カシワズプリンセス(羽田盃)。どれとも少しタイプが違う。いずれにせよスタートを決めて完全燃焼。父バブルガムフェロー、天才が出て当然の血筋ではある。

 ベルモントストームも前走ニューイヤーCを制し4戦4勝。こちらはデビューから一貫、石崎隆騎手とのコンビが頼もしく、前走ニューイヤーCなどスタート不利をプラスに転換、道中折り合って前を捕える、エリートらしい競馬をただの一戦で教え込んだ。父アジュディケーティングは確かに早熟傾向だが、ストーム自身の雰囲気は不思議なほどおっとりしている。牡馬=牝馬、ここで成長力に差が出れば、むろん逆転のイメージがわく。

 割って入るタッチザゴールは3戦3勝。道中前々を進み最後ねじ伏せるというレースぶりで、前記2頭ともパワーの比較では見劣らない。悲願のダービー制覇を、今年はこの馬に賭ける的場文男。父ジェニュイン、500キロを超す大型馬。仮に負けてもこの時点で肉薄できれば、十分本番へメドが立つ。トミケンウイナーは統一G1全日本3歳優駿4着、続くブルーバードCを圧勝したが、馬体、走法、さらにレースぶりのインパクトで主力より気持ち見劣る。一角崩しがあるとすれば、完成度で上回った際だろう。以下、川崎4戦2勝の良血馬ドリームデューク、上山から転入後快進撃が続くワタリワンダフル。大井向きを思わすカネマサデュークが大穴。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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