◆ネックとなっている中央・地方の馬主資格
先週のことになるが、2月10日に行われた佐賀記念は、2走前に準オープンを勝ったばかりのマイネルクロップが重賞初制覇となった。昨年12月19日付の本コラム「交流重賞出走馬の選定で進歩」で触れたが、今回の佐賀記念の出走馬のうち、マイネルクロップと4着のリキサンステルスは、新たな出走馬決定方法で、上位3頭以外の通算収得賞金が加算されない枠での出走となったと思われる。従来の出走馬決定方法であれば、オープン勝ちもある補欠2位のトウショウフリーク、補欠3位のマイネルバイカが上記2頭の代わりに選出されていたと思われ(最終的に実際に出走意志があったかどうかは別だが)、そういう意味では、若い馬やキャリアが浅くとも近走で結果を残してきた馬にチャンスを与えるという、新たなシステムが機能したといえる。
地方競馬で行われるJpnII、JpnIIIでは、今後も「昔の名前で出ています」的な馬よりも、いよいよ重賞を狙おうかという上がり馬の活躍する場面が増えてくることだろう。
その反面、やはり困ることになるのが、「昔の名前で…」的な馬の行き場だ。
芝に比べてダート競馬は脚元への負担が軽く、近年では特にそれを理由にダートグレードに目を向ける中央の調教師が増えている。今回の佐賀記念でも、通算賞金が加算されての上位3頭枠で選定されたのは、8歳のソリタリーキング、9歳のダノンカモン、ランフォルセという高齢馬だ。これらの馬たちもJpnII/JpnIIIの新たな選定方法のもとでは、いずれ除外対象になる可能性が高い。それでも無事に走れるのであれば、ぜひとも積極的に検討してほしいのが、地方への移籍だ。こうした馬が地方に移籍してくれば、ダートグレード競走での馬券的な妙味も増すことになる。
しかしそこでひとつネックとなっているのが、中央・地方の馬主資格だ。中央・地方間での交流が進んだとはいえ、馬主の資格審査はまったく別物。中央・地方双方で資格を持っている馬主なら問題はないが、中央の資格しか持っていない馬主が所有馬を地方へ移籍させようと思えば、いくつもの役所から書類を取り寄せてという煩雑な手順が必要だ。しかも申請してから許可が出るまで、タイミングが悪いと2カ月以上かかることもある。
地方の馬主が中央に申請する場合なら、収入面などの審査基準が厳しくなるので、あらためての申請になるのはわかるが、それらのハードルが低くなる(と思われる)中央の馬主が地方へ申請する場合には、その手続を簡略化すべきではないか。提出する書類などはほとんど同じものであるにもかかわらず、再度の提出が必要というのが現状だ。
その手続をめんどくさがって地方の馬主申請をしてくれない、というような話を、地方の調教師の何人かから聞いたことがある。
JRA-IPATでも地方競馬の馬券が買えるようになり、これまで中央の馬券しか買わなかったというファンにとって、地方競馬への参加はかなりハードルが低くなった。地方競馬では、それで確実に馬券の売上げも上がった。
たとえば中央のオープン馬が地方に移籍するなどすれば、そうしたファンにとってもさらに馬券は買いやすくなるはず。適材適所への馬の移籍を活性化させるためにも、中央→地方という馬主申請の簡略化は検討されていいのではないか。