今週末の大阪杯は、キズナをはじめ、6頭のGI馬が出走する超豪華GIIとなった。左前脚の球節に微熱が確認されたイスラボニータが回避しなければ7頭のGI馬による競演になっていたわけで、そうなると急きょGIに格上げしてもいいほどのスーパーキャストだ。
――ん、同じようなことを書いた覚えがあるぞ。
何度も同じことを言う「歩く再放送劇場」の私も、さすがに今回は、自分の原稿にむずかゆいような既視感を覚えた。
最近は便利な世の中になり、パソコンの「プログラムとファイルの検索」のところにキーワードを入れると、過去にその単語を用いた原稿がずらっと出てくる。「格上げ」と入れてエンターキーを押すと、30ほどの文書が出てきた。フェブラリーステークスや札幌記念がタイトルになっているものは、レースが本当に格上げされたことについて何か書いたのだろう。
あった。やはり、大阪杯だった。それも去年の。
勝ったキズナ、3着のエピファネイア、7着のメイショウマンボ、8着のビートブラックと、出走馬8頭のうち4頭がGI馬だったあのときも、「特例でGIに格上げしてもいいんじゃないか、と言いたくなるほどの豪華メンバーが揃った」と、同じようなことを書いていた。
もともと大阪杯というのは、過去20年の1〜3着馬のなかにGI馬(大阪杯後にGIを勝った馬も含む)がいなかった年は2000年の一度だけという「スーパーGII」だ。
勝ち馬にはオルフェーヴル、ダイワスカーレット、メイショウサムソン、ネオユニヴァース、エアグルーヴ、メジロマックイーン、トウカイテイオー、スーパークリークといった歴代の名馬が名を連ねている。
――大阪杯っていい馬が集まるよなー。今年もすげえ豪華メンバーだよなー。
と普通に喜びたいという気持ちがある一方で、ちょっと待てよ、とも思う。
せっかくこれだけの強豪が集まったのなら、1着賞金6500万円を狙うGIIではなく、1億円以上を狙うGIにしたほうが、レースそのものもファンの気持ちも熱くなるのではないか。
そもそも、なぜ、GIIにこれほどの好メンバーが集まってしまうのか。
GIIだから調整の意味もこめて気楽に使える、とここを選ぶ陣営もいるだろうが、大阪杯が同じ阪神芝2000mのGIだったとしても、やはりこのくらいのメンバーが集まるのではないか。
考えてみれば、1週前にはドバイワールドカップ諸競走があり、このところ途切れなく複数の出走馬を送り込んでいる日本の競馬界にとっては、「3月の終わりにいろいろな距離のGIがある」という感覚になっている。
今年は、ドバイワールドカップにホッコータルマエとエピファネイア、ドバイシーマクラシックにワンアンドオンリーとハープスター、そしてUAEダービーにはゴールデンバローズら3頭の3歳馬が参戦した。
去年はドバイデューティフリー(今年からドバイターフ)に、ジャスタウェイとロゴタイプ、トウケイヘイローが出走し、ジャスタウェイが圧勝した。
そしてまた今年の話に戻るが、リアルインパクト、トゥザワールド、トーセンスターダム、ワールドエースといったマイルや中距離の強豪が、オーストラリアに遠征してGIで好走している。
こんな時代であるから、海外のレースでも、何らかの手段でライブかそれに近い状態で映像を見ることができる。サッカー日本代表のアウェーでの国際試合といった感覚で楽しめばいいのかもしれないが、なんか、もったいないという気もしてしまう。
というのは、ここに記した馬たちは、ドバイワールドカップに出た2頭以外は、世界制覇を目指して――というより、適鞍を求めた結果、海外で走ることになった、という感じがするからだ。
国内に、格や賞金面も含めた適鞍があれば、そちらを選ぶ馬も出てくるはずだ。せっかくなら、よく知っている馬の素晴らしい走りを、気軽に行ける国内で見たい、と思ってしまう。
とはいえ、あまりGIを増やしすぎるとひとつひとつの価値が下がったように受けとられかねないし、近い将来、海外のレースに日本馬が出たら馬券を買えるようになるわけだから、こんなことをブツブツ言うべきではないのかもしれない。
ここは素直に、「GII」に、「超豪華」や「スーパー」だけではなく、「ウルトラ」「スペシャル」など、いろいろつけたくなる今年の大阪杯を楽しみたいと思う。