▲大好評の展望座談会も最終回!天皇賞の結論とその先のGIまでたっぷり展望します
前回の天皇賞座談会(前半)ではゴールドシップ、キズナ、フェノーメノの実績馬3頭をじっくり分析。3頭それぞれに厳しい面もあるというジャッジでした。京都3200mという特殊な条件。ここでこそ買いたいのはどの馬か!? さらに、NHKマイルC&ヴィクトリアMの展望もしていただきます!
(出演メンバー:栗東から竹村浩行記者、安里真一記者、美浦から加藤剛史記者、澤田裕貴記者、司会:赤見千尋)
(前回のつづき)日経賞で脚を余した馬が狙い目!?
赤見 前哨戦の中では日経賞が大事ということなんですね。
竹村 評価できる前哨戦だったと思いますよ。特に今年はびっくりするぐらいの時計だった。歴代1位だもんね。勝ったアドマイヤデウスは、大外をマクって押し切ったわけだから、あれは強かったなぁ。
加藤 強かったですね。重賞2連勝は素直に評価したいです。
赤見 ここに来て、いよいよ完成形という感じでしょうか?
竹村 去年のダービーから今年の年明けまで休養していたけど、復帰していきなり日経新春杯勝って、この日経賞でも結果を出したからね。完成と言うより、もともとの資質が相当高かったんだなっていうことでしょうね。
安里 この馬はもともと、「古馬なってから」って言われててね。3歳の春に皐月賞やダービーにも出てたけど、完成するのはまだまだ先だって言ってたのが、年明けすぐに結果を出した。むしろ早いぐらいでしょう。
澤田 しかも、前走でもようやく60点のデキだって言われてますし、「距離はいくら伸びてもOK」と岩田ジョッキーも太鼓判。なら、天皇賞も期待しますよね。
加藤 人気になると思いますよ。3歳の時から馬体の雰囲気はかなり目立っていたんですよ。中身が伴って成長した今なら、GIでもやれるのではないでしょうか。
赤見 では、本命はアドマイヤデウス?
加藤 いや、アドマイヤデウスももちろん買いたいんですけど、ここは相手にして、本命はウインバリアシオンにします。
▲2014年の日経賞優勝時
赤見 ウインバリアシオン!! GIを勝って欲しいと思っているファンはたくさんいるでしょうね。
加藤 そうでしょうね。僕は、今の4歳5歳世代はレベル低いと思っているんです。今回フェノーメノは買えないので、強いオルフェーヴル世代のウインバリアシオンが悲願のGI獲りへと。というのも、今回の天皇賞はラストインパクト、ラブリーデイ、カレンミロティック、デニムアンドルビーとか、「なぜこの距離を使うの?」と思わせる面々が多数なんです。そういう中で加速する脚が速くて持久力もあり、なおかつ経験が豊富っていうのは強みですね。
安里 ウインバリアシオンはもともと脚元に不安があるから、どうしても状態を維持するのが精一杯かなっていう気はするんだけど、今回は馬の状態がいいって言ってたもんね。
竹村 やっぱりこの馬にはタイトルを獲ってほしいよなぁ。今回、立ち回りひとつであるんじゃないかなと思うけどね。前走が馬込みで我慢させるっていう、ちょっとイメージとは違う乗り方だったじゃない?
加藤 そうですね。道中から外に出して欲しかった。
竹村 本当にロスなく回っていたけどトップスピードに乗るまでに時間がかかるから、馬群から抜け出そうとすると一瞬、切れ負けするよね。盛り返して2着するあたりは力があるんだけども。同じ日経賞組だと、サウンズオブアースも脚を余してたんだよね。勝負どころで包まれて、追い出しが遅れた。この2頭とアドマイヤデウスも含めた3頭が上位候補。あとは、パンパンの良馬場ならデニムアンドルビーも考えるかな。
赤見 牝馬ながら、ジャパンCでハナ差の2着に来た実力馬ですもんね。
竹村 そう。結構侮れないと思うんですよ。前走の阪神大賞典は、3000mでタフな馬場で、あの強気な競馬。すごいなと思ったな。牝馬だし重たい馬場はしんどいと思ってたし、実際に以前は伸び負けしてたから、ここにきてさらに力をつけているんじゃないですかね。京都の3200mでも、馬場が軽かったらパフォーマンスはもっと上がるんじゃないかな。
赤見 デニムも要注意ということですね。安里さんは? ちょっと悩まれている感じですが?
