覚悟を見せてくれたエアロヴェロシティとザカリー・パートン騎手
GI高松宮記念を終えて
つねに覚悟を問われる日々を送っているのに、気がついていない。現実とはそんなもののようだ。ところが、大事に臨んでいざというとき、うろたえずあわてず、日頃抱いている覚悟を示して決然と事に立ち向かっているかといえば、お互いなかなか至難なことと言わざるを得ない。日々の営みのひとつひとつでその覚悟のほどが問われ、無事に日送りができているのにだ。やはり、大事であるというところに難しさが秘んでいる。事が大きいほど、日頃の心がけをしっかり胸に、覚悟はよいかと自分に問わなければならない。
その覚悟はとてつもない力を生むことを、高松宮記念で、香港のエアロヴェロシティとザカリー・パートン騎手は見せてくれた。中京の左回りコース、雨が降りボコボコに掘れた荒れた馬場、初めて経験する馬場状態でどう走らせるかパートン騎手は考えた。デビュー戦以来の左回りの克服は、慣れない左手前で走るコーナー部分はインコースをロスなく走らせ、直線は馬場のいい外に出す。最後はミッキーアイルと馬体を併せて加速、得意の右手前に替えてぐいとひと伸びし、先に抜け出していたハクサンムーンをかわし、ゴールを駆け抜けていた。未知な部分をどう乗り越えるか、しっかり覚悟を決めて臨んだところところに勝因があった。前を行く2頭のあいだを抜け出して行く姿に、人馬のガッツあふれる力を感じ、圧倒される思いだった。大事に臨んでいざというとき、うろたえずあわてず、こうと決めた覚悟を持って挑むことが至難なことと思うだけに、見事達成する姿に快感を覚えるとともに、大きな力をもらうことができたのではないか。覚悟はよいか、つねに問われていることを互いに覚悟したいもの。
競馬では、ファンの期待を一身に集めて戦うこともある。ここで負けるわけにはいかない。そんなケースにのぞむ人気馬の戦い方も大事に入る。かつて、ダービー卿CTに臨んだところサクラバクシンオー、さすがGIウィナーの底力と華のある勝ち方を見せてくれた。桜吹雪が舞う中、完璧な舞台でスターがイメージ通りの完璧な走りを見せてくれた、そんなシーンにも心奪われる。