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欧州における古馬マイルG1路線幕開けとなるロッキンジS展望

  • 2015年05月13日(水) 12時00分


ハビタットやブリガディアジェラード、フランケルらの名が過去の勝ち馬に並ぶ格式ある一戦

 今週も世界各国でビッグカードが目白押しだが、このコラムでは16日に英国のニューバリー競馬場で行われるG1ロッキンジS(芝8F)を取り上げたい。

 欧州における古馬マイルG1路線の幕開けとなる一戦で、古くはハビタット(69年)やブリガディアジェラード(72年)、近年ではフランケル(12年)らの名が過去の勝ち馬に並ぶ、格式ある一戦である。

 そして今年も、今季のこの路線を担っていくことが予想される有力どころの多くが顔をそろえ、水準の高い争いが見られそうなのだ。

 5日前登録が終わった段階でブックメーカー各社が3.75倍前後のオッズで1番人気に推すのが、英国におけるこの路線の代表格と目されるナイトオヴサンダー(牡4、父ドゥバウィ)である。昨年のG1英二千ギニー(芝8F)で、その後この路線のG1を4連勝し欧州年度代表馬に選出されたキングマンに土をつけ、クラシックホースとなった馬である。それもあの幅員の広いロウリーマイルで、ゴール寸前に内埒沿いから外埒沿いまで、オルフェーヴルも真っ青の「欽ちゃん走り」を披露しての勝利で、潜在能力の高さを見せつけている。

 キングマンとは対照的に、その後はシーズン末まで4連敗を喫したが、3歳最終戦となったG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)でチャームスピリットの2着になった競馬の内容は悪くなかった。

 ここが今季初戦となるが、昨季の英リーディングトレーナー、リチャード・ハノンの仕上げにぬかりはないはずである。

 ブックメーカー各社が5〜5.5倍のオッズで2番人気に推すのが、仏国におけるこの路線の主役カラコンティ(牡4、父バーンスタイン)だ。3歳時、春にフランス版2000ギニーのG1プールデッセデプーラン(芝1600m)に加えて、秋には北米に遠征してG1BCマイル(芝8F)を制覇した同馬は、多くの方が既にご存知置きのように、母の父がサンデーサイレンスという日本産のサラブレッドである。

 仏国の名門馬産家ニアルコスファミリーが、母ミエスクという良血馬で、仏国で重賞入着実績のあった牝馬ムーンイズアップを日本へ送り、サンデーサイレンスを交配されて生まれたのが、カラコンティの母サンイズアップで、そのサンイズアップがアメリカでバーンスタインを受胎し、その後に来日したサンイズアップが新冠で産んだ父バーンスタインの仔がカラコンティである。

 2歳10月に制しているG1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)をあわせて、既に3つのG1を制している同馬は、ナイトオヴサンダーと遜色ない能力の持ち主である。

 この馬もここが今季初戦となるが、昨年はシーズン緒戦のG3フォンテンブロー賞(芝1600m)で1番人気を裏切り2着に敗れており、ひょっとすると稽古だけでは仕上がらないタイプなのかもしれない。だが、日本産馬の価値を高めるためにも、今季は緒戦からエンジンを全開にして欲しいものである。

 各社6倍前後とカラコンティと差のないオッズで3番人気に推されているのが、この路線における牝馬の代表格というべきインテグラル(牝5、父ダラカニ)だ。

 チーヴァリーパークによるオーナーブリーディングホースで、大御所マイケル・スタウトが管理する同馬。初戦が3歳の5月31日という遅いデビューで、3歳クラシックとは縁がなかったが、4戦目にG3アタランタS(芝8F)を制して重賞初制覇を果たすと、次走はG1サンチャリオットS(芝8F)に挑み2着と、秘めた才能の一端を披露。4歳2戦目となったロイヤルアスコットのデュークオヴケンブリッジS(芝8F)で2度目の重賞制覇を果たすと、続くG1ファルマスS(芝8F)で待望のG1初制覇。初めてアウェイの戦いに挑んだG1ロスチャイルド賞(芝1600m)では3着に敗れたが、地元のG1サンチャリットS(芝8F)では前年のリベンジを果たして2度目のG1制覇。ただし、初めて牡馬に挑んだ昨年10月のG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)では、泥んこ馬場に持ち味を殺され、7着と大敗を喫している。

 一見すると天才肌のようにも見えるが、実績を見ると一歩ずつ着実に階段を上がってきた馬で、牡馬との対戦も2度目となるここは、馬場が極端に悪くならない限り、そこそこの勝負はするだろう。

 この他、昨秋のG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)3着馬トゥアモア(牡4、父アラカン)、昨年のこのレースの2着馬タリウス(セン7、父ルヴィーデコロリ)、今季初戦となった前走G2サンダウンマイル(芝8F)を快勝し、重賞3連勝を飾った昨年後半の上げ潮ムードが今季も継続していることを証明したカスタムカット(セン6、ノットナウケイト)など、脇を固める役者たちの顔触れも豪華だ。

 更に、新興勢力として穴党が注目しているのが、ムーハーリブ(牡4、父オアシスドリーム)である。

 タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセールにて23万ギニーで購買された同馬は、祖母がG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)勝ち馬ダララで、叔母に牡馬を破ったG1シーマクラシック(芝2400m)を含めてG1・3勝のダーレミ、叔父にG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)などG1・2勝のリワイルディング、同じく叔父にG1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)勝ち馬リヴァーダンサーらがいるという、超良血馬である。

 ところが、3歳時は血統的な良さが成績に結びつかず、ハンディキャップクラスをウロウロしていたが、ひと冬越してようやく実が入ったか、今季2戦目となった前走アスコットのLRパラダイスS(芝8F)を、後方から差し切る鮮やかな競馬で快勝している。

 ここはいきなりのG1挑戦だけに、全く歯が立たない可能性もあるが、良血馬が上昇し始めると頂点まで突き抜けることも少なくないだけに、12日現在でブックメーカー各社が16〜20倍というオッズを掲げているこのレースを、「馬券を買うならここ」と見ているファンもいるようだ。

 今季の欧州マイル路線がどのように動くか、重要な指針となりそうなロッキンジSに、皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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