6月9日、川崎「関東オークス」。JRA勢の上位独占は風評通りだったが、その内容、結末は思い描いたストーリーと大きく違った。ロジータの娘、アクイレジアの敗戦。しかしまあ、物語の序章とするとむしろこれでいいのかもしれない。夢はまだ先に控えている、ドラマの期待はこれからということ。いずれにせよ手応え、収穫を十分感じさせる2着ではあったと思う。
勝ったトーセンジョウオーは、先行するピュアブラウン、ブルーロバリーをじっくり見据えて3番手。3~4コーナー、前が甘くなったところで間髪を入れずスパートした。鞍上の好判断。「後ろ(アクイレジア)がずっと気になったが、僕の馬も余力があった。並ばれそうになってもう一度伸びました」(蛯名騎手)。同馬は1月に遅いデビュー、ダート4戦して連対10割。時計、相手関係から、記者はJRA馬4頭中4番目の評価としたが、正直パドックなど素晴らしい気配だった。大型馬ながら柔らか、かつ伸びやか。アクイレジアが初の左回りにモタついたことを考慮しても、今日は完勝といえるだろう。父は王者アドマイヤドンを出したティンバーカントリー。母方は皐月賞馬ダイワメジャーと同系。「半信半疑でしたがよく走ってくれました。今後は長めの中距離を照準に…」(国枝調教師)。2100m・2分15秒9は、馬場状態も含め昨年レマーズガールと同レベル。が、馬体、走法、さらにレースぶりの力強さ、イメージで捕えれば今後の期待はそれを凌ぐ。
関東オークス(サラ3歳牝馬 定量 交流G3 2100m重)
△(1)トーセンジョウオー (54・蛯名) 2分15秒9
◎(2)アクイレジア (54・松永幹) クビ
○(3)ピュアブラウン (54・武豊) 1.1/2
(4)アイチャンルック (54・内田博) 2.1/2
▲(5)クリスタルヴィオレ (54・後藤) 5
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△(8)ブルーロバリー (54・今野)
△(9)スガコ (54・一瀬)
(12)カネマサヴィーナス (54・左海)
単1030円 馬複410円 馬単1880円
3連複620円 3連単8330円
アクイレジアはまずまずのスタートで好位キープ。しかし道中の行きっぷりが勝ち馬ほどスムーズにみえなかった。終始おっつけ気味の4番手。直線1馬身差と迫ったところで砂をかぶったか、一瞬ひるむような場面もあった。ともあれ最後再び闘志をみせてクビ差なら上々だろう。人気は別にして、さまざまな厳しい状況を考えれば内容は悪くない。初めて見たパドック。胴長、脚長、しかしスラリという体型でもなく、母ロジータより兄カネツフルーヴに似ている。いわゆるグッドルッキングホースとは遠いが、それもまあひいき目ならほほえましいというべきか。「初の左回りで終始外にふくれていた。いくつか経験を積んでいかないと…」(松永幹騎手)。器用さと完成度、今日はその“クビ差”と納得する。競馬センス、勝負根性はおそらくフルーヴより高い。
ピュアブラウン、クリスタルヴィオレの地方適性は、ここでたぶんはっきりした。前者はもまれるのをきらって逃げ、勝負どころで目標になった不利が大きいだろう。対して後者は3コーナーすでに手応えが怪しく、直線も離される一方だった。確かにただ1戦の結果だが、こういう負け方はおおむね尾を引く。ピュアブラウンは本来差す競馬で味がありそうだ。
完敗の地方勢だが、アイチャンルックはだいぶ大人になったかパドックのイレ込みもさして目立たず、いつもより前々の競馬でしぶとく粘った。心身とも案外タフな面があるかもしれない。ブルーロバリーは「武さんの馬に突っ張られて厳しくなった。やはりハナを切らないと…」(今野騎手)。強敵相手にまだまだ経験が必要だろう。カネマサヴィーナスはプリンセス賞に続き末脚不発。現時点ではあくまで無欲のカウンターパンチャーというところか。穴馬に推したスガコはすんなり中団につけたものの動かず(動けず?)終わった。力不足といえばそれまでだが、14頭目滑り込みであえて出走。それならせめてチャレンジャーらしい競馬を…という思いも正直ある。
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船橋記念(6月16日 船橋 サラ3歳以上 別定 南関東G3 1800m)
◎アイディンワンダー (56・桑島)
○シャコーオープン (54・的場文)
▲ラヴァリーフリッグ (55・石崎隆)
△ファイブビーンズ (54・内田博)
△ロッキーアピール (56・山崎)
△ダイタクリムジン (54・山中)
△アオバコリン (54・森下)
トミケンマイルズ (54・張田)
ノムラリュウオー (56・山田信)
難しい顔ぶれになった。各馬のローテーション、鞍上配置などさまざま微妙で、力関係、条件適性だけでは推理しきれない、なにか雑念のようなものが入ってしまう。
それでもストレートな予想で、結論アイディンワンダー◎とした。前走大井記念2着は重賞初挑戦とすると見事な収穫。勝ち馬サンデーバニヤンはなるほど別格の強さだったが、アイディン自身4コーナー8番手、直線勝負に徹して最後2馬身差なら、その爆発力に胸が張れる。勝ちにあせらず、競馬のフォームを崩さないところが、出川克己=石崎隆の固いポリシー。今回桑島騎手と初コンビだが、ごく普通にイメージして鞍は合う。大井→船橋転厩、およそ1年半で17戦10勝、着外なし。ここはその成長力に賭けてみる。
シャコーオープンはナイキアディライト世代のNo.3で、前2走で大井準重賞、連勝を飾り本格化した。ジェイドロバリー×ハイセイコー、パワーが全面に出た硬質の追い込み馬。船橋コースは昨暮れ東京湾カップ3着で、ひとまずメドがついている。実績は重賞7勝、かしわ記念2着のラヴァリーフリッグだが、牡馬相手の1800mは微妙に長いムードもあり▲と落とした。人気落ちでかえって怖いファイブビーンズ、山崎誠士騎乗で一気に逃げるロッキーアピール。以下、今回気楽に乗れそうなダイタクリムジン、急成長の快速馬トミケンマイルズ。出走14頭、少なくとも半数の馬にチャンスのある一戦だろう。