角田晃一調教師
角田晃一調教師「(ベルカントの)先頭に立とうとする勝負根性は、素晴らしいですよ」
今週はスポーツ界でいろんな秋が満載でした!!
ラグビーワールドカップでは日本代表が世界ランク3位の南アフリカに勝利する快挙。ラストワンプレーでの逆転勝利でした。僕は小中学生の時、バスケットとラグビーをしていて、ラグビー憧れの聖地、花園ラグビー場で試合をしたことがあるんですよ。香港セブンとの交流試合で香港へ遠征し、オールブラックスと戦ったことも・・・(小学6年生とベテランオールブラックチームとの戦い! にアツくなりました。オールブラックスにとってはラグビーごっこだったかな?)
ゴルフでは石川遼選手が今季国内ツアー初出場のANAオープンをVで飾り、プロ野球のセ・リーグでは上位4チームが優勝争いで混戦ムードでドキドキ。もちろん競馬も3日間競馬三昧。高配当馬券もでて盛り上がっていますね。
阪神競馬場の芝1800mで開催された秋華賞トライアル、ローズSでは春の実績馬か夏の上り馬か・・・GI馬2頭を含む強い馬たちが集結し熱い戦いでしたね。優勝したタッチングスピーチ(石坂厩舎)のC・ルメール騎手の手綱さばきは見事でしたね。後方から追い上げたパワーと瞬発力はすばらしかったです。精神面でも落ち着いて大人になったなって感じました。1、2、3着馬すべて後方からの競馬でしたが、しっかり追い上げて強さを感じ秋華賞が今からワクワクします。優勝インタビューのルメール騎手の日本語が的確でよくわかりすばらしかったですね。石坂厩舎からまた楽しみな馬が出てきましたね。
さて今週は、秋初戦のGI競走スプリンターズS(中山芝1200m)の話題です。角田騎手管理の、いやいや角田厩舎管理のベルカントについてお聞きしました。
常石 ベルカントのサマースプリント優勝おめでとうございます。角田先輩、今日はよろしくお願いします。角田騎手って言い間違えてしまいました(苦笑)。でもそれくらい体型は変わっていませんよね。
角田 ありがとうございます。そうだよ、体重は騎手時代と全く同じだね。常ちゃんはちょっとお腹出すぎ違うか?(笑)
常石 いきなりそこを突っ込まれるとつらいですね(笑)。いつも馬に跨っていますよね。いますぐにでも騎手に戻れそうですね。
角田 それはないですが、気になった新馬などは、乗って手ごたえや感触を確かめています。でもあまり乗ってないですよ。
常石 角田先生と言えばジャングルポケットでダービー制覇されたでしょう。あれはすごいなーと思いました。ほかに印象に残ってる馬はありますか?
角田 多くのいい馬に乗せてもらいましたからね。みんな印象に残っているけど、その中でもフジキセキに跨ったときはゾクゾクしました。背中の柔らかさ、跨ったときのあの感触は今でも忘れられませんね。加速するときのエンジンが違ったね。あの馬にはもっと活躍してほしかったね。
常石 ちょっとタイプは違いますけどフジキセキの子でイスラボニータはよく走っていますよね。新馬からいい馬を見つけていくのはむずかしくないですか?
角田 騎手時代は跨って感触を確かめることができたけど調教師になってからは見た目で判断しないといけないのでより慎重に選ぶことになります。調教もパターン化はしたくないですね。馬の個性に合わせ1頭1頭違う調教をしています。スタッフは大変だと思うけど競馬は馬が主役で競走が成り立ってるでしょう。スタッフに馬のためになるいいアイデアをいっぱい出してくださいとお願いしています。担当も決めていませんし、みんなで厩舎の馬を見ています。だからスタッフ同士で馬の話をよくしてみんなで盛り上げていってくれています。
調教から帰った馬の様子を見て厩舎スタッフと話す角田調教師
常石 馬房もちょっと違いますよね。
角田 牡馬と牝馬と分けています。
常石 どうしてですか?
角田 成長が違うでしょう。馬の作り方も違ってくるから少ない馬房数で効率よく馬の入れ替えをしながら馬の状態を見ていくのはとっても難しいことだから分けることで管理もしやすくなる。
常石 とっても繊細な管理をされているんですね。
角田 競馬の主役は馬だからね。芝なのかダートなのか、距離はどうか? いろいろなレースもありどこに出走させるか? 馬1頭1頭の適性を早く見つけてあげたいです。
常石 ベルカントはどんな馬だったんですか?
