5月26日、船橋「かしわ記念」。ナイキアディライトが、昨春東京ダービー以来およそ1年ぶりの勝利を交流G2で飾った。1000m通過61.4秒。好スタートから、かからず、緩めず、完璧なラップを踏み、危なげない逃げ切り。強風の良馬場。1600m1分39秒7と時計は少しかかったが、ラストのしっかりした脚いろから、相手なりの見方もできる。
2着は中団キープ、直線中を割って伸びたトーシンブリザード。以下、ノボトゥルー、マルカセンリョウがきわどく追い上げ、3、4着。03年の東京大賞典馬スターキングマンは、前半反応が遅れ、最後大外を追い上げたものの及ばなかった。
アディライトは03年、ブリザードは01年のそれぞれ東京ダービー馬で、言わずもがな南関東トップスター。そのワンツー決着ながら、今回馬単11900円をつけている。記者も含め、人心とはかくもうつろいやすいもの。同時に競走馬の衰勢とは、常に山があり谷があり、それこそ一寸先もわからない。
かしわ記念(サラ4歳上 定量 交流G2 1600m 良)
△(1)ナイキアディライト (56・石崎隆) 1分39秒7
△(2)トーシンブリザード (56・的場文) 1.1/2
○(3)ノボトゥルー (56・横山典) 首
◎(4)マルカセンリョウ (56・吉田稔) 頭
▲(5)スターキングマン (56・武豊) 3/4
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△(6)レマーズガール (54・内田博)
(7)トミケンマイルズ (56・張田)
単640円 馬複5430円 馬単11900円
3連複6150円 3連単46820円
さてナイキアディライト。昨春ダート無敗で南関東2冠達成。続くジャパンダートダービーも、ビッグウルフ、ユートピアと死闘を演じる3着だったが、秋の戦列復帰以降、思わぬトンネルに入っていた。「脚元にはまったく不安がない馬。ただスタートでしばしばミスがあったり、精神面のスランプでしょう。この中間はいいころの覇気が戻っていた。ようやく力通りの競馬ができた」(出川龍一調教師)。地元1600mで単騎逃げ。さまざま恵まれた今日の内容からはまだ楽観できないが、格のある馬が格に恥じないレースをした。その意味で南関ファンにひと筋の明かりがみえたとはいえるだろう。優先出走権を得た帝王賞。元より距離2000mは問題ない。低レベルとされる現4歳世代、ここから改めて成長力が問われてくる。
トーシンブリザードは今回的場文Jで、最近にない勝負強さをゴール際発揮した。鞍が変わってカンフル剤。それでも実績、潜在能力からは、本来突き抜けていて当然のケースだった。レース上手の堅実派。微妙に評価が変わっていく状況が正直寂しい。ノボトゥルーは先行馬ペースを考えると予測通りの結果だろう。遠征競馬が課題とされたマルカセンリョウは、吉田稔騎手、少し強引なくらい手綱をしごいて先行したが、ペースが上がった3~4コーナー、にわかに反応が鈍くなり、最後インを伸びたもののすでに時遅かった。難しい。馬自身、安全を認識して初めてギャロップに移る「慎重派」ということか。次走帝王賞へ進むとすれば、道中どうエンジンをかけるかが鍵になる。スターキングマンは4キロ減。馬体は仕上がっていたもののパドックの歩様など本来の伸びやかさに欠け、レースぶりも帝王賞への叩き台、そのままという印象だった。見せ場なく終わったレマーズガールは、状態云々を別にしても、現状牡馬相手で力不足か。4コーナー、いったん先頭をうかがったトミケンマイルズはどうやらスプリンター。イキのよさは光ったものの、マイルを超えると軽い馬場が条件になる。
東京ダービー(6月3日大井 サラ3歳 定量 南関東G1 2000m)
◎ベルモントストーム (56・石崎隆)
○ステルスライン (56・桑島)
▲アジュディミツオー (56・佐藤隆)
△バックオフゴー (56・早田)
△トキノコジロー (56・山田信)
△キョウエイプライド (56・的場文)
△モエレトレジャー (56・金子)
ランノホシ (56・御神本)
ブルーローレンス (56・酒井)
ゼレンカ (56・内田博)
ベルモントストームが間に合った。前走京浜盃を圧倒的な強さで制し、デビューから無傷のV5。その京浜盃は道中持ったきりの3番手、直線だけの競馬で後続を6馬身ちぎっている。ひとこと別次元。3年前、当時のトーシンブリザードとほぼ互角、あるいはそれ以上の大物感。以後脚部不安発生、第1冠・羽田盃回避はあとあと残念にもなりそうだが、一貫「馬優先主義」を実践してきた出川克己スタッフのこと、ひとまずここをきっちり…と考えたい。スピード身上とされるアジュディケーティング産駒ながら、ストーム自身、パドックの気配など物足りないほどおっとりしている。距離2000mも、自然体で折り合って抜け出すか。続く7月8日「ジャパンダートダービー統一=G1」。いい感触で大一番を迎えたい。
アジュディミツオーは前走東京湾Cを完璧な逃げ切りで、土付かずの3連勝。素質、潜在能力からは、ストーム最大のライバルといえるだろう。ダービーへ出否を少し迷った陣営だが、そこは川島正行厩舎、決断と同時に大井の馬場見せを済ませている。初コース、初ナイター、微妙な部分はあるにせよ、期待度は相当高い。逃げるアジュディ、差すストーム。ハイレベルの決着とすればこの2頭の一騎打ちか。
逆に少しもつれてステルスライン。前走羽田盃こそ器用さで譲ったが、ストーム圧倒の京浜盃は最後馬群を力強く捌いて2着だった。プレザント、ヒノデラスタとダービー2勝。鞍上はここ一番にきわめて強い。羽田盃のインパクトからはむろんトキノコジローだが、力走の反動が気になること、パドックのイレ込みがきついこと。当時2、3着、キョウエイプライド、バックオフゴーも今回互角に評価したい。ひところ寂しい状況と見えながら、最後の最後案外駒がそろってきた04東京ダービー。復帰・御神本Jの乗る平和賞馬ランノホシ、5戦5勝、キングセイバーとイメージがダブる酒井忍・ブルーローレンス。噂の外国産馬ゼレンカは、今回リーディング内田博Jが手綱をとる。