●ハリケーンバローズ(牡 栗東・角居勝彦 父Uncle Mo、母Naughty Mambo)
　今年の3月、ファシグティプトンフロリダセールでノーザンファームの吉田勝己氏が30万ドルで落札。このところアメリカのトレーニングセールは株高の影響か全体価格が上昇しており、この価格ながら同氏が同セールで購買した計3頭のなかでは最も安かった。しかしながら、調教タイムのラスト1ハロンは本馬が最も速く、配合的にも見どころがあるのでおもしろい。父Uncle MoはブリーダーズCジュヴェナイル(米G1)、シャンペンS(米G1)など3戦全勝で2歳チャンピオンに輝いたスピード馬。3歳時は内臓疾患のため調子が上がらず5戦2勝に終わった。種牡馬としては現2歳世代が初年度産駒で、現時点で米ファーストシーズンサイアーランキングのトップに立っている。母Naughty MamboはNegligee(09年アルシバイアディーズS-米G1)の半姉。本馬はBold Princess≒ボールドラッド6×6という影響力の強い4分の3同血クロスを持つほか、母方にMr.Prospector、In Reality、Le Fabuleuxを併せ持っているので、Uncle Mo産駒の重賞ウィナーUncle Vinny(15年サンフォードSー米G3)と配合構成が似ている。パワー型のマイラーで底力も十分。ダート戦線でかなりの活躍が見込める。なお、馬主は吉田勝己氏ではなく猪熊広次氏。3月のファシグティプトンフロリダセールで吉田勝己氏が購買し、他の馬主名義となった馬は成功しており、近年アジアエクスプレスやゴールデンバローズなどの活躍馬が出ている。

●プルミエエトワール(牝 栗東・吉田直弘 父ヴィクトワールピサ、母ユーアンミー)
　阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)で3着と健闘したミクロコスモスの4分の3妹。父はネオユニヴァースからヴィクトワールピサに替わった。母ユーアンミーはフォワードギャルS(米G3・ダ7f)の勝ち馬なのでスピード面の心配はない。2代母ArchimillionnaireはCiboulette≒Coqueluche 3×1というカナダ血統のユニークな凝縮がある。この配合構成は魅力的。本馬はMr.Prospectorのクロス(4×4)を持ち、母にはNorthern Dancerのクロス(4×4)がある。父ヴィクトワールピサの血脈のなかではMr.Prospectorが重要な役割を果たしており、なおかつ父はNorthern Dancerが希薄なので、Mr.Prospectorのクロスを持ち、Northern Dancerを積極的に入れたこの配合は好感が持てる。現時点で勝ち上がったヴィクトワールピサ産駒2頭(クラウンドジャック、スパーキングジョイ)はいずれもMr.Prospectorクロスを持っており、後者は母にNorthern Dancerのクロスを持っている。芝向きのマイラーとして堅実に走ってくるだろう。

●ホッコーフウガ(牡 栗東・西浦勝一 父ゴールドアリュール、母マダムチェロキー)
　チャンピオンズC(GI)、東京大賞典(GI)2回、フェブラリーS(GI)など、ダートGI(Jpn1)を勝ちまくるホッコータルマエの半弟。父はキングカメハメハからゴールドアリュールに替わった。日本のダート界はキングカメハメハとゴールドアリュールが勢力を二分しており、ダート種牡馬界における東西の横綱といえる。つまり横綱から横綱へ父が替わったので楽しみな存在だ。母マダムチェロキーはパワフルなアメリカ血統で固められており、母の父Cherokee RunはブリーダーズCスプリント(米G1)を、2代母の父アンブライドルドはブリーダーズCクラシック(米G1)を制している。母方にBlushing Groomを持つゴールドアリュール産駒は成功しているとはいえないが、UnbridledとDroneを併せ持つ同産駒にはレッドアルヴィス(14年ユニコーンS-GIII)がいる。ダート向きの中距離タイプだろう。

●メイショウダッサイ(牡 栗東・飯田祐史 父スズカマンボ、母スズカブルーム)
　母スズカブルームはホワイトカーニバル(02年フェアリーS-GIII)の半妹で、現役時代に3勝を挙げた。ホワイトカーニバルは繁殖牝馬となってスズカマンボを交配され、サンビスタ(JBCレディスクラシック-Jpn1など重賞4勝)を産んだ。つまり、本馬とサンビスタは、父と2代母が共通するので4分の3同血となる。2頭の母の父(スキャターザゴールドとミシル)はいずれもMr.Prospector系なのでさらに血統構成は近い。サンビスタのようなダートの大物となることを期待したい。

●ラベンダーヴァレイ(牝 栗東・藤原英昭 父ディープインパクト、母クロウキャニオン)
　ボレアス(11年レパードS-GIII)、マウントシャスタ(12年神戸新聞杯-GII・3着)、カミノタサハラ(13年弥生賞-GII)、ベルキャニオン(14年共同通信杯-GIII・2着)の全妹。「ディープインパクト×フレンチデピュティ」の組み合わせはショウナンパンドラやウリウリが出ており、母方に入るCaerleon、Vaguely Nobleも父と相性がいい。成功パターンを重ねた好配合馬で、全きょうだいが連続して走ったのは偶然ではない。全きょうだいでも同じ牝馬のパラダイスリッジは現1勝馬で、兄4頭に比べるとスケールダウンしているのは気になるが、馬のデキが良ければ重賞級の期待がかけられる。