5月5日「群馬記念」。毎年のことだが、その日になるとどうしても現地でライヴが見たくなる。東京、あるいは上野から新幹線に乗ってしまえばわずか40~50分で高崎到着。開催中の浦和(群馬記念は場外発売)と時間がほとんど変わらない。で、今年も埼玉県は通過して一路高崎競馬場へ。むろんおよそ1万円の“出張費”は痛いのだが、そのときそれは頭の中から消えている。馬券で補填――。競馬記者などというものは、およそノー天気なお気楽者だ。
今年はプリサイスマシーンに大きく気持ちが入っていた。川崎デビュー、5戦5勝でJRA移籍。以後[6-2-1-5]。昨暮れG3中日新聞杯を制し、すでに堂々たるオープン馬に成長している。芝、ダート、いっさい問わないマヤノトップガン産駒。肉眼で見た川崎、大井の印象はまぎれもない大物で、とりわけスピードに乗って重心の沈む走法に魅力があった。地方→JRAスター街道は、昔から記者の心を揺さぶる最たるパターン。馬の持つムード、脚質はだいぶ違うが、個人的にはかつてのトロットサンダーにイメージをダブらせていた。パドックの気配もよし。負けようがないと思うと馬券にも力が入る。タイガーロータリー、トーシンブリザード、ストロングブラッド、馬単3点。自信満々でファンファーレを聞いた。
勝ったストロングブラッドは3コーナー手前から一気のまくり。昨年マイネルブライアンをオーバーラップさせる圧勝だった。1500m1分32秒2レコード。昨秋上山・さくらんぼ記念を制し、以後浦和記念、とちぎマロニエCそれぞれ2着。終わってみれば小回りダートで素晴らしいスピード、競馬センスがあるということだろう。プリサイスマシーンは道中なぜか行き脚が悪く、直線渾身のステッキを浴びて伸びたものの2着がいっぱい。ひと月季節が逆戻りしたような冷たい雨。道悪も含め器用さで譲ったとしかいいようがない。トーシンブリザードは、前走大井・マイルGP同様先行策をとったものの、4コーナーで早々と手応えをなくした。積み重ねた実績がいったい何だったかという悲しい敗戦。タイガーロータリーは、勝負どころでいったん下がり、ゴールぎわ再び根性を振り絞ったが3着止まり。ともかく記者の馬券は惨敗だった。このケース、さすがに帰路の足が重くなる。行きはよいよい、帰りは…を絵に描いたような結末だった。
Gウィーク最終日。高崎駅新幹線ホームは、当然ながらさすがという混雑で、新潟から到着する「MAXとき」など、デッキ、通路まで、通勤時の山手線並みにUターン客であふれている。2台ほど見送り、長野からの「あさま」に乗ったが、すし詰め状態で呼吸が苦しい。各駅停車。え?本庄早稲田なんていう駅あったっけ…。よけいに混んでくるからうらめしい。大宮で降りる客が多く、記者も押し出されるように下車した。ホッと深呼吸して、まあ1年に1度、これも“思い出作り”だろうかと考え直す。ただしかし、思えばこの状況は去年とかなり酷似する。その昨年は、声援したエスプリシーズ3着。学習能力の低い競馬記者には、なにやら遠い昔のようだ。
☆ ☆ ☆
翌6日、浦和「テレビ埼玉杯」。こちらもピント外れの予想、馬券でダブルパンチを受けてしまった。勝ったベルモントソレイユは、初コンビ・早田騎手鞍上に鮮やかな逃げ切り。実績、血統(父アジュディケーティング)から少し長いと思えた1900mだが、ナイキアディライトの出遅れもあり、望外のマイペースでレースを運べた。それでも直線並んできたファイブビーンズを上がり37秒9で完封は、イメージ一新のしぶとさ、力強さといえるだろう。ハタノアドニスしかり、コアレスハンターしかり、高橋三郎調教師、同スタッフの手腕もやはり大きい。
テレビ埼玉杯(サラ3歳以上 別定 南関東G3 1900m梢重)
(1)ベルモントソレイユ (54・早田) 1分59秒9
▲(2)ファイブビーンズ (56・内田博) 1/2
△(3)ナイキアディライト (58・石崎隆) 2
(4)バックギアー (54・佐藤隆) 3/4
△(5)ブルーマドンナ (54・左海) 首
…………………………………………………………………………
◎(6)ダイタクリムジン (56・山中)
○(7)イシノファミリー (58・山田信)
単1090円 馬複2020円 馬単6140円
3連複3630円 3連単31210円
「スタートで一瞬つまずいたが、そこから反応がよかった。折り合いもつくし乗りやすい馬」と早田騎手。古くはジョージモナーク、ダイコウガルダン、記憶の新しいところではオリオンザサンクス。騎乗数こそ減っても、思い切りのよさ、勝負勘は健在で、やるときはやる…そんな感じか。JRA横山典騎手と親友だと聞く。横山Jは先日イングランディーレで大金星。あるいは刺激があったかもしれない。
ファイブビーンズは、道中反応よく好位キープ。しかし3~4コーナー、ペースが上がったところでいったん下げ、直線勝負に切り換えた。結果1/2馬身差だから確かに惜しいが、近況オーラまで感じる内田博騎手。連対確保ならひとまず納得がいくだろう。ナイキアディライトはスタートで大きなつまずき。前半死んだふり、3コーナー一気にまくって出たのは、第一人者・石崎隆騎手ならではの乗り方だろう。あわやの3着。これが次につながるかどうか。期待したダイタクリムジンは6着。パドック、返し馬の気配などいかにも上がり馬然とみえたが、アディライトがスパートした瞬間、人馬とも少しひるんだ。結局これが重賞初挑戦のキャリア負けか。イシノファミリーはマイナス13kgでも細くはみえず、道中3番手の位置取りも悪くなかった。距離が少し長いこと、斤量58kgが重いこと。次走への評価が難しい馬ではある。
☆ ☆ ☆
東京湾カップ(船橋5月12日 サラ3歳 別定 南関東G3 1800m)
◎ドラゴンシャーク (54・桑島)
○ニイタカレアル (54・鈴木啓)
▲スプリングエトナ (54・石崎隆)
△ミチシオ (54・戸崎)
△ゼレンカ (54・内田博)
△シャトルフォンテン (54・張田)
△ランノホシ (55・早田)
アジュディミツオー (54・佐藤隆)
例年暮れに行われていた東京湾Cがこの時季に移行。東京ダービー最終予選として生まれ変わった。デビューから3戦3勝スプリングエトナ、同2戦2勝アジュディミツオーなど地元の新星も登場するが、距離1800m、ハイペースを想定すると川崎ドラゴンシャークに食指が動く。大井紅梅特別、雲取賞はいずれも豪快な大外一気。結果惜敗ながらインパクトがきわめて強いレースだった。父モガンボ。手脚のすらりと伸びた体型で、個人的にはベルモントアクターとイメージがダブる。渋い末脚があるニイタカレアル本線に、昇り馬では前走JRA交流をあっさりクリアしたスプリングエトナ。話題の外国産馬ゼレンカ、昨秋平和賞圧勝、高橋三郎厩舎から再スタートを切るランノホシ。それなりに見どころの詰まったレースだろう。