角田 生まれてから2か月目に牧場へ見に行ったんですが女の子なのに筋肉質で体も大きかったんです。乗り出してからはスピードが違いました。新馬戦は馬なりでスーッとスピードに乗って楽にハナにいき追うことなく楽勝でしたが新馬戦は何が起こるかわからないので無事に勝ってくれうれしかったです。次走は若いから右に寄れたりふらついたりすることもあって手ごたえが怪しくなったりしながら最後はシッカリ差し返して2着にきてくれました。
厩舎でのベルカント
常石 ちょっと気難しさが出たんですね。でもそこは豊さんは扱いが上手いですよね。
角田 あたりが柔らかいから小細工はしないよと言っていました。スピードがあるけどありすぎて調教の時でも前に馬がいると追い越すまで頑張ってしまうから調教は馬のいないときにやっています。先頭に立とうとする勝負根性は、素晴らしいですよ。うまくレースで使えるようになってくれたらいい競馬ができると思います。
常石 一生懸命すぎるんですね。体力消耗しないように何か調整されたんですか?
角田 普通のハミからリングハミに変えてメンコも付けました。2歳時のファンタジーSはいい走りをしてくれましたね。豊さんが上手くリードしてくれました。豊さんに1600mはどうですか? と聞いたら『無理やな? 1200mか1400mぐらいやと思う』と距離の適性をアドバイスしてもらいました。
常石 ファンタジーSの走りは見ごたえありましたね。角田厩舎の重賞初制覇でしたね。おめでとうございます。
角田 スタッフもやりがいがありいいレースでした。
常石 アイビスサマーダッシュと北九州記念を勝ってサマースプリント優勝され、次はGIに挑戦ですね。スプリンターズSへの意気込みを教えてください。
角田 重賞4勝しているが気の強いところがあるのでマイルよりスプリントのほうがあっていると思います。父がサクラバクシンオーだからね。馬房でもうるさいですよ。牡馬みたいにカリカリしていますね。2週前追切は坂路でメイショウアバラガと併せて馬なりで4ハロン51.1-12.1。内に少し刺さったけどいい走りでした。ここ2戦ハードなレースをこなしてきたがいい結果を出しているのでこのまま順調にいってほしいです。豊騎手は柔らかい当たりなのでベルカントに合っていると思いますので、豊騎手の重賞300勝目をベルカントで勝ってほしいと思っています。
常石 最後に先生は騎手時代にGI・10勝されていますよね。調教師として一番勝ちたいレースは何ですか?
角田 牝馬ならオークスより桜花賞です。牡馬ならやはりダービーと菊花賞ですね。
常石 挙げていただいたレースは何か理由があるのですか?
角田 桜花賞はスピードと力がいるレースなので繁殖牝馬になったときの馬の価値感が違いますね。競走馬はレースだけではなく牧場やオーナー、そして応援してくださる皆さんのことを思うと生まれてから帰るところまで見たいと思います。調教師としてスタッフを含めみんなのことを思うと一つでも多く勝つレースをしていきたいです。
***
豊騎手にもベルカントの印象をお聞きしました。
豊 ベルカントは、すごくスプリント能力にあふれた馬です。だからスプリンターズSがとっても楽しみです。メンバーは強くなるけどパワーもスピードもあるので大丈夫だと思います。
まだ右にもたれる癖があるから左回りより右回りのほうが走りやすいかな。牝馬独自の気難しさを持っているが、それだけ芯が強く力は確かなものがあるので楽しみです。ベルカントを応援してください。
豊騎手も楽しみにしているベルカント(写真は以前の取材時のもの)
***
角田先生、長い時間ありがとうございました。そして豊騎手もありがとうございました。スプリンターズS、楽しみにしています。いつものようにウイナーズサークルで待っています。中山でしたね。阪神の大スクリーンの前で応援しています。
角田厩舎には元騎手だったスタッフがたくさんおり、助手や厩務員さんたちといつも馬のことについて話されているのが印象的でした。新しい厩舎になり整理整頓もされ角田先輩のさわやかさと『きりり』と引き締まった雰囲気がよく出ていました。
息子さんも乗馬をされていて、2014年のジョッキーベイビーズでは優勝されました。今後が楽しみですよね。今度はじっくりフジキセキの話を教えてください。フジキセキのような馬を見つけてください。期待しています。つねかつこと常石勝義でした。