いよいよ今週は競馬の祭典・日本ダービー。舞台は東京芝2400m。わたしたちは、この東京競馬場のことを、どこまで知っているでしょうか。とくに「馬場」。重要なファクターながら、「知っているつもり」になっていませんか? 馬場に関する著書を出版した小島友実と、netkeiba.comでもお馴染み亀谷敬正が、馬券にも役立つ? 「馬場のしゃべり場」トークを繰り広げます!※本稿は「馬ラエティBOX」特別版としてお送りしております。
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小島 今回は「馬場のしゃべり場」ということで、馬場についていろいろ話していきたいと思います。馬券検討に欠かせない馬場。でも、意外と知らないことってたくさんありますよね。ということで、きょうは基本的なことからマニアックなことまで、馬場のことについて語り尽くして行きたいと思います。私のお相手をしてくださるのは『血統ビーム』でおなじみの亀谷敬正さんです。よろしくお願いします。
亀谷 どうも。これ
『馬場のすべて教えます』という本なんですけど。
小島 (笑)念願の本を出させて頂きました。
亀谷 実は、今回の企画はnetkeiba.comの長井さんと一緒に飲んでいて、『馬場のすべて教えます』という本を小島さんが出したんだけど、これをもう少しnetkeibaで語ったりしたら面白いんじゃないの。ってノリで始まったんです。
小島 ありがたいです。
馬場造園課が常に心がける馬場造りのモットーとは
小島 馬場土木課、造園課の一番の目的というのは、
安全で公正な馬場造りなんですね。よく速い時計が出ると批判が出たりしますけど、馬場造園課の人達は速いタイムが出る馬場を造ろうとは全く思っていない。
亀谷 安全で公正な馬場を造ることしか考えてないんですよね。
小島 ええ。そんな馬場造りを追求する中で、近年、傷みにくい芝も研究されてきていて、馬場整備の技術も上がってきている。
だから、芝が傷みにくくなって馬が走りやすくなっている。結果的に、速い時計が出るというのもやっぱりあるんですよね。
亀谷 小島さんは、馬場造園課の日々の仕事を10年以上取材されています。netkeibaの原稿とかでも、いつも馬場のことで気になることがあったら、実は小島さんに相談していますよね、いろいろ。
小島 よく電話がかかってきますよね。
亀谷 ええ。2年前の夏に、新潟の芝がちょっとおかしい。というか、今までと傾向がガラッと変わったので、どうしてかなって小島さんに聞いたら、(開幕前に)バーチドレンによるエアレーション作業をし始めていたということを教えてもらった。
事実を聞くと、データとつながるというか。だからレースの傾向を見ていて、馬場で不思議に思うことは、小島さんに聞いて納得することが多いんです。
小島 本当ですか? ありがたいです。
亀谷 「馬場のすべて教えます」を読めば、すごくわかるから。これを読むとJRAの陰謀とかがないことも良く分かる。
小島 ないですよ。
亀谷 非常にためになると思うのでね。やっぱり知らないことがあると、人は「陰謀だ」とか思いこんじゃったりするんでしょうね。
小島 (この本に)基本的な事は書かせていただきましたし、あとは
最近、JRAの馬場造りがいろいろ変わってきているんですね。
軟らかい馬場造りを目指しているし、あと
エクイターフという芝が2006年頃から使われ始めて。
亀谷 あ、ギャラリーの皆さんエクイターフって知っていますか? ……1人? 2人? 嘘でしょう? ああ。サクラのバイトで来ているから(笑)、もしかして競馬に興味ないのかな。じゃあ競馬に興味のある人は?
(全員挙手)
小島 みなさん、競馬に興味がある人達です(笑)
亀谷 競馬には興味があるのにも関わらず、エクイターフをご存じの方は(6人中)2名?
小島 では今日は、しっかり勉強して帰ってくださいね。
「シャタリングマシン」効果で東京競馬場の芝は軟らかくなってきている
亀谷 早速ですが。2回東京開催を見ていると、
今までの東京芝とは様子が違うなという印象があります。
小島 確かに今年の2回開催は速い時計も出るんですけど、去年(2014年)ほど速くはないですよね。
ヴィクトリアマイルのあの時計はちょっと置いておいてください。あれはレアケース。
例年なら2回開催の開幕週は逃げ先行が結構残りますよね。ですが、今年は開幕週から中団からの差しが決まっているんです。
逃げ馬は2、3着には残るけど、勝ち切るケースが少ない。
そこで、先週東京競馬場の馬場造園課の二村課長に、お話をうかがったんですよ。
傾向が昨年とは違うけど、作業としては去年と変わった事をしたのかどうか?
答えとしては、東京競馬場は元々、開幕直前のエアレーション作業、バーチドレン作業をしてないから、それは今回もしてないし、馬場の硬度も去年と殆ど同じということでした。
ただし! ここからがポイントです。
東京競馬場では、
2009年の夏からこの
「シャタリングマシン」というものを使用しています。これは馬場を軟らかくする機械なんですよ。このナタみたいな刃が見えます?
▼2009年の夏から東京競馬場で導入された「シャタリングマシン」
亀谷 これは本に出ていましたね。何ページでしたっけ?
小島 P5ですね。カラーで載っています(笑)
亀谷 シャタリングマシン!小島 これは
硬くなった芝の路盤を揺さぶりほぐす機械。で、これが馬場の上を走っている様子なんですけど、走ることによって、この刃が芝の路盤の中を回転しながら、切り裂くわけです。そうすると、馬場が
軟らかくなるという機械なんですね。
亀谷 これを2009年から使ってるんですか?
小島 2009年の夏の芝の張り替えの時から入れています。実際に(東京競馬場は)2009年頃から比べると馬場の硬度が低くなって、
軟らかくなってきているそうなんです。
亀谷 じゃあ、今年の作業で急に馬場が変わったわけではなく、今までの(作業の積み重ね)?
小島 ええ。2009年から
6年の間で蓄積されたこのシャタリングマシンの効果がやっと現れてきたのではないかと、私は思います。
亀谷 なるほど。
小島 去年と硬度自体は変わらないけど、数字以上に
シャタリングマシンの効果が現れてきているということだと思うんです。
実はこれ、
京都も同じ傾向が出ています。
京都は2011年の夏からシャタリングマシンを使っていて、昨年も入っているので、
4年連続、シャタリングマシンが入っています。
実は
去年の秋の京都の開幕週は、例年よりも
差しがきていたんです。
京都の(馬場造園課の)森本課長にうかがったところによると、京都も段々馬場硬度が低くなってきていて、去年の菊花賞の翌日に
馬場硬度を測ったとの事なんですが、この数年の中では
一番低い数値だったとの事なんです。やっぱり
京都も段々、
馬場が軟らかくなってきている。
今でも京都は基本的に逃げ先行が有利な馬場ではあるんですが、昔ほど逃げ先行有利ではなくて、差しも決まるようになってきている。今年の春の京都開催も去年ほど時計は速くない。去年(の3回京都開催)はレコードタイムが結構出ましたよね。ですが、今年の3回京都開催はレコードが出ていないですから。
去年ほどは速くないんです。