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前人未到のGI・10勝目を狙うホッコータルマエの西浦助手にインタビュー

  • 2015年10月06日(火) 18時00分
競馬の職人

ホッコータルマエ(写真は今年の帝王賞 撮影:高橋 正和)



西浦助手「500キロくらいある大きな馬体ですが、普段はおとなしく繊細な面があります」

 馬肥ゆる秋に突入!! 秋は馬だけじゃないよ! 秋の夜長はスポーツ三昧の週末でしたが皆さんも楽しまれましたか? 553日ぶりにフィギアスケートの浅田真央が蝶々夫人で圧巻のトリプルアクセルジャンプを決め復活。

 興奮が冷めないうちに“ブレイブブロッサムズ”ラグビー日本代表がサモアに圧勝。元騎手である前に元ラガーマン(小・中学生の頃)の僕も応援に力が入りました。外国人選手の存在は大きかったですね。日の丸魂に感謝。そして寝不足のまま阪神競馬場へ。

 秋最初のGIレース、スプリンターズS(中山競馬場・芝1200m)はストレイトガールが超スローペースの中、中団から抜け出し最後は強烈な脚を使い圧勝。この後堂々と香港スプリントへ向かってくれるでしょうね。楽しみがまた大きくなりました。

 そしていよいよ競馬の最高峰、凱旋門賞も日曜日の夜に行われました。日本馬の参戦はなかったのですがトレヴの歴史的偉業に臨むレースは緊張が走りました。3連覇がかかっていたこの1戦は見逃せませんでしたね。レースは2番手を追走したイギリスダービー馬のゴールデンホーン号とデットーリ騎手が快勝。トレヴは惜しくも4着でしたね。

 日本ではホッコータルマエがGI・10勝の偉業を成し遂げるか? ヴァーミリアンもエスポワールシチーも果たすことができなかった大台を超えることができるか? と注目している西浦厩舎へ行ってみました…

常石 ホッコータルマエに会いに来たんですがどこの馬房にいますか?

西浦助手 常ちゃんせっかく会いに来てくれたけど残念やな。明日帰ってくるわ。

常石 え、本当ですか? いやー! もう北海道から帰ってきているかなと思ってました。夏はゆっくり休養し次はJBCクラシックへ向かうんですか?

西浦助手 順調に帰ってきてくれたから、これから乗り込んで11月3日(火)のJBCクラシック(大井ダート2000m)へ行く予定です。

常石 ヴァーミリアンやエスポワールシチーと並んで9勝ですがこれを勝つと史上初の10勝という金字塔。すごい! 注目の一戦になり楽しみですよ。大井に行ったことがないので是非行ってみたいです。

西浦助手 うまくいってくれるといいですね。じっくり仕上げていきます。

常石 大活躍ですが、初めて厩舎に来たときはどんな感じの馬でしたか?

西浦助手 2歳の時は、頼りない感じで余裕がなく乗り難しい馬でしたね。京都の新馬戦は3.1秒差の11着と大敗をしてしまいました。馬体はゆるくてこれでよく走れるなーっていう感じでした。2戦目は小倉未勝利でしたが9番人気だったのであまり期待できないかなーと思っていたんですがいきなり勝ってくれて驚きました。

 3歳6月に青梅特別を勝った頃からだんだん馬が変わってきましたね。そのころからゆるかった馬体に芯が入ってきて力強く走れるようになってきました。もともと力は強かったんですが、馬体とその力がうまくかみ合わなかったんですね。その後レパードSを勝ち、ジャパンカップダートで3着、そして佐賀記念、名古屋大賞典、アンタレスSを勝ち重賞4勝してくれました。器用に競馬ができるようになってきたし、使うごとに充実し力をつけてきたので本当にしっかり走ってくれたらどれだけ走れるようになるかと楽しみが出てきましたね。年明けの状態もとっても良かったですね。

常石 ここからホッコータルマエと幸騎手との名コンビでかしわ記念をスタートにGI・9勝へつながっていったんですね。 気性面はどんな馬ですか?

西浦助手 500キロくらいある大きな馬体ですが、普段はおとなしく繊細な面があります。競馬場ではピリピリしたところがありますが、レースになると一生懸命に走ってくれます。騎手の指示には素直なんですが油断していると気を抜くところがあるんですよ。人をよく見ていますね。

常石 秋初戦のJBCクラシックはGIレース10勝目を狙う大事なレースですね。2013年に勝っているので2勝目を狙ってください。今年は帝王賞、東京大賞典など勝っている大井競馬場なので楽しみですね。

競馬の職人

秋はJBCクラシックから始動するホッコータルマエ(写真は2013年JBCクラシック優勝時 撮影:高橋 正和)



西浦助手 輸送でカイバ食いが悪くなるので不安はそのあたりかな? タルマエも完成したのは、古馬になってからだからまだまだ伸びしろはあります。

常石 国内だけではなくドバイ競馬の経験もありますからレース選択の幅も広がりますね。

西浦助手 そうだね、もう一度ドバイで走らせたいです。ダートになったので走りやすくなったからね。フェブラリーS2着でこのレースも悔しい思いをしてるからフェブラリーSをとりたいですね。やっぱりJRAGIには魅力を感じます。

常石 JBCの各レースは全国地方競馬場を持ち回り開催しますが競馬場によっては条件が違うので走りにくいことはないんですか?

西浦助手 多少ありますが、ダートはあまり気にしないですね。今年の大井競馬場はかなりいい競馬場ですよ。

常石 スタートから1コーナーまで長い直線で4つのコーナーを通過してゴールまでの直線が長いのでここからが勝負どころですね

西浦助手 ここはしっかり走ってもらってダート界のチャンピオンになってほしいと思っています。

競馬の職人

西浦助手も「もう一度ドバイで走らせたい」と語るホッコータルマエ(写真は2015年ドバイワールドカップ 撮影:高橋 正和)



常石 馬とのかかわり方について教えてください。

西浦助手 コミュニケーションをとれるようにかかわりを大事にしています。言葉をしゃべれないから通じないといいますが、担当の厩務員さんが来たらすぐにわかります。意思疎通ができていますよ。でも馬が信号を送っていることを見逃さないようにきっちりキャッチしていきたいです。

常石 長い時間ありがとうございます。最後にファンの方へメッセージをお願いします。

西浦助手 まだまだのびしろが未知数のタルマエです。レースでは、一生懸命走る馬なので応援してください。

***

 タルマエにはもう1度ドバイ挑戦をして欲しいですね。そしてヴァーミリアンもエスポワールシチーも果たせなかったGI・10勝の金字塔を打ち立ててほしいです。若いスタッフが多く和やかなムードで仕事している様子が伝わり僕も違和感なく入っていって取材をさせていただきました。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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