あえて心配な点を探せば100点満点すぎたことだけ
断然の1番人気に支持された
ロードクエスト(父マツリダゴッホ)が、ほぼ馬なりのまま、ノーステッキで4馬身差の圧勝だった。馬なりのまま4馬身差独走というと、ふつうは逃げ切り独走でみられる勝ち方だが、ロードクエストは18頭立ての最後方を自信満々に追走。他馬が嫌った内寄りからスルスル進出すると、抜け出す瞬間に田辺裕信騎手はムチを持ち直したようにみえたが、もうその瞬間に抜け出していたから、大事に少し外側に進路を変えただけ。文字通り終始ウインバイキャンターだった。
これで、新しい新潟1600m(左、外)になって以降、上がり3ハロンに「32秒台」を記録して快走した馬は、次の5頭となった。
2009年 1着シンメイフジ 良1分34秒4 (32秒9)
2011年 1着モンストール 良1分33秒8 (32秒7)
2011年 2着ジャスタウェイ 良1分33秒9 (32秒6)
2013年 1着ハープスター 良1分34秒5 (32秒5)
2015年 1着ロードクエスト 稍1分33秒8 (32秒8)
レース全体の流れは、レース検討で示した最近6年間の良馬場の平均パターンの前後半「47秒7-46秒3」=1分34秒0と、そっくり同一にも近いバランスだった。表面の芝の部分はかなり水分を含んだ稍重で、馬場を苦にした馬もいたが、前後半「47秒6-46秒2」=1分33秒8である。この馬場で良馬場のモデルパターン以上だから、厳しいレースである。
したがって、近年のこのレースをステップにやがて高い評価を受けることになった2011年のジャスタウェイ、2013年のハープスターなどと、だいたい同じような観点から広がる未来を予測することができる。スケールあふれる体つきというのではなく、無駄のない448キロ(今回プラス4キロ)の馬体はまだまだ幼い印象を与えるが、こういうタイプにもっともふさわしい賞賛は、身体が大きくないからこそ「これから抱える脚元などの問題はごく少ない」である。
早熟系ではない。父マツリダゴッホ(その父サンデーサイレンス)が本物になったのは、4歳暮れの有馬記念を勝ってから。マツリダゴッホの母の半弟になるナリタトップロードは1999年の3冠3,2,1着。着実な成長カーブに乗ったパワーアップが望める。
また、ロードクエストの3代母ダイナクレアー(父ノーザンテースト)の全姉は、天皇賞・秋の勝ち馬サクラチトセオー、エ女王杯のサクラキャンドルなどの母サクラクレアーである。来季を見据えた小島茂之調教師の手法に期待したい。
発表以上にタフなコンディションだった稍重馬場で、馬なりのまま上がり32秒8。最後11秒4の1ハロンで後続に楽々と4馬身差。1頭だけ抜けて光っていた。消耗もないだろう。
この新潟2歳Sで台頭し、のちにG1馬となったのは「マイネルレコルト、ショウナンパントル、セイウンワンダー、ジャスタウェイ、ハープスター、イスラボニータ」。みんなタイプが違うから、簡単に可能性の比較はできないが、この2歳Sを勝った時点のロードクエストは、おそらく最上位に近いランキングではないかと思われる。しいて心配な点を探すなら、「こんなにも楽々とライバルを切り捨てていいのか…」、100点満点すぎたことだけである。
今年もそうだったが、前半は後方にひかえ、直線スパートの切れ味で上位に台頭する馬が多いなか、2着した
ウインファビラス(父ステイゴールド)は、早め早めの正攻法に近いレース運びで、3着馬には2馬身差。自身は1000m通過60秒3-上がり34秒2だった。直線の中ほどでは12番人気の伏兵とは思えないほど鋭く伸びている。その時インからロードクエストが楽々と抜け出したので完敗だが、勝ち馬はほかの17頭にまったく関与せず、1頭だけ別のレースをした印象が強いから、この2着は価値がある。ふつうは単なる「たら、れば…」にすぎないが、ロードクエストさえいなければ勝ったのはウインファビラスだろう、と、巡り合わせを嘆いて許される。陣営は「牝馬では上位のクラスにいると思う。次は10月31日のアルテミスS(東京1600m)」。この馬の未来に手ごたえを感じたのは当然である。稍重馬場のマイルを自力で動いて1分34秒5。ステイゴールド産駒らしく、1戦ごとに良くなっている。
後方から3着に突っ込んで、自身は「61秒3-33秒5」=1分34秒8となった
マコトルーメン(父ダイワメジャー)が、いつもの年の上位に突っ込んでくる馬の典型的な戦法での標準の中身か。1200m→1600mが大きなプラスとなった。上がり33秒5は勝ち馬に次ぐ2位。ほかの16頭は34秒台以上を要するきつい芝コンディションだった。桜花賞2着のメジロカーラ、フラワーCのリアルサファイヤが代表する渋いファミリーで、母マコトサンゴ(父タマモクロス)の半弟はダート重賞を4つも制したマコトスパルビエロ(父ブライアンズタイム)。ウインファビラスと同様、勝ち馬には離されたが、これからの成長に期待できる。
候補とされた2-6番人気の「
ヒプノティスト、
ルグランフリソン、
ウインミレーユ、
ペルソナリテ、
タニセンビクトリー」は、そろって別格の勝ち方をしたロードクエストの前に影が薄くなってしまったが、今回は馬場を苦にした馬も多かったから、急に評価は下げられない。
明らかに稍重以上にタフな芝が応えたと思えたのは、小柄な牝馬ペルソナリテ(父ステイゴールド)。強い調教をこなしてプラス10キロ(前回400キロ)。決して小さく映らなかった。母の父は2着したウインファビラスと同じく芦毛の種牡馬アドマイヤコジーン(スノードラゴンなどの父)。今春、種牡馬引退が発表されたが、種牡馬ステイゴールドの残したアドマイヤコジーンを母の父にもつ産駒には要注目か。メジロマックイーンの場合と同じで、ステイゴールドにはおそらくそういうところがあって不思議ない。