「安田キュウ舎」「紅梅S勝ち」の先輩レッドオーヴァルより上!?/吉田竜作マル秘週報
◆安田調教師「まだ能力だけで走っている感じはしますが、2走目でレースぶりは確実に良くなりました」
GIIIチューリップ賞(7日=阪神芝外1600メートル)といえば、例年は桜花賞の最重要トライアルとなるのだが、今年は若干、趣が異なる。
2歳女王決定戦の阪神JFを勝つなりした、その世代の“最強牝馬”との呼び声が高い馬が強さや順調さをアピールするレースのはずが…。今年は2歳女王ショウナンアデラも、きさらぎ賞で牡馬を一蹴したルージュバックもいない。いわば、東の2頭への「挑戦権」をかけた戦いとなりそうなのだ。
久しぶりに劣勢の西の牝馬勢だが、栗東に通う記者の思い入れを冷静に差し引いても、十分に“足りる”と思っている馬が実はいる。2戦無敗のコンテッサトゥーレだ。
デビュー戦は数字でこそ表しにくいが、3〜4コーナーにかけて「ワープ」したかのようなスピードでポジションを上げ、2馬身半差で快勝。続く紅梅Sではラッフォルツァート(現オープン)に苦しめられたが、最後の最後でねじ伏せ、賞金ラインで桜花賞への出走をほぼ確定させるとともに、関西の代表クラスへと名乗りを上げた。
「安田キュウ舎」「紅梅S勝ち」で真っ先に思い浮かぶのは、一昨年の勝ち馬レッドオーヴァル。桜花賞でのクビ差2着はもちろん、その後の短距離重賞での活躍を見ても、当時から相当なポテンシャルを秘めていたのは間違いないところ。しかし、この当時のレッドオーヴァルはカイバ食いが細く、馬体の維持という自分との闘いを強いられていたし、陣営も取材に対してナーバスな一面を見せていた。が、このコンテッサトゥーレにはそうした雰囲気がまるでない。
「馬体は休む前に比べて増えていると思います。レッドオーヴァルはカイバを食べなくて苦労したが、こちらにはそうした不安がない。ゲート練習も併せて行っており、良化が見てとれますね。まだ能力だけで走っている感じはしますが、2走目でレースぶりは確実に良くなりましたから」と安田調教師の表情からは自然と笑みがこぼれる。
トレーナーを心強くしているのは「やはり血統なんでしょうか」。そう、“血の裏付け”だ。母エアトゥーレは国内重賞(GII阪神牝馬S)を勝っただけでなく、仏GIモーリスドゲスト賞でも2着に入るなど、タフな一面も見せていた。繁殖牝馬としても優秀でアルティマトゥーレ(GIIセントウルS、GIIIシルクロードS勝ち)、キャプテントゥーレ(皐月賞など重賞4勝)、クランモンタナ(GIII新潟記念2着)を送り出すなど、もはや「名繁殖牝馬」の域に達している。
「東の2横綱」に欠ける要素があるとすれば、この国内の芝における血統的な実績の積み重ね。今回のチューリップ賞の走りいかんでは肉薄、いや一気に逆転の可能性まであるのでは…。とにかくコンテッサトゥーレには、さらに進化した姿を見せてほしい。
おっと、皐月賞の最重要トライアル・GII弥生賞(8日=中山芝内2000メートル)にも触れておかないと。ここはGIIIシンザン記念を制したグァンチャーレに注目している。
「攻めは最初から抜群だった」と北出調教師が言うように、身体能力の高さはデビュー前からうかがわせていた。ただネックだったのが激しい気性。「牝馬みたいなところがある。難しい方に行ってしまうのかな」と指揮官も心配していた時期があったそうだが、走る馬はどこかで変わる。北出師はそれをこの馬を通じて実感したようだ。
「馬っ気を出したりして幼いところばかり目立っていた馬が、一戦ごとに競馬場での落ち着きが変わってきた。今でも栗東ではヤンチャなところもあるが、前走なんかは落ち着いていたし、それに伴ってゲートの出も良くなった。走る馬っていうのは、こうやって変わっていくんだねえ」
空駆ける天馬のようなグァンチャーレの坂路の走りに魅了された記者からすれば、シンザン記念の時も競馬での走りは“稽古の半分”くらいだと思っている。弥生賞で真の姿を披露できれば、牡馬クラシックの勢力図は大きく塗り替えられることになるかもしれない。