▲サトノクラウンの手綱をとるルメール騎手、勝利への手応えを語る
本番と同じ舞台の弥生賞で、完璧に近い走りで後続を封じ、皐月賞の最有力候補として名乗りを挙げたのが関東馬のサトノクラウンだ。「課題が見当たらない、完成度が高い」と騎乗した騎手に言わしめる同馬だが、デビュー時からこれまでのレースを辿り、同馬の強さの秘密、そして皐月賞に向けての課題など、堀宣行調教師をはじめとする陣営のコメントをもとに、王者たるにふさわしい馬かどうかを探っていく。(取材・文・写真:佐々木祥恵)
皐月賞に向けて修正すべき1つの課題
全姉にイギリスのGI馬ライトニングパールがいる良血馬・サトノクラウン。その血統もあって入厩時から注目を集めていた同馬のデビュー戦は、東京競馬場の芝1800mだった。
その時手綱を取った福永祐一騎手の「乗りやすくて掛からない。将来性豊か」という言葉通りの完璧に近いレース振りを披露したサトノクラウンは、2戦目に名馬の登竜門も呼ばれる東スポ杯2歳Sに駒を進める。
だが、ここで同馬は若さを見せた。ゲートで3度立ち上がり、その姿に場内はどよめいた。しかし、スタートをしてしまえば、騎手の指示に従い、優等生のレースで、あっさりと重賞を制覇してみせた。
「牧場にいる時は我が強いタイプで、なかなか言うことをきかない場面もありましたので、そのあたりを注意しながらやってきました」と、皐月賞の共同記者会見で堀調教師は語っていたが、ゲートで待たされた時に、その我の強い面を出してしまったのかもしれない。
しかし、サトノクラウンの強みは、学習能力の高さにある。
「素直なお利口さんというタイプではなくて、自分を持ってはいるのですが、とても学習能力が高くて、騎乗者の指示に耳を傾けてくれます」(堀調教師)
ゲートに関しても練習を積んだことで、課せられた調教再審査も無事クリアすることができた。
ゲートという課題を1つ乗り越えたサトノクラウン陣営が、皐月賞前に選んだのが弥生賞だった。1週前の追い切りに美浦に駆け付け騎乗した福永騎手も「ゲート練習も大人しかったです。完成度が高く注文がつかない馬ですね」と、同馬の学習能力の高さを評価していた。
実際レースでも、スタートを決めると、鞍上がイメージした通りのポジションでレースを進め、直線では危なげなく抜け出して、無傷の3連勝で弥生賞を制した。ここでも完成度の高さ、操作性の良さを福永騎手はコメントしていたが、堀調教師は皐月賞に向けて、修正すべき課題を1つ見つけていた。