音無師が「芝でも!!」と思わせたブチコのある変化/吉田竜作マル秘週報
◆音無調教師「実は牧場でオーナー(金子真人氏)とこの馬を見たときに“芝の走りを見たいですね”と話していたんだよね」
次週から、いよいよクラシックのトライアルが始まる。ダノンプラチナ、ショウナンアデラ、ルージュバックなど、今年は関東馬優勢のままクラシック突入となるのか、それとも関西馬の巻き返しがあるのか。それはトライアルの結果待ちとなるが、ある意味、冒頭で挙げた馬たち以上に注目を集める関西馬が、桜花賞トライアル・GIIIチューリップ賞(3月7日=阪神芝外1600メートル)にエントリーする。白毛馬ブチコだ。
トレセン内ではケータイで写真を撮ることのなかった某専門紙記者Mが「初めて写真に撮っておこうと思ったよ」と言うくらい、このダルメシアンにも似たサラブレッドには、これまでの競馬のファン層とはまた違う新たな層を取り込む可能性を秘めている。それにひと役買っているのが担当の橋本助手で、パドックを引く際にはメンコからコスチュームまで“ブチ模様”で統一する徹底ぶり。そうした努力のかい(?)あって、その姿はツイッターなどで広く拡散され、人気を博している。
とまあ、ある意味“イロモノ”扱いされているブチコだが、実力もかなりのもの。今回は“サラブレッド”としてのブチコを、管理する音無調教師に語ってもらった。
「実は牧場でオーナー(金子真人氏)とこの馬を見たときに“芝の走りを見たいですね”と話していたんだよね。それでデビューから芝のマイルにこだわった。2走目で2着に来た時も稽古では動いていなかったから、やっぱり芝の方がいいんだと思ったくらい。ただ3走目の後に、これ以上モタモタしてられないし、まずは一つ目を勝たないとってなって、ダートを使ったんだ」
初ダートとなったデビュー4走目は、まさに圧倒的な走りだった。抑え切れない手応えで直線に向いたブチコは、そのままの勢いでホームストレッチを独走。ラスト2ハロンを11秒7-11秒9と芝並みのスピードで駆け抜けたのだ。当然のように、続く牡馬相手の500万下も楽勝。トライアルへの出走を確実にする2勝目を挙げた。
ダート重賞3勝のユキチャンが半姉という血統背景と、芝→ダートで激変したパフォーマンス。誰の目にも「ダート界の新星誕生」と映ったことだろう。もちろん、音無師もダート適性の高さは否定しない。実際、「桜花賞に出られなければ、諦めて関東オークスを目指す」と“保険”もかけているくらいだ。しかし、クラシックに色気を感じていないわけではない。
「確かに芝では勝っていないが、差のないレースはしているんだ。使い出しのころは攻めも動かなかったが、今は動くようになってきた。みんなは“ダートが合っていたから”と言うが、自分の目には“稽古の動きが違ってきたから”と映っている。デビュー当初と比べて力をつけているのは確かだし、可能性がないわけではない」と、音無師はファイティングポーズを崩さない。
チューリップ賞で牝馬クラシック戦線の勢力図を塗り替える走りを見せるのか、それとも砂の女王への道を歩むことになるのか。新たなアイドルホース・ブチコの走りは見逃せない。