▲前走のけやき賞、3年半ぶりにそしてインペリアルマーチが最後に輝いた瞬間
あまりにも早い容体の急変
競馬の世界はいつ何が起きるかわからず、それを痛感させられる悲しい出来事が起きました。
前回お伝えしたキョウエイマーチの最後の仔インペリアルマーチ(船橋・出川克己厩舎)が亡くなりました。前走のけやき賞では3年半ぶりの勝利を挙げて、キャロットクラブの会員の皆さんにとっても、ファンの皆さんにとっても、そして厩舎関係者にとっても、本当にうれしい瞬間だったと思います。
6月17日の京成盃グランドマイラーズに向けて順調に調整を行っていて、最終追い切りも無事に終えて上向きの状態で、大きな期待を持って参戦になるはず、でした……。
レース前日の最終調教で、ダグからキャンターに入る時に、躓き転倒。最初は横になっていたそうですがしばらくすると立ち上がり、急いで迎えに行った宇田川厩務員と一緒に引き返してきたそうです。
すり傷もなく歩様を確認してもその時点で問題はなく、さまざまな可能性を視野に心臓の状態なども診てもらったそうですが、異常はなかったそうです。
午後になって馬房から洗い場に移動する際、歩様が良くなかったために、京成盃グランドマイラーズは競走除外(左寛跛行)となりました。
翌日、マーチのお見舞いにおじゃましてきました。競走除外になった直後ということもあって歩様は良くありませんでしたが、カイバをペロリと食べた後、おやつの乾草(ルーサン)をモグモグと食べるマーチの姿がありました。
さすがにアクシデントがあった朝のカイバは、いつもより食いはよくなかったそうですが、その日の午後からまた食いつき方も戻ったそうで完食したそうです。特に好物のニンジンは頬張るようにして食べていました。
まさか、これが最後の姿になるとは夢にも思いませんでした。
6月19日の午後になり、急に寝たままの状態で起き上がれなくなったそうで、可能な限りの処置を施したそうですが、あまりにも早い容体の急変で、心不全で亡くなりました。
その日の朝のカイバもいつものようにペロリと、カイバ桶がピカピカになるくらいに食べていたそうで、関係者の皆さんも信じられなかったそうです。
今回の件は、会員さん、ファンの皆さん、これまでマーチにかかわってきた皆さんにとって、言葉には言い表せないほどに悲しい出来事だと思います。
あまりにも早い旅立ちでしたが、マーチは大好きだったご飯を直前までしっかり食べて、マーチを最後に愛した人たちに見守られながら、静かに眠るように旅立ったことは伝えさせてください。
最初に会った時、近づくのも怖いくらいに威圧感があって、これから南関東の仲間になってどのくらい活躍をするんだろうとすごく楽しみでした。
数多く重賞を勝っている宇田川厩務員も、マーチに肩掛けを取らせたいと願いながらやってきました。こういう突然のお別れに、過呼吸になるくらい泣いていました。そばにいた皆さんの悲しみも計り知れません。
しかし、これからもマーチのことは絶対に忘れられない、と。8歳でも元気いっぱいで、でも無駄なことをしないお利口さんで、食べることが大好きで、特にニンジンとルーサンがお気に入りで、黒光りをして迫力満点の惚れ惚れする体で、頑張り屋さんの馬がいたこと ――これからもずっとずっとマーチのことを話していきたいとおっしゃっていました。
また、この京成盃グランドマイラーズでは、2009年札幌2歳Sの勝ち馬サンディエゴシチー(船橋・林正人厩舎)が南関東転厩初戦を迎え、残念ながら競走中止(左前球節完全脱臼)となり亡くなりました。。
インペリアルマーチとサンディエゴシチーのこと、これからもずっとずっと忘れません。ご冥福をお祈りします。
この週末、帝王賞や優駿スプリントの取材で朝の調教を見に行きました。馬たちが馬場を走っている普通の日常が、どれだけ尊い光景であるかを身に染みました。1頭でも多くの馬が、これからも無事に元気に走り続けられることを願いたいです。