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元乗馬選手のコラム 〜ウマと人の歴史4〜

  • 2014年06月24日(火) 02時03分
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 6000年程前、ついにエクウス(以下、ウマ)も人類の家畜として飼いならされる事になった。その起源となる地は現在のカザフスタンとウクライナに跨った地域、或いはモンゴルとも言われるが今ひとつ判然としない。この2つの地域で、別々の民族がそれぞれ我々を家畜化したという説もある。

 当初、人間が我々に求めていたのは、食肉を提供する事だった。カザフスタン・ウクライナに進出し定住を営んだ人々は、南の温暖な地域からウシやヒツジを連れてきていたが、冷涼で乾燥した地域がそれらの家畜に合わず、飼育が上手くいかなかった。そこで、肉付きこそ悪いが、この地域に適合し生活している我々ウマを家畜とする事を決めたようだった。
 ウクライナにあるこの頃の遺跡からは、我々の骨は食事のゴミと一緒に出土する。つまりこの事により、我々と人間の関わりは食べる・食べられるの関係だったと考えられている。遺跡の年代が下っていくと、出土する獣骨の割合の内、ウマの占める割合がどんどん上がっていく。これは、我々が人類に家畜化されて、豊富な量の肉を人類に提供していた事を推測する根拠になる。
 
 ところで、6000年前のウクライナにあるデレイフカという遺跡から、奇妙なウマの骨が見つかった事がある。頭骨と四肢が丁寧に並べられており、食事のゴミとしてではなく、単一的な状況で出土した。このウマは恐らく、埋葬されたものと考えられた。
このウマの周囲に、鹿の骨で造られたハミ留めの様なものが出土しており、かつ大臼歯に摩耗の痕跡が認められた。
 「これはハミをかけられていたウマではないか。だとすれば、6000年前に、ウマの背中に乗る『騎乗』の技術が確立していた事になる」と騒がれた。21世紀に入るまで、この学説はまことしやかに囁かれていたが、その後の調査でウマの頭骨の年代を調べた所、6000年前よりずっと新しい、3000年程前のものだった事が分かった。つまり、6000年前の遺跡のある地に3000年前に埋葬されたウマの骨だったのだ。
 このため、同説を唱えた学者も自らの見解を撤回・修正する事になった。現在、6000年前に「騎乗」の技術が存在した事を示す証拠は見つかっていない。

つづく

アラシ
アラシ
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元馬術の選手です。ネットケイバでは主に競走馬掲示板にて活動しています。2016.11.11記諸般の事情により、当面はブログで活動いたします。追い切り所見・レース回顧を中心に、内容そ...

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