母コスモベルの願いは届くかラッフォルツァート/吉田竜作マル秘週報
◆受検する馬が減ってきている産地馬体検査
東西両トレセンの事務所ではすでに「第1回産地馬体検査」の受け付けが始まっている。POGファンにとっては「待ってました」といったところか。本紙別冊の「ザッツPOG」(5月中旬発売予定)をはじめとするPOGの関連書籍は、産地馬体検査で撮影された大量の2歳馬の写真を中心に作成されており、写真と血統を見合わせることでドラフト用のリスト作り、指名順位の参考にされているPOGファンも多いことだろう。
ところが、この産地馬体検査に今、ある変化が起きている。若手の某調教師が「ウチは1頭だけですね」と言えば、中堅の某調教師も「今年は2頭だけ」といった感じ。これまでなら社台RH、サンデーRなどのクラブ所属馬が産地馬体検査を早々に受け、それが会員へのアピールというか、サービスになっていた側面もあったのだが…。
産地馬体検査は本来、夏の北海道開催で新馬戦に使いたい馬を、東西トレセンで検疫を受けることなく、函館、札幌両競馬場に直接入キュウさせることを可能にするための手続きだった。ところが、現在は北海道の各競馬場でも検疫を受けることが可能になり、直接入キュウの選択肢も多様なものに。
さらには6月の阪神、東京で函館よりも早く、2歳新馬戦が開催されるようにもなった。将来を嘱望されるような素材の場合は「小回りの北海道よりもGIが行われる競馬場で」となるのは必然。実際、3回阪神、東京開催デビューからはアヴェンチュラ(11年秋華賞)、レッドリヴェール(13年阪神JF)、イスラボニータ(14年皐月賞)といったGI馬が誕生している。
要は産地馬体検査を受ける必要性が薄れてきたわけだが、これに追い打ちをかけているのが預託頭数制限の問題。「馬房の3倍」という時代なら、4、5月に大量の2歳馬を預託する余裕もあったが、現在はこれが大きく制限されて「馬房の2.5倍」に。3歳未勝利戦が同時進行している時期でもあり、なかには「3歳世代でも、まだ登録すらしていない馬もいる」(前出の若手調教師)キュウ舎すらある。こうした状況では「まだ3歳馬が残っているし、未勝利戦があるうちはチャレンジを続けたい。そんな時期にデビューまで間がある2歳馬で預託枠を一気には埋められない」(某調教師)のも当然だろう。
もちろん、その一方で「産地馬体検査で2歳馬を登録するから、今いる現役馬を何とかしないと」(某調教師)と考えるキュウ舎もある。しかし、この手のキュウ舎は今や少数派になってきた印象。時代の流れとともに、そろそろ産地馬体検査の存在意義を考え直す時期にきているのかもしれない。
◆西園調教師「乗りやすくてレースが上手な馬。ここでもいいレースになると思います」
ちょっと話題を先取りし過ぎた感もあるので、最後に今週の話題を。桜花賞TRのGIIフィリーズレビュー出走予定馬で個人的に“肩入れ”しているのがラッフォルツァート。長年、西園キュウ舎担当で、お母さんのコスモベルの現役時代の走りも見ていただけに、思い入れがどうしても強くなってしまうのだ。コスモベルもオープンまで出世を果たした活躍馬だったが、クラシックには無縁。対してこの孝行娘は今まさに、そのチケット(3着までに優先出走権)に手が届くところまできている。
「体が増えていたので1週前追い切りはしっかりやった。乗りやすくてレースが上手な馬。ここでもいいレースになると思います」と西園調教師。
子を持つ親なら、誰しもいつかは「自分を乗り越えていってほしい」と願うもの。今の充実ぶりなら、北海道にいる母コスモベルの願いも成就するのではないだろうか。