関東地方、桜(ソメイヨシノ)の開花宣言が出たのは確か3月18日だった。しかしその後周期的な冷え込みなどもあり、実際の満開は先週半ば過ぎにずれ込んだ。妙な言い方になるが、記者などはこの状況がかえって嬉しい。
4月6日、浦和「桜花賞」。おそらくそこまで花が保つ。阪神・仁川の駅からアーケードをくぐるJRA桜花賞はなるほど華やかで素晴らしいが、南浦和駅から御嶽公園、葉根木公園を経てたどりつく浦和桜花賞も、また捨てたものではないのである。少しうらぶれた感じ。しかしそのぶん健気でいじらしい。毎年戦い済んで帰り道、はらはらと舞い落ちる花吹雪をバックにレースを回想し、勝ち馬の今後に想いをはせる。鮮やかに咲きあっけらかんと散る花か。あるいはどっしりと根を張る生命力に満ちた樹か。例えば平成元年、ロジータの力強い勝ちっぷりは、今振り返っても、「花」より「幹」のおもむきがあった。
桜花賞(6日浦和 サラ3歳牝馬 南関東G1 1600m)
◎ビービーバーニング (54・甲斐)
○ブルーロバリー (54・今野)
▲アイチャンルック (54・内田博)
△カネマサヴィーナス (54・左海)
△ラヴリーズン (54・金子)
△クラマサライデン (54・森下)
△グロウス (54・的場文)
ゴールドファミリー (54・山田信)
タキノオーロラ (54・佐藤隆)
ビービーバーニングは、南関東3歳牝馬の枠を超え、名牝の期待がかかる馬だ。デビュー4連勝。ローレル賞、東京2歳優駿牝馬、それぞれ後続を5、6馬身ちぎって独走、しかもフィニッシュに余裕があった。前走京浜盃、あろうことか殿り負けだが、自身9キロ増と太めに加え、大外枠、スタートのつまずき、力関係以前に精神面の狂いが大きいだろう。サンデー系でもむしろ渋いムードがあったバブルガムフェローの仔。逃げ一本ヤリの早熟型とは思えない。いずれにせよポンと出てスピードに乗ってしまえば性能が違うはず。ここでリズム修正なら、東京プリンセス賞→関東オークス、統一Gの後者でもJRA勢を自信たっぷりに迎え撃てる。必要以上にテンションが上がっていないか、パドックの気配重視。乗り慣れた甲斐Jに戻るのも今回はプラスとみたい。
ブルーロバリーは昨暮れ優駿牝馬をバーニングの2着、明けて前走桃花賞をきっちり勝ってここに臨む。ステップとしてはまず完璧。相手との力関係を把握している今野騎手が、おそらく大事に乗るだろう。カコイーシーズ×ジェイドロバリーの自在型。バーニング圧勝とみれば連対最有力でいいだろう。
アイチャンルックは前走ユングフラウ賞7着だが、当時致命的な出遅れがあり、それでも向正面の行き脚にさすがの能力を感じさせた。例年の傾向からはこのタイプが本番で一変する。ジェネラス×トウショウボーイの血統背景にも大きな期待感が浮かぶ。以下、時計がかかる競馬でカネマサヴィーナス、クラマサライデンに差せる強み。素質でラヴリーズン、キャリアでグロウス。ユングフラウ賞ワンツーのゴールドファミリー、タキノオーロラは単調な先行型で、バーニング自滅が前提になりそうだ。
☆ ☆ ☆
マイルグランプリ出走予定馬(8日大井 サラ4歳上 南関東G1 1600m)
◎コアレスハンター (57・内田博)
○ブラウンシャトレー (57・張田)
▲トーシンブリザード (57・山田信)
△ナイキゲルマン (57・的場文)
△クールアイバー (57・桑島)
△ナイスキングオー (57・早田)
コアレスハンターは、今季も古馬チャンピオンロードで息の長い活躍が期待できる。昨シーズン後半、南部杯、JBCクラシック、そして東京大賞典と統一G1、2、3、2着。見方によっては03地方グランプリホースともいえるだろう。今回本来ベストの1マイル、しかも全馬57キロの別定戦。力関係からはまず死角が浮かばない。昨年このレース、1番人気で3着だが、当時はまだ逃げにこだわる状況。差しが板についた今は心身両面で馬が違う。
ブラウンシャトレーの前走東京シティ盃は鮮やかのひとことだった。道中インの4番手からGOサインとともに一気の差し。不器用でジリ脚、どこか勝ちきれないイメージを一気に返上している。7歳馬ながら船橋転厩で再び開花。こうなればナグルスキー×ゲイメセン、晩成血統もやはり説得力を持つだろう。元より距離はオールマイティーにこなせるタイプ。再度内枠が引ければコアレス逆転の目もある。
能力的に▲以下には落とせないトーシンブリザードだが、シティ盃、直線いったんブラウンに並びかけ、結局突き放された内容からはまだ半信半疑。加えて石崎隆Jが3月31日川崎で落馬負傷、今回乗れないというマイナスもある。4歳馬ナイキゲルマンは前走金盃2着をここへどうつなげるか。53→57の増量は現時点で軽くもない。無欲で直線に賭けるクールアイバー、逆に腹をくくって逃げるナイスキングオー。ほぼ順当な決着とみたい。
蛇足だが、大井競馬場の桜といえば、東京モノレール口を入り、そこからスタンドへの並木が見事だ。4月7日トゥィンクル開幕。たぶんまだ花は残る。週間予報では大きな天気の崩れもないらしい。「競馬、ときどき夜桜…」というのも、案外悪くない気がする。