この1ヶ月半で大きく成長
桜花賞とオークスは、大きく距離が異なるので、同じ角度からの視点には一線を画す場合もあるが、牡馬の春の2冠はほぼ同じ距離区分。したがって、皐月賞のゴール直後、「日本ダービーでは(も)、あの馬を買いなさい」とささやいてきた自分の声を大切にするのが最強の馬券作戦。
自分の素直な感覚が思い出せなかったり、あるいは、それに従って連続して日本ダービーが外れるようだと、抱える問題は大きい。打開策も、治療薬もない危険がある。
皐月賞では3番人気にとどまったが、今回は文句なしの1番人気になる
ドゥラメンテ(父キングカメハメハ)は、皐月賞の直後、多くの人びとが、「いやはや、あんなレース運びで圧勝してしまうとは…。日本ダービーもほぼ決まりだな」と、自分にいい聞かせたに違いない。最初から控えて進み、4コーナー手前でインからぶっ飛んで外まで進路を変えると、勝ったと見えた
リアルスティールを瞬時に1馬身半も差し切ったのである。
最後の2ハロンのレースラップは「11秒4-11秒6」。4コーナーでは少なくとも先頭から6-7馬身はあったから、上がり34秒5で抜け出したリアルスティールは少しもバテていないのに、ドゥラメンテの最後は推定「11秒1-11秒1」に近い。それで上がり3ハロンは33秒9の計算になるが、感覚とすればもっと爆発した印象さえあった。勝ち時計は史上2位の1分58秒2。レース全体バランスは「59秒2-59秒0」であり、はまったもなにもない。ただ、ただ圧勝というしかない。
当然、あっけに取られたが、皐月賞で期待したリアルスティールが凡走したわけではない。負けはしたが見事な内容である。日本ダービーも合わせて展望しつつ本命にし、よほどでなければ本命は変えないと宣言した手前(あまりにも変更の失敗が多いので)、リアルスティールを誉めることにする。ドゥラメンテは気性の激しい一族から誕生した天才型。日本ダービーも皐月賞と同じように爆発するとは限らない、という小さな理由をつけて。
まだ身体全体が緩いような印象がありながら、バランスの良さと、レースセンスで皐月賞を2着したリアルスティールは、この1ヶ月半で大きく成長した。身体に芯が入った気がする。追い出してのストライドがふわふわしなくなった。お利口さんすぎる正直な内容で皐月賞は2着でも、日本ダービーで同じようなレースを展開するとは限らない。控えて進めば、もっと切れる可能性がある。
もとより、折り合い自在のレース巧者。中団に控える手がある。ドゥラメンテほど爆発はしないが、速い脚はおそらく長続きする。メリハリをつけて、流れしだいではロングスパートに出てもいい。ドゥラメンテは、度胸あふれるデムーロ騎手だから、好位追走とかには出ないだろう。福永祐一騎手が皐月賞で完敗したドゥラメンテのことなど忘れて、リアルスティールのダービーに徹するとき、幸運を味方にできそうに思える。
まだみんなが若いダービーとは、そういうレースなのである。