安里 ん〜、僕もね、サウンズオブアースにしようかなって思ってて。日経賞は4着だったけど、スタートがもうひとつでポジションがよくなかったし、休み明けで反応も悪かった。もともと器用さには欠けるから中山も合わなかったね。厩舎担当(藤岡健一厩舎)なので、調教に乗ってる(藤岡)佑介に話を聞くんだけど、去年の秋よりめちゃめちゃよくなってるって。これまでいた厩舎の馬の中でもこの馬はズバ抜けてるって。さらにね、日経賞当週の追い切りに乗ったデムーロジョッキーも、「これ本当にまだGI勝ってないの?」って言ったらしいからね。
赤見 それはすごい。
安里 「この馬、絶対GI勝つよ!」って言ってて「それかいっ」みたいな結果だったけど(苦笑)、やっぱり能力は感じたみたいね。だから買いたいんだけども……。
赤見 何か気になることがあるんですか?
安里 デムーロジョッキーって、この馬に何度か乗ってるんだけど、出遅れることがちょくちょくある。相性なのかもしれないけどね。そこがちょっとひっかかって、自信の本命かって言われると迷うところ。実績馬の中ならキズナかなって言いましたけど、キズナかサウンズオブアースか、ギリギリのところまで考えたいと思います。(※M.デムーロ騎手の騎乗停止により、内田博幸騎手に乗り替わりになりました)
赤見 ここまでオール関西馬。澤田さん! 何か美浦の秘密兵器をお願いします!
澤田 僕がですか(笑)? まあでも、過去10年で関東馬が4勝してるんです。関西馬と互角に争えるGI戦だと思いますよ。僕は、フェイムゲームを本命にします。
▲前走のダイヤモンドS優勝時
加藤 本当に!? フェイムゲームって、東京コースしか合わない馬で、あとはどこに行っても走らない。よっぽど東京の流れが合うのかなって思うけど?
澤田 たしかに、東京の長いところが得意ではあるので、右回りでは久しく勝ってないんですけど、長距離戦ならテンには行けないけど早めに動いて長く脚を使えますからね。京都の馬場がどうかはありますが、着実に力はつけていて、去年の6着以上を期待できると思います。相手がアドマイヤデウスと、フェノーメノですね。(※4/29にフェノーメノの回避が発表されました)
赤見 ちょっと穴っぽい馬が挙がりました。他におさえておくといい推奨馬はいますか?
加藤 スズカデヴィアスはいいと思いますよ。阪神大賞典(8着)では、前半の入りが速くなったことでの失速。敗因ははっきりしています。マイペースにいければ確実に走りそうだと思います。
安里 僕はラブリーデイかな。もともと阪神大賞典を使う前から、「今の阪神の馬場は合わない」って言ってて。中山金杯でレコード勝ちしたぐらいだし、絶対に京都のパンパンの馬場の方が合うから今回はどうかなって思ったけど、それで6着にきたからね。負けたけど、ここは仕方ないっていうところでもあった。ただ、加藤君も言ってたように、本質的には距離が長いのかな? まあでも、阪神大賞典と天皇賞をセットで早くからルメールに頼んでたくらいだし、陣営の意気込みは強いよね。
スタートセンスが全然違う!
赤見 続いては気が早いんですが、NHKマイルCとヴィクトリアMまで伺ってもいいでしょうか?
竹村 だいぶ先まで行きますね〜(笑)。
加藤 NHKマイルCは、1点で取れますよ! アルビアーノとダノンプラチナの1点でいい。(※ダノンプラチナは春全休になりました)
安里 アルビアーノって、フラワーCを勝ったやつ? 馬場を生かして逃げ切れた?
▲3戦無敗のアルビアーノ、写真はフラワーC優勝時
澤田 いやいや、馬場を生かしてじゃないと思いますよ。しぶしぶ逃げて、それでも勝てちゃったみたいな感じですよ。
竹村 たしかに、まだまだ余裕があったもんな。あれを見たらNHKマイルでも買いたい。
澤田 ええ。3戦逃げ切りと絶対的なスピードが違う。木村調教師が「調教の感じから逃げなくても競馬はできる」と言っているくらいですし、控える形になっても問題ない。予定通り4月23日に帰厩して、ここまで順調そのものです!
加藤 本当は逃げたくないんですよ。でも、スタートセンスが全然違うから。おそらく桜花賞に出ていたらラクに逃げ切っていたことでしょう。
赤見 それほどセンスがあるという?
加藤 ええ。とにかくスタートセンス、競馬センスが抜群。逃げてさらに速い脚を使える、ダイワスカーレットのようなタイプだと思います。追い切りでも加速する脚がとにかく速い。いまや“美浦一”ウッドで動く馬じゃないでしょうか。
赤見 ここまで3戦無敗、柴山騎手とのコンビでがんばっていますね。ダノンプラチナは、皐月賞の座談会の時に「中山2000mでは厳しい、マイラーではないかという」評価でしたが?
加藤 やっぱり皐月賞は残念でしたけど、適性ある舞台なら世代トップクラスですよ。きゃしゃでタフな中山向きという印象はまるでしないですからね。あとは桜花賞、皐月賞路線からの転戦組を3番手に。
安里 僕もダノンプラチナは買いたい。勝ち気な気性だけど、うまく我慢が利いたときの爆発力はいかにもディープ産駒という感じ。東京のマイル戦でズドン! って来そうなイメージ。この路線で新興勢力も出ていないからね。
赤見 トライアルのニュージランドT組はいかがですか? ヤマカツエース、グランシルク、アルマワイオリが上位3頭です。
【
ニュージーランドT 着順】
▲前哨戦のニュージーランドT、勝ったのはヤマカツエース
加藤 最近、本質はマイラーでも資質の高い馬はクラシックを目指す傾向にあります。なのでどうしてもニュージランドTにローテーションがかみ合わず、レースのレベルが低くなっている印象があります。今年のメンバーならアルマワイオリが勝たなくてはいけない組み合わせだと思っていたのですが…。
安里 アルマワイオリも強い馬なんだけど、折り合いにちょっと課題があるから、いつもこの乗り方しかできない。そこが弱点ではある。結局は自分で競馬を作れないから展開に注文は付くけど、直線の長い東京でどんな脚を見せるのか楽しみはあるよね。
竹村 ニュージーランドT組なら僕もアルマワイオリと、ネオルミエールかな。どちらも負けたけど、出負けや折り合いを欠いての結果。うまくかみ合えば本番でもそんなに差はないと思うよ。
赤見 ファルコンS組はどうですか? タガノアザガルとアクティブミノルの追い比べで、見応えあるレースでした。
▲「ファルコンSの評価は? 2頭の叩き合いは見応えありました」
安里 この2頭は、ここは厳しいでしょう。これも結局は馬場に恵まれたから。
竹村 そうそう。内しかこない馬場だったもんね。
安里 ここの上位3頭って、全部内のいいところを通って来てる馬ばっかりだから。このレースだったら、4着だったフミノムーンはいいんじゃない? 芝丈の長い外から早めに追い上げて中身の濃い内容だった。さすがに最後は止まったけど、もっと溜めて行けばはじけそうだよね。マーガレットSは順当勝ちだったし、時計の速い決着もデビュー戦で対応できているから。
竹村 うん。フミノムーンは僕もおさえるかも。あとは良化次第でミュゼスルタン。2連勝した内容が良かったし、スプリングSでは上がってくるときの脚に見所があったもんね。デキが上向いてのマイル戦なら侮れない。
安里 ダノンメジャーあたりも気になる。2歳9月の競馬を持ち出すのは微妙ではあるけど、少頭数でスローの瞬発力勝負となった野路菊Sが最後方から直線一気。あの脚はすごかった。最近は成績がパッとしないけど、あの決め手はワンターンのマイル戦でこそでしょ。人気もなさそうで穴ならコレじゃない。
澤田 橘Sの結果次第ですけど、ナイトフォックスも注目です。前走は前2頭がバテて脱落したために、抜け出すのが早くなりながらも4着。中1週でも全くダメージがないし、橘Sの勝ちっぷりが良ければ相手に入れたいですね。
最適条件で念願のGI制覇なるか
赤見 最後にヴィクトリアMです。ここは、ヌーヴォレコルトで決まり!?
澤田 関東馬ですし(笑)、僕はヌーヴォレコルトにします。
竹村 うん。僕も本命候補はヌーヴォだな。久々のマイルとはいえ自在性があるから、府中なら難なくこなせそうだし。とりあえず地力は最上位だと!
加藤 そうですね。前走の中山記念では、確実にパワーアップした姿で牡馬を一蹴。体形的にはマイルの距離でこそだと思いますね。ただ、今回はもっと買いたい馬がいます。
赤見 えっ?! それは??
加藤 ディアデラマドレでしょう。
▲重馬場の愛知杯を勝利、重賞3勝目を挙げた
安里 マイラーズCの結果次第ではあるけど、府中のマイルは条件的にぴったりではあるね。
加藤 そうですよ。去年の府中牝馬Sの走りが秀逸でしたよね。やっぱり、コーナー2つで末脚を生かせる舞台設定は、この馬に最も適していると思います。
竹村 愛知杯も強かったしね。「これで届くんか?」と思うぐらい後ろにいたけど、終わってみれば最後で抑える余裕があったほど。府中のマイルならさらに持ち味が生きそう。
赤見 エリザベス女王杯3着。もう1歩でGIに手が届きそうな感じですもんね。
安里 去年のエリ女も結局は内を通った馬が有利な馬場。この馬自身、最後で同じ脚色になった辺りは2200mも微妙に長かったかも。まあここは、ヌーヴォとディアデラのどちらかを本命にするかな。あとは一瞬の脚があるスマートレイアー(阪神牝馬S4着)あたりかな。
竹村 レッドリヴェールなんかもおもしろいんじゃない? 阪神牝馬S(6着)は大幅な馬体増で、馬はかなり良くなってたからね。勝負所で置かれたあたり、まだ闘争心が戻ってない感じはしたんだけど、勢いがついてからの伸びは抜群。マイルまでなら狙い目はあると思う。
赤見 阪神牝馬Sはキーになるレースですかね?
【
阪神牝馬S 着順】
竹村 うーん、脚質の差、馬場差があったことを考えると、本番では着順がガラッと変わる可能性はある思います。カフェブリリアント、ベルルミエールの上位2頭は展開が向いたし、内回り1400mに適したスピードの持続力を持ってましたからね。府中のマイルで相手もグンと強くなる今回は厳しいのでは。逆に負けたウリウリ(3着)、スマートレイアーの方が見直す材料があったレースですね。あと、別路線組ではストレイトガールでしょう。高松宮記念(13着)は大外枠がこたえましたから。
加藤 注目だったハープスターが出てくればね、また違ったんでしょうけど(※4月21日、疲れが見られることから春全休と発表)。待ち望んだマイル戦への出走のはずでしたからね。まともな状態なら圧勝できるところですけど、2度の海外遠征と敗戦を続けている精神的なダメージ。さらに気持ちの面で課題のあるファルブラヴの血を引くだけに、余計に気になるところですね。あれだけの馬ですし、今後の動向を見守りたいです。
赤見 今回の座談会では、注目のGIをじっくり分析・解説していただいて、とても興味深かったです。安里さんからもリクエストがありましたし、ぜひ次回の開催をわたしも期待しています。みなさん、ありがとうございました。(了)
▲馬サブローのトラックマン、左から澤田記者、加藤記者、竹村記者、安里記者