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松田大作騎手(4)『アレさえなければ、ジョッキーは最高の仕事』

  • 2015年05月25日(月) 12時00分
おじゃ馬します!

▲今週が最終回、「今は競馬が楽しい」と語る松田騎手が唯一苦戦していることとは?


松田騎手のインタビュー最終回の今週は、JRA重賞の前に勝利したマカオ重賞の舞台裏を伺います。念願の重賞勝利を海外で決めた松田騎手。その率直な思いとは。また「今は競馬が楽しい」と語る松田騎手が、唯一苦戦していることとは。ストレートな本音がバシバシ飛び出します。(取材:赤見千尋)


マンガとか柔軟体操でしのいでいます


赤見 もうすぐ騎手生活が節目の20年になりますね。

松田 そう考えると、長いですよね。思い返せば「よくやってこれたな」って思います。「自分はどの辺で辞めていくんだろうか…」、みたいなことを考えたこともありましたし。

赤見 この世界、続けたくても続けられない方もたくさんいますもんね。

松田 ジョッキーって、需要がなければ成り立たないものですからね。競馬に乗せてもらえなければ、収入がなくなってしまう。そういう世界ですから。

赤見 そういう中で、どうやってご自身をアピールしてきたんですか?

松田 うーん、それこそ昔は、そういうことをしっかり考えられていなかったんだと思いますよね。最近は考えられるようになったというか、昔より断然馬のこと、競馬のことが好きになりました。

赤見 ちょっと話がさかのぼりますが、2013年にマカオでGIIを勝たれました。初重賞制覇を海外重賞で飾ったわけですが、この時のことを振り返っていただけますか。

松田 あれは、招待レースだったんです。それまで海外は自分で手配して行っていたので、「招待されるって、こういう感じなんだな」というのを味わいました。

赤見 そんなに違うものですか?

松田 違いますよ。普通なら移動など全部自分1人なんですね。招待だとJRAの職員さんがずっとついていてくれるんですよ。「こんなに至れり尽くせりなんだ」ってわくわくして、ついつい甘えてしまいました。騎乗馬をくじ引きで決める抽選会みたいなものがあって、そういうのも日本とは雰囲気が違って楽しかったですね。

赤見 マカオの競馬場ってきれいですよね。

松田 競馬場自体はまあ、きれいというか汚くはないっていう感じですかね。やっぱり日本の競馬場はすごすぎるので。

赤見 確かに。最初にきれいな方を知っていると…。

松田 比べるところがすごいですからね。僕らはスタートからすごい施設でやってきているので、そういう面では、どこに行ってもすごいなとはあまり感じないです。

むしろ僕らが海外で勉強するべきことはそこではなくて、馬に対してかなと思いますね。マカオって大都会の中に競馬場がある感じなんです。「本当にここに馬がいるの?」っていうくらい。でも、あの環境は馬がかわいそうに思いました。ずっと競馬場にいて、放牧できる施設がないんですよね。

赤見 行ってみて初めて知ることがあるんですね。

松田 でも、本当にいい経験をさせてもらえました。招待レースで勝たせてもらえたというのもすごく大きかったですし。それが初重賞だっていうのは、正直ピンとこなかったですけどね。あの時も、喜びを分かち合える人が少なくて。いつもさみしい思いをしてます(苦笑)。

赤見 うれしいけど、あんまり表現できないなあって。

松田 そうですね。抽選でいい馬が当たったのもラッキーでしたし、本当に認められた感じの重賞ではなかったので、「自分の初重賞がここかぁ…」という気持ちもありましたけど、だからこそ次は日本で重賞を勝ちたいって、より思いましたね。

赤見 本当にいろいろなご経験をされていますね。

松田 そうですね。いいこともありましたし、しなくてもいいような経験もしてるので嫌なところもあるんですけど。でも、こうしてJRAの重賞を勝たせてもらえましたし、ここからが勝負だと思っています。こういう時にこそ自分がしっかりしていないといけないですね。今までの経験上、浮き足立つといいことはないので。僕はすぐ浮き足立っちゃうんです(苦笑)。

赤見 でも、いいことがあると、ウキウキしますよね。

松田 そのウキウキを、変な方向に持っていかないことですかね(笑)。今は馬に乗るのが楽しいです。週末ももちろん楽しいですし、トレセンに行くのも楽しい。ただひとつ、減量だけが嫌ですね。

赤見 背が高いですもんね。

松田 ジョッキーの中では大きい方なんですよね。しかも骨太で。毎週サウナとかランニングで落としてるんですけど。

赤見 サウナって、どれぐらい入っていられますか?

松田 だいたい1時間ぐらいですかね。もちろん、水風呂と行ったり来たりしますけどね。サウナ1時間って、結構心折れますね。

おじゃ馬します!

▲赤見「サウナにどれぐらい入っていられますか?」松田「だいたい1時間、結構心折れますね」


赤見 時間を忘れないといられないですよね。その間何をされてるんですか?

松田 その時によって違います。週中のただの汗取りの時はマンガ読んでますね。そうしないと、イライラして堪えられないんですよ。レース前だと柔軟体操をしたりとか。

赤見 サウナで柔軟って、余計汗かきますね。そうやって毎週毎週大変な思いをされながら。

松田 大変と言うより、面倒くさい感じですかね(苦笑)。だいたいいつも2、3キロ落とすんですけど、減量だけは本当に早く止めたい。これさえなかったら、ジョッキーってどんなにいい仕事かって思いますもん。

赤見 一度体重制限で失敗すると、結構ずるずるいってしまう方もいますけど、そこは毎週ビシッと調整されていて。

松田 仕事ですからそれはやらないといけないんですけど、わりと僕も、何十年間もずるずるきてますよ。だから毎週毎週辛い。普段、食欲を我慢できないんですよ。すぐお腹がすくんです。さっき食べたのにもうお腹すいたって。

赤見 なんか可愛らしいです(笑)。もうすぐ20年。長いスパンで見た目標というのはありますか?

松田 騎手としては長く乗っていたいと思いますし、自分の人生として考えると、おじいちゃんになっても今と同じような生活をしていたいんですよね。友だちとワイワイやったり、楽しく過ごしていたい。そういうことができるような状況に自分を置いておきたいです。

赤見 仲間とワイワイするのがお好きなんですか?

松田 好きですね。友だちとお酒を飲んでる時は楽しいです。でも、家にいても楽しいですね。どんな時でも楽しみたいと思っています。ただ僕、鉄砲玉なんですよね(笑)。

赤見 鉄砲玉??

松田 1回バーンと出ちゃうと、なかなか戻れないんですよね。自分を止められないんです。飲むとついつい楽しくなりすぎて、我を忘れちゃうんですよね。

赤見 松田騎手って、競馬場の検量前とかでお見かけした時は、ちょっと怖そうだなっていう印象だったんですけど、こうやってお会いすると印象が全然変わりました。

松田 怖いですかね。僕ね、たまに怖がられるんです。しゃべりかけにくいとか言われたり。そんなつもりは全然ないんですけどね。さすがにレースの前は、話しかけにくいオーラを出してますけど、それ以外はどんどん話しかけてほしい。

おじゃ馬します!

▲松田「怖いですかね。僕ね、たまに怖がられるんです」


赤見 実は、女性の競馬記者さんの中で松田騎手人気が高いんですよ。だけど、ご本人に言ったら怒られるんじゃないかって、みんな言えないみたいで。そういう隠れファンがいっぱいいます。

松田 そうなんですか!? それは知らなかったです。そういううれしいことはどんどん聞きたいじゃないですか(笑)。ぜひこれからは、表ファンでお願いします!

(了)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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