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主役確定・ベルモントストーム

  • 2004年03月08日(月) 16時09分
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 3月3日、大井「京浜盃」。ベルモントストームが圧倒的な強さで無傷の5連勝を飾った。大外枠から森下・ビービーバーニングが先手を取り、それを3コーナー、的場文・タッチザゴールが負かしにいく展開。インの4番手でスムーズに折り合わせた石崎隆之の腕はさすがだが、それより何より、直線中ほど、GOサインと同時に繰り出した切れ味が圧巻だった。あっという間の独走で、後続に6馬身差。1700m1分47秒6も、さして軽くない馬場だけに合格点以上がつく。3年前、トーシンブリザードがみせたパフォーマンスとほぼ同格のインパクト。過去京浜盃勝ち馬は、続く羽田盃→東京ダービー、8頭が二冠を達成している。春の主役確定。そう断言していいと思う。

京浜盃(サラ3歳 定量 南関東G2 1700m良)

○(1)ベルモントストーム (55・石崎隆) 1分47秒6
 (2)ステルスライン   (55・桑島)  6
△(3)トミケンウイナー  (55・左海)  首
△(4)カネマサデューク  (55・佐藤隆) 頭
▲(5)タッチザゴール   (55・的場文) 首
………………………………………………………
△(6)ドリームデューク  (55・沖野)
 (8)シルクビート    (55・内田博)
◎(12)ビービーバーニング (53森下)

 単200円 馬複18280円 馬単19740円
 3連複23930円 3連単193630円

 ベルモントストームは、昨秋地元船橋のデビュー戦(JRA認定)を圧勝。以後オープン→特別と無傷で通過、前走浦和ニューイヤーCで重賞初勝利を果たしていた。アジュディケーティング×テンパレートシル。なるほど背景は短距離向きの早熟型だが、馬自身は不思議なほどおっとりしている。大井初登場の今日も、パドックなど堂々とした落ち着きで、しかも踏み込みの深さが印象的。若駒によくみられる、気負いやら無駄な動きやらがいっさいない。古くからの格言、「血統 信ずべし、信ずべからず…」、そのあたりを地でいったタイプになるか。出川克己調教師、「まだ子供だから、ここでどんな競馬をするか楽しみにしています」のコメントが、レース後は「どんな勝ちっぷりになるか、しかし想像以上でした」と、トーンが変わった。出川克己調教師=楠厩務員=石崎隆之騎手、3人のコンビはアブクマポーロと同じ。サラブレッドの能力は、確かにおおむね血統を基本にした天性で決まるだろう。しかし競馬に勝つ、結果を出す決め手は、やはり人間の気配りと情熱、さらに技術と努力がより大きい。改めてそう感じた。

 2着ステルスラインは、出走12頭中12番人気。が、後方をじっくり乗り、末脚勝負に賭けた桑島Jの思惑がズバリ当たった。ゴール前わずか50mほどで重賞の常連を豪快に抜き去っている。父ホリスキー、イメージ通りパワフルな末脚。スピード勝負、時計勝負では分が悪いが、今後の距離延長、鞍上との相性も含め本番で再び大駆けがあって不思議ない。以下、トミケンウイナー、カネマサデューク、タッチザゴールは、小差で続き、今後の成長力、そして展開しだいの評価になるか。ビービーバーニングはスタート一完歩目でつまずき、それが影響したかいつものダッシュ力がみられなかった。1000m通過63.5秒はむしろスローだが、道中リズムが悪かったぶん、並ばれてあえなく失速。結果論ながら牡馬一線級とは初対戦、あくまでチャレンジャーの立場だったということだろう。何ごともなければ、次走は鞍上を甲斐Jに戻して4月6日浦和「桜花賞」と聞いた。むろん牝馬同士なら能力はズバ抜けている。今日の大敗がショックとして残らないかどうかだけ。ともあれ今回京浜盃は、「雌雄を決する対戦」として注目された。しかし、ストーム優勝、バーニング殿り負けと、結果は何とも極端、かつ残酷である。言い換えれば、これが競馬の、勝負ごとの怖さでもある。

     ☆     ☆     ☆

 小牧太、赤木高太郎、両ジョッキーがJRA免許獲得、先週から再スタートを切った。前者は阪神で騎乗し2勝2着1回、後者は中京で1勝2着3回なら順風満帆。しかしいざ彼らの心底晴れやかな表情、初々しいコメントに触れると、正直地方競馬フリークとしては、眩しいような寂しいような、少し複雑な気分にもさせられる。頑張ってほしい、実績を重ねてほしい、むろんそれは素直に思う。が同時に、兵庫(NAR)→JRA、誰もが認める一流が、さまざま面倒な試練をくぐり抜け、その結果“地方免許”を喪失してしまったという事実もある。毎日乗りたい、毎日レースに臨みたい、そんなトップJがなぜ全国免許を持てないのか。

 前々号、大井・内田博騎手の談話(02年11月・地方競馬騎手たちの逆襲=洋泉社刊)を少し転記させていただいた。付け加える。「安藤(勝)さんは移籍ですか。うん、JRAに行ってもやっぱり地元を大事にしてもらいたいです。たとえば小牧くんや岩田くんがJRAの免許を取っても、地元で乗ってほしいです。JRAに乗った次の日は休んでもいいから、その次の日は園田で乗るとか、あるいは重賞だけは絶対乗るとか。JRAで全国区になれば、地元で乗るときはお客さんが見に来てくれるじゃないですか。売り上げだってだいぶ違うはずです。そうして何年かたったら、(園田でも)新しいスターが生まれるでしょう」。

 新潟、益田、そして足利、上山。それなりに歴史を重ねた地方競馬場がいともあっけなく閉鎖され、しかしその裏側で、南関東には続々と腕達者が流入している。鳴り物入りの御神本騎手は落馬の後遺症でまだ休養中だが、すでに重賞勝ちを果たした酒井忍(新潟→川崎)、山田信大(新潟→船橋)、今年再デビューながら早くも10勝をあげ浦和リーディングJを走る加藤和博…。さらに今週月曜日からの浦和競馬(8~12日)では、関本秀幸(上山)、秋元耕成(益田→上山)、吉田晃浩(上山)の3名が新天地でステッキをふるう。今、南関東はひと昔前と比べものにならないほどレースが熱い。わかる人にはわかる、正直個人的にはそう思う。だがしかし、最終的にはやはり「全国免許」だろう。北海道所属、それも外厩制度で鍛えられたコスモバルクが皐月賞の最有力馬になる時代だ。馬にも人にも、理不尽な壁は流れに逆行というしかない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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