2015年の宝塚記念は、史上タイとなる5頭の牝馬が出走予定。いまこそ「牝馬が強い」時代になっているが、ここに至るまでには何頭もの「ヒロイン」による熱闘があった――常に競馬に寄り添い、あたたかい目線を注いできた鈴木淑子が、宝塚記念を彩った牝馬たちの記憶を語る。構成:中山靖大
スイープトウショウの「燃える瞳」に魅せられて

▼39年振りとなる牝馬優勝を成し遂げたスイープトウショウ
「中山記念と産経大阪杯の勝ち馬」「ジャパンカップ2着馬」「GI勝利馬6頭のうち半数の3頭」
皆さんはこの3つの言葉が、何を指しているかわかりますか? これは全て今年の宝塚記念に出走する牝馬についてのデータ。『牝馬が強い時代』と言われていますが、改めて言葉にすると少し前では考えられないような成績を、今の牝馬は残しているのだなと感じさせてくれます。そこで今回は、これまでわたしが見てきた宝塚記念の中で印象に残ったヒロイン(牝馬)たちを、振り返ってみることにしました。
まずは、今からちょうど10年前。第46回宝塚記念(2005年)を勝ったスイープトウショウです。ご存じのとおりスイープトウショウは頑固なお嬢さまで、馬場入場に手こずったり、ゲートに入らなかったりと、精神的な面に難しさを抱えていた馬。それなのに、この日はゲートもスタートも全てにおいて優等生で、武器である切れ味を存分に活かして男馬を撃退したのです。
このとき私は阪神競馬場で観戦していたのですが、検量室前に引き上げてきた彼女の目の輝きは、これからもずっと忘れることはないでしょう。『巨人の星』ではないけれど、その瞳の中に炎が見えたように思えたのです。まさに一世一代の集中力を発揮した瞬間ではなかったでしょうか。
ただ当時はまだ牝馬が一流牡馬にまじって勝つということは珍しく