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リサ・オールプレス騎手(3)『女性ジョッキーである前に、プロのジョッキー』

  • 2015年07月20日(月) 12時00分
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▲最終回の今回は、オールプレス騎手が「女性騎手」について語ります


今週末が日本での騎乗最終週となるL・オールプレス騎手。インタビューも今回が最終回です。今回のテーマは「女性騎手」について。JRAには現在女性騎手はいませんが、ニュージーランドは全体の3〜4割が女性騎手だと言います。そこにはどんな違いがあるのでしょうか。各国の女性騎手を取り巻く環境と、トップ騎手として活躍する彼女の固い信念に迫ります。(取材:赤見千尋)


(つづき)

ニュージーランドの女性は気持ちが強い


赤見 JRAには今女性ジョッキーがいないんですけど、ニュージーランドには結構いらっしゃるんですか?

リサ たくさんいますよ。全体の30〜40%ぐらいが女性ジョッキーじゃないでしょうか。多分、世界で一番多いと思います。

赤見 そんなにですか!? その理由は、どういうところだと思われますか?

リサ ニュージーランドの女性は特に気持ちが強いし、「この夢に向かっていく!」と決めたら、とにかく突き進む。そういう決断力とか行動力もあるんだと思います。そのための努力もどんどんしていきますし。

赤見 それは競馬界だけでなく、社会全般に言えることなんですね。

リサ ええ。ニュージランドの首相には女性もいますし、女性が重要なポストに就くことも特別なことではないんです。そういうところも、女性が進出しやすい社会になっている一つの理由かもしれませんね。

赤見 日本では今でこそ働く女性は増えましたけど、完全に環境が整っているかと言ったら、必ずしもそうとは言えないです。

リサ 社会全体、競馬界全体がそういう環境になってないと難しいところですよね。シンガポールも、私が行った時には女性ジョッキーはいなかったですし、トレーナーも女性は1人だけでした。だから、女性になかなかチャンスが巡ってこない。男性社会の中の女性というだけで、馬主さんたちもなかなかいい馬に乗せようとはしないですしね。

これまでのJRAの女性ジョッキーの方たちも、そうだったんじゃないんでしょうか。多分ですけど、騎乗機会もそれほどなかったんじゃないのかなと。そういう中で続けて行くには、相当な強い意志を持っていないと厳しいですよね。

赤見 これまで、女性騎手として苦労されたことはありますか?

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▲赤見「ニュージーランドは、女性が働きやすい環境が整っているんですね」


リサ それこそシンガポールでは、女性というだけで最初は騎乗機会をあまり与えてもらえませんでした。毎日調教をこなして、レースでも結果を出すしか騎乗機会を得る手立てはなかったんです。でも、ニュージーランドでは、女性だからの苦労というのはあまり感じたことはないです。

そもそも私自身、男性だから女性だからということをあまり気にしていないんです。特にニュージーランドは、日本のようなエージェントはいないですし、競馬場に行くにしても自分で運転して、帰りも自分で帰るんです。そういったことは女性も同じようにやらないといけないですからね。

赤見 そこに男女の差はないんですね。

リサ そう。だから体力的にもタフでメンタルも強くて、行動力もある女性が多いんだと思います。それにレースだって、それこそ男性も女性も関係ないですもんね。基本はもう横一線で、同時にゲートから出て競い合う、シンプルにそれだけですから。私はひとりのジョッキーであって、女性だからどうとか唱えることはないんです。女性ジョッキーである前にプロのジョッキー、そういう気持ちでいつも乗っています。

赤見 女性騎手の一番になりたいわけじゃないという。

リサ ええ。まさにそういう意識です。ただ、女性ジョッキーというのは、どうしてもキャリアは短くなります。50歳になっても馬に乗っている方ってなかなかいないですし、自分自身もそこまで続けていることはないと思います。そう考えると、チャンスのあるうちに海外に行って、どんどん経験を積んで、大きいレースにもどんどん乗っていきたいというのがあるんです。

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▲リサ「女性ジョッキーのキャリアは短いから、チャンスのあるうちに海外で乗りたい」


赤見 だから海外に目を向けていらっしゃるんですね。でも、自国でリーディングジョッキーになられて、そこから長期で海外に行くというのは大きな決断ではないですか?

リサ それは、自分のポジションがなくなってしまうのではないかっていう心配? それは問題ではないですよ。これまでリーディングも獲りましたし、コンスタントに上位争いを続けている実績も作ってきています。成績を挙げていればトレーナーやオーナーとの契約も結べますしね。だから、帰ればまたオファーはもらえると思います。そういう自信はありますので、海外で乗ってたとしても、それほど大きな問題ではないんです。

赤見 これまでの実績が自信になっているんですね。

リサ 逆に、自国でならチャンスを掴めるけど、海外ではそういうわけにはいかないですからね。だからこそ元気があるうちに海外での経験を積みたいんです。

それに、どこの国へ行ってもレースはレース。ゲートが開いていいポジションを取って、最後に一番いい着順で帰ってくる、それはどこの国でも同じですから。だから怖いことなんて何もないんです。たぶん私は、あと数年でジョッキーを辞めることになると思います。

赤見 えっ、そう考えられているんですか?

リサ ええ。それは、子供たちとの時間を大切にしたいから。これまでの騎手人生を振り返って、家族ができたことは、私に一番自信をくれたんです。主人と出会い、2人の息子に恵まれて、彼らが私をいつもサポートしてくれています。だから今度は、大事な家族との時間を持ちたい。そういうことも考えると、今のうちにもっともっと国際舞台で活躍して、残りの騎手人生を大事にしていきたいんです。

赤見 ご自身の進むべき道をしっかりと持っていらっしゃいますね。

リサ チャンスや時間は大事にしないとね。今回帰国したら、チャンスがあれば次は香港で乗りたいと思っています。それが出来なければ、しばらくはニュージーランドで騎乗することになると思います。頑張ってリーディング上位を目指して、また日本に来られたらいいな。その時はヨロシクオネガイシマス!(了)

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▲取材終了後、英語が得意な宮崎北斗騎手が登場!


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▲〜オールプレス騎手、また日本へ来てください〜

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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