▲食事中のインペリアルマーチと宇田川厩務員。食べることに集中していて顔はほとんど上げず(笑)
3年半ぶりの待望の勝利
キョウエイマーチの最後の仔としても知れるインペリアルマーチ。中央5勝の実績で、昨年秋から船橋の名門・出川克己厩舎へ移籍しました。
南関東転厩初戦となったマイルグランプリ(大井1600m)は、休み明けや久しぶりに4回のコーナーを回る競馬で11着に惨敗してしまいましたが、続く韓国馬たちとの交流レース・準重賞インタラクションカップ(大井1200m)では、3コーナーでごちゃつく不利がありながらも5着。
(次の)カペラS(JRA)は意外にも初の中山競馬場でのレースで14着に敗れてしまいましたが、最後まであきらめずにしっかり走り切り、内容的には決して悪いものではありませんでした。
その後、放牧休養をはさんで挑んだ5月26日のけやき賞(浦和1400m)は、過去最高体重の582キロでした。重賞ウイナーのファイヤープリンスや常に堅実な走りを見せるケンブリッジナイスが人気を集める中、インペリアルマーチは3番人気。
道中は3番手内目を追走していき、3〜4コーナーで抜群の手応えで外に持ち出すと、最後の直線では前を行く馬を並ぶ間もなく抜き去っての勝利。約半年の休み明けや急仕上げ、浦和の小回りにどう対応するかなど、さまざまな課題があったもののこの圧倒的な強さ。地力の高さというものをまざまざと見せつけてくれました。
▲お馴染みキョウエイマーチ一族の横断幕
▲この日はキョウエイマーチのぬいぐるみも飾られていました
▲3年半ぶりに先頭でゴールイン。待ちに待った瞬間は余裕たっぷりの内容でした
「まだ重めだったしこの後もっとよくなるのかなぁと思っていたんですが、強かったですね。道中は楽に走ってくれて、もう3コーナーで勝っちゃうんじゃないかなっていうくらいの手応えで、ステッキは1発も入れていません」とコンビを組んだ本田正重騎手。
インペリアルマーチにとって2011年11月の銀嶺S(JRA)を優勝して以来、3年半ぶりの待望の勝利!!! レース後、厩舎関係者はもちろんキャロットクラブの会員さんなど、インペリアルマーチを囲んでたくさんの笑顔があふれていました。
レース後も疲れはなく、「エサ食いのいい馬なのでどんな時でもペロリと平らげてくれます」と担当の宇田川孝彰厩務員。
宇田川厩務員も見た目は若く見えますが(笑)、これまでリガメエントキセキや中央からやって来たザッハーマイン、スターシップなどで重賞15勝している方です。
オープン馬たちの共通点を改めて聞いてみると、
「マーチもそうですが、無駄なことをしない馬が多いですね。あえて言えば、(マーチは)朝の調教時にむくちを着けて馬房から出そうとするときに、俺の顔を見て『何か(食べ物を)くれ〜』って首を動かして訴えてくるので、なかなかむくちを着けさせてくれません(笑)。
でも、着けちゃえばおとなしいですね。8歳ですが仕草や目つきは元気だし、だからといって手のかからない馬なので安心してやらせて頂いています。ただ、本気になったときのパワーはすごいものがありますね」(宇田川厩務員)
以前ご紹介した南関東最年長馬11歳のコアレスピューマは、馬っけがあって気持ちが若いことはお伝えしましたが、インペリアルマーチもしかり。
「どの女馬にも反応するんですけど、近所の厩舎にいる2歳の女馬は特に好きみたいで、体を近づけていこうとしながら横目でチラッと見て鳴いていますよ。鳴き方はウ〜ッウ〜ッてうなる感じで(笑)」(宇田川厩務員)
▲体、顔、蹄、球節、耳、流星などすべてが大きいインペリアルマーチ
その後も順調に調整を進めていて、6月17日(水)の京成盃グランドマイラーズ(船橋1600m)に出走を予定しています。船橋競馬場は6月15日(月)から『ハートビートナイター』という愛称で、ナイター競馬がスタート。その最初に行われる重賞レースに、地方競馬を代表する船橋所属の石崎隆之騎手と挑むそうです。
※鞍上は石崎隆之騎手から矢野貴之騎手へと変更になりました
「勝つのはどのクラスでも本当にうれしいことですよね。マーチがうちに来てから初勝利を挙げてくれて、これからも期待を持たせてくれそうな走りをしてくれて本当によかったと思っています。重賞でも頑張っていきたいですね」(出川克己調教師)
きっかけをつかむことは競走馬たちにとって非常に大切なことで、それをクリアした今、インペリアルマーチが南関東の重賞戦線でどんな存在になっていくのか楽しみです。肩掛けする日が来ることを、夢見ながら……。
次回は6月22日(月)にお会いしましょう!