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大きな自然災害への備え

  • 2015年09月12日(土) 12時00分


競馬界にもこれまでにない危機管理のシステムが求められているはず

 12週間の夏競馬出張が終わって、今週からの4週間は秋の中山開催。その先、東京8週、中山4週と中央場所でのレースが続くわけですが、この4開催は年末に向けてアッという間に過ぎていく感じがしてなりません。みなさんはいかがですか?

 さて今週は、関東、東北で大変な豪雨がありました。被害が広範囲に及んでいるだけに、被災された方々の数も相当な規模に膨らんでしまいました。この場をお借りして、謹んでお見舞い申し上げます。

 地方競馬の“騎手学校”、地方競馬教養センターは、今回甚大な被害を受けた栃木県の北部、那須塩原市にあります。10数年前、騎手候補生相手の“1日講師”を仰せつかり、迎えの車で東北新幹線の那須塩原駅からセンターに向かう途中、橋のないところで川を横切りました。ずいぶんダイナミックだなぁと思ったのですが、目に見えるところに水が流れていないので、橋がなくても渡れちゃったんですね。今回の様子を報じた新聞記事の中に「ふだんここには水なんて流れてないのに」という地元の方の話が載っていました。それは、ひょっとするとあの川のことだったのかもしれません。

 今のところ教養センターは無事のようですが、もし大きな被害を受けていたら、候補生の訓練課程にも影響が出ていたはず。そういう場合の代替施設をどう確保するか、念のために考えておくべきではないでしょうか。

 それより何より、大きな自然災害に見舞われ、競馬場が開催不能の状態に陥った場合にどう対処するか、地方競馬はできる限りの備えをしておく必要があると思います。

 2011年の東日本大震災で岩手の水沢競馬場が壊滅的被害を受けたのは記憶に新しいところ。ただしあの時は、同じ岩手の盛岡競馬場がほぼ無傷だったため、わりと早く競馬を開催できました。しかしこれは“不幸中の幸い”。岩手、兵庫以外は自前の競馬場が1つしかなく、そこがやられたら全く開催できなくなってしまいます。

 そういう場合、例えば被害を受けなかったその競馬場に無事だった馬と人を送り込み、代替開催できるシステムを整えておく、なんていうことはできないのでしょうか。要するに、都道県の垣根を飛び越えて、高知競馬を金沢で、笠松競馬を佐賀で開催するような形です。

 各競馬場の馬房数が足りないというのであれば、JRAの空いている競馬場を使う手もあります。日本競馬界が相互に補完し合って、甚大な被害を受けた競馬場の再建を手助けする。そうでもしない限り、ダウンしてしまった競馬場、とくに財政基盤の弱い地方競馬場はそのまま潰れてしまうでしょう。

 これまでに経験したことのないような自然災害が増えている今、これまでにない危機管理のシステムが競馬界にも求められているはずです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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