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初夏の勝利者

  • 2004年06月21日(月) 18時46分
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 6月16日「船橋記念」は、シャコーオープンの完勝だった。道中中団でスムーズに折り合い、直線あと1F、GOサインとともに弾けるような瞬発力。終わってみれば今季ハイレベルの準重賞を2連勝した4歳馬。ひとこと勢いが違ったという結果だろう。乾いてパワー優先の良馬場、1800m1分52秒4。見た目のインパクトに加え、数字もひとまず伴っている。

 先行したトミケンマイルズが2着に粘り、4歳馬のワンツー。アイディンワンダーは伸びきれず3着。逃げたロッキーアピールは4着で、9歳馬クラシカルマウントが5着と健闘した。ラヴァリーフリッグは叩き2戦目ながらやや不可解な15キロ増。いいところなく敗れている。

船橋記念(サラ3歳以上 別定 南関東G3 1800m良)

○(1)シャコーオープン   (54・的場文) 1分52秒4
 (2)トミケンマイルズ   (54・張田)  2
◎(3)アイディンワンダー  (56・桑島)  2.1/2
△(4)ロッキーアピール   (56・山崎)  6
 (5)クラシカルマウント  (54・見沢)  首
………………………………………………
 △(6)ファイブビーンズ  (54・内田博)
 ▲(7)ラヴァリーフリッグ (55・石崎隆)
 △(12)アオバコリン    (54・森下)

単230円 馬複590円 馬単1200円
3連複930円 3連単3870円

 シャコーオープンは、昨春クラシック羽田盃4着など、ナイキアディライト、ナイキゲルマンに次ぐ世代No.3。体質のひ弱さ、加えてゲート難、気性難で足踏みしたが、4走前からブリンカー着用、的場文騎手とのコンビも当たり、素質がいよいよ開花している。昨年エスプリシーズとよく似た歩み。「今が成長期。いいときに乗せてもらえてラッキーです」。一戦ごとに自分のイメージに近づいていくのだろう。繰り返し「これからの馬…」と強調した。

 蛯名厩舎は01年、スーパーチャンピオンシップ(ナミ)以来久々の重賞制覇。大井リーディング常連だけに意外だが、勝負ごとのめぐり合わせとはそんなものか。「1歳のときに見て惚れ込んだ馬。嬉しいね。この夏は門別のファンタストクラブで乗り込む予定。もっと逞しい馬に鍛えたい」。ジェイドロバリー×ハイセイコー、いかにもという馬力型。今後の変わり身しだいで統一Gにも脈が出る。

 トミケンマイルズは逃げるロッキーアピールにあえて喧嘩を売らず2番手で折り合った。結果張田Jの好騎乗。ベストは短~マイルと思えるが、スピード能力と競馬センスがかなり高い。逆にアイディンワンダーは、勝ち馬と終始同位置で進んだものの、3~4コーナー勝負どころで反応が鈍かった。前走大井記念2着。大型馬ながら細身で、胴も脚もすらりと長い。あるいは現在異色派となった生粋のステイヤーか。個人的には北海道ブリーダーズGCあたりをめざしてほしい。

 ロッキーアピールはルーキー山崎誠士騎手、思い切りのよい先行で、自身の能力は出し切ったとみる。ラヴァリーフリッグの15キロ増は、地元競馬ゆえ微妙な誤算か。ただパドックなどいつも通り前へ前への好気合。何よりタフで健康が長所だろう。狙いの牝馬戦では再びきっちり仕上げてくる。ファイブビーンズは終始ちぐはぐな折り合いで、好走時のリズムに遠かった。かかり癖を出したアオバコリンも、次走いきなり一変はイメージしづらい。

     ☆     ☆     ☆

 6月8日、川崎を皮切りに、南関東でも2歳戦がスタートした。現在、川崎14頭、大井15頭、船橋12頭、浦和15頭の能力試験合格馬。まだ新馬戦を組むのに苦労する段階で、出走頭数もおおむね寂しい。ただし仮に5頭立てでも、デビュー勝ちはデビュー勝ち。「新馬戦」に対する陣営の思い入れは、こちらの想像以上に強い。

 また近年、クラシック活躍馬は早い時期にデビューする傾向があり、03年トキノコジローは8月、アジュディミツオーは9月にそれぞれ新馬戦を勝っている。「仕上がり早」も素質、才能の一つだろう。現実にここで1勝をあげておけば、次へのステップにも余裕が出る。

川崎(6月8日)
・ツインイーグル(牡2、川崎・池田厩舎) 父ディアブロ(母父ノーザンテースト) 900m 55秒7

大井(6月14日)
・ガイアヘッド(牡2、大井・上杉厩舎) 父アジュディケーティング(母父ストライクザゴールド) 1000m 1分01秒8
・トウケイファイヤー(牡2、大井・矢作厩舎) 父スキャン(母父ワッスルタッチ) 1000m 1分02秒6

船橋(6月18日)
・ドラゴンシャンハイ(牡2、船橋・出川龍厩舎) 父シャンハイ(ミルジョージ) 1000m 1分02秒2

 現時点のデビュー勝ち4頭。先々をイメージするのは難しいが、時計とレースぶりの余裕でガイアヘッド、出遅れをインから差し切った勝負根性でドラゴンシャンハイ。とりわけ後者は母レディカンムリ。南関東9勝、トゥインクルレディー賞4着の初仔という血筋で、バランスのいい馬体、躍動感のあるフットワークも目立っていた。ツインイーグルは父ディアブロ。ナイキアディライト、エースインザレースと同タイプの快速型。トウケイファイヤーは、デビュー3連勝、その後脚部不安でクラシックを断念したタッチザゴール(父ジェニュイン)の異父弟に当たる。いずれにせよ2戦目以降が問題。その推移は折々レポートさせていただく。

     ☆     ☆     ☆

 御神本訓史騎手が、前回大井(6月10~14日)で3勝をあげた。フタバジャスティス、ローズバーグ、ギフトフォーラン、いずれも低条件の平場戦だが、本人には大きな転機、弾みとなる結果だろう。とりわけ最終日、ギフトフォーランは直線インをこじ開けて見事な差し切り。もう大丈夫、天才復活の感触があった。

 御神本騎手は昨年5月13日に落馬事故。その12月いったん復帰を果たしたものの、明けて04年再びレースから遠ざかっていた。かなりショックの大きい落馬で、心身とも回復に時間を要したこと、体は動いても本来の勝負勘が戻らなかったこと。この春は自厩舎の小林から、あえて本場大井・高橋三郎厩舎に出向、そこで攻め馬に励んだという。

 ギフトフォーランは、三坂盛雄厩舎所属で本来お手馬。感慨が深かったと推測する。ジョッキーとは常に命がけ、綱渡り、そしてぎりぎりの仕事だとつくづく思う。前記船橋記念、御神本Jはナイキアフリートに騎乗、結果(9着)はともかく、パドックでの表情など、明るく晴れやかにみえた。「ミカモト頑張れ! 落ちるんじゃないぞ」。熟年と思えるファンから大きな一声。新たな戦いと挑戦がこれから始まる。